発見〜W.E.L.L.'s side
「…見つけた!見てみて、亜胡忌!」
「…?何か見つかりました?桃李さん」
亜胡忌と呼ばれた男は、分厚い眼鏡を指で押し上げながら、無表情で聞いた。
「フェリスの家族のこと!…へ〜なんだ。ちょっとがっかり」
「…あまり良い結果は出なかったのですか?」
「…まぁ、偉い人達は喜ぶと思うよ。…でも僕はね…」
桃李は血の入った試験管をユラユラと揺らしながら、拗ねたように唇をとがらせる。
「完璧な成功体と戦いたかったんだ。」
「…?どういうことですか?」
「…まぁ、ちょっと興味なくなってきたな〜」
「…そう。それで、どんな結果が見えたのか、報告をしてくれない?」
赤いドレスを身にまとった女が、金色の目を光らせ楽しげに部屋に入ってきた。
「あ、クルオル様〜」
桃李は回転式の椅子をクルクルと回しながら女に手を振った。
クルオルと呼ばれた女は、口に手を当て上品に笑いながら桃李に近づいていく。
「これ見てくださいよ〜。ここが…」
2人で試験管をのぞき込み、何やら話始めたが、亜胡忌のところまでは聞こえない。
「まぁ!そう、そういうこと…」
クルオルは頬を赤く染め、桃李を見た。
「桃李、この子のこと頼んだわよ」
「え〜僕はもういいですよ〜。なんか面倒くさくなりました」
「何言ってるの。あなたがフェリスに作戦を仕掛けて、血を採ってきたんでしょ?なら、最後まであなたがやりなさい。」
声は穏やかだが、その目に光はなかった。
クルオルの静かな殺気に、亜胡忌は身震いをする。
「は〜い」
桃李は並々ならぬ空気を全く感じていないかのように、間延びした返事をした。
クルオルは少し目を見開くと、クスッと笑った。
「じゃあ、よろしくね」
先程の空気はどこへ行ったのか、クルオルは柔らかく溶け込むような笑顔を浮かべて桃李の頭を撫でた。
桃李はそんなクルオルには目もくれず、もう試験管に向き直っている。
「それじゃあ」
そんな桃李を自分の子を見るように眺めた後、クルオルは部屋を出ていった。
「…あぁ〜さてと」
桃李は立ち上がり、ゆっくり白衣を脱ぎ出した。縫い付けられた試験管がカチャカチャと音を立てる。
「…何してるんですか?」
亜胡忌が聞くと、桃李は心の底から面倒くさそうな顔をした。
「フェリスと戦わせる実験体を考えるの。…あぁ面倒くさい。」
実験を始めた当初の様子はどこへやら、サッサと終わらせたい雰囲気が漂っている。
「…何かあったら手伝いますよ。」
「え、ほんと?じゃあ今から実験室に行って薬品取ってきて。あ、あとこの資料パソコンにデータ写してそれから…」
桃李はペラペラと仕事内容を話す。
「…わかりました。すぐにやってきます。」
亜胡忌はやれやれとため息をつきながら立ち上がった。
「ほんと、人使いが粗いですね」
「だって亜胡忌はやってくれるでしょ?」
「えぇ、やりますよ。仕事自体は好きなので」
「でも、たまには息抜きも大事だよ?」
「あなたのせいで仕事が増えてるんですが?」
亜胡忌は呆れたように首をかしげた。
「感謝はしてるよ。そうだ!フェリスをヤッたら、2人で研究室に籠もって試験管を眺めようよ!ちょっとした息抜き!」
「……そうですね。楽しみにしておきます」
亜胡忌はテキトーにそう答え、部屋を出ていった。
今回の仕事も、簡単に終わる。
組織の誰もが、そう思っていた。




