警告
「俺の兄が動き出す。」
「お兄さん…?」
フェリスは、氷点下の表情で淡々と話した。
…あまりお兄さんのこと好きじゃないのかな?
「俺の兄は、頭脳も運動能力も特にないが、地位ばかり気にする。SNSで人気なロトに興味を持つのも時間の問題だな。」
「いや〜、そんなに人気者になっちゃったか。」
「気にするとこそこじゃないだろ。」
優が呆れた声を出す。
「で、なんでそんなやつを野放しにしてるんだ?お前の家族だろ」
優がフェリスを睨みつける。
「リスクはあるが、上手く使えば組織を炙り出せる。」
「?!ほんと?!」
「あぁ。兄は組織の内部に侵入する予定らしい。」
「すごいね!お兄さん!」
私は手を叩いてお兄さんを褒め称えたが、優は苦い顔をしている。
「大丈夫なのか?お前の兄、頭悪いんだろ?ロトより頭が悪いなら確実に死ぬと思うんだけど」
…優、今遠回しに私の悪口言わなかった?
「あぁ。ある程度対策はするが…」
フェリスはため息まじりに呟いた。
「あの兄は俺の話は全く聞かないからな…」
「信用されてないんだな」
「ちょっと優!」
…なんか今日の優、いつも以上に口悪い!
「まぁ、長年続いてきた戦いだ。そろそろ終わらせたい。」
フェリスの金色の目が妖しく光る。
「使える駒は何でも使う。」
そう言って、フェリスはニヤリと笑った。
…笑顔怖すぎるんだけど。
「そうか。言いたいことはそれだけか?」
「あぁ。」
「なら、サッサと俺達に聞きたいこと言え。」
「…」
スッと沈黙が落ちる。
「…なんだよ」
優が怪訝そうに私たちを見る。
「…いや、お前からそれを言い出すとは思わなかった。はぐらかして帰ろうとするかと…。」
「は?なんでそんなことするんだ?」
優はさらに不服そうに眉間にしわを寄せ、そっぽを向いた。
「…そんなこと、俺はしない」
「ほら!フェリスさん、優は口は悪いけど本当に優しくて律儀な人なの!」
私は、ここぞとばかりにフェリスに熱弁する。
「っ〜…うるさい!ほら、サッサと話せ!何を聞きたかったんだ?!」
優が耳を赤くしてフェリスを急かす。
何をそんなに慌ててるんだろう…?
「…ロト」
「え?はい!」
優のことを考えていたから、急にフェリスに呼ばれてびっくりした。
「お前は誰だ?」
「へ?誰って…」
「あのときの猫じゃないよな?」
「??」
『あ、前に1回会ってるんだ。鳥探しに僕が初めて出かけたときに…。』
「あぁ…」
フェリスは、金色の目で真っすぐ私を見つめる。
「あのときの猫が、女性のフリをして喋っていると思っていたんだが…」
「え?なんで?」
「動物になった実験体が人と融合した場合、意識は実験体のものになり、融合した人は体を実験体に貸すだけになるはずなんだ。」
それじゃ…
『今の状況、初めてなの…?』
フェリスが金色の目を光らせる。赤黒い髪が、サラサラと風に揺れる。
「…ロト、何者だ?」
私は、フェリスの目に映るロトの猫のような顔を見つめた。




