再会
「こんにちは!」
「やぁ、久しぶりですね。ロトさん」
優しげな眼鏡のおじさんが出迎えてくれる。
「今日は来てくださり、ありがとうございます。」
「いえいえ!このくらい、朝飯超えて昨日の夕飯前です!」
「えっと…はい?」
『なんでもさかのぼればいいわけじゃないぞ。…スタッフ困ってるだろ。』
耳につけたイヤホンから、優の呆れた声が聞こえた。
「ごめんなさい…。」
「い、いえいえ。大丈夫ですよ。」
眼鏡のおじさんは、ニコニコと笑ってくれた。…苦笑いだったけど。
「えっと…今日は、動きの確認ですよね?」
「は、はい。キャストが集まっているスタジオにご案内します。今、ちょうど撮影をしているころのはずです。」
眼鏡のおじさんのもと、私はスタジオへ進んだ。
「こんにちは!ロトさん」
「こんにちは!」
キャスト陣が出迎えてくれる。
「撮影お疲れ様です!」
「いや〜元気いっぱいだね〜」
「はい!元気満々です!!」
前回会ったときにだいぶ仲良くなったみんなと、再会を喜び合う。
「え〜っと…早速だけど、動き見ていってもらって、いいかな?」
眼鏡のおじさんが、申し訳なさそうにキャストの輪の中に入ってきた。
「あぁ、すみません!やりましょう!」
「それでは…ここのシーンを…」
そう言い、眼鏡のおじさんは私に台本を見せながら後ろを振り向いた。
「フェリスさん、ここのシーン、お願いできますか?」
「はい。わかりました。」
キャスト陣の群れの中から、スッと歩み出てきた。
血のような赤黒いサラサラ髪と、切れ長の金色の目。通った鼻筋に白い肌。
…真子が居たら失神するね。
「あ!お久しぶり〜!」
「お久しぶりです、ロトさん。最近のご活躍も素晴らしいですね。」
キラッキラの爽やかスマイルだ。
『相変わらず、胡散臭いやつ。』
頭の中に、ブーブーと文句を言う呂都丸の声が響く。
「ロトさんに直接僕の演技を観ていただけるなんて、光栄です。」
「えへへ〜。そんな褒めないでくださいよ〜。」
『嘘ばっかり…。フェリスはそんなこと1ミリも考えてないくせに。』
呂都丸がツッコミを入れる。
「あ〜えっと…始めていいですか?」
また申し訳なさそうに、眼鏡のおじさんが私たちの間に割って入る。
「すみません。つい、盛り上がってしまって…」
フェリスは申し訳なさそうに謝った後、撮影のセットの方へ向かっていった。
「それでは始めます。」
スタッフの声がかかり、撮影が始まる。
今回見せてもらうのは、クライマックスのアクションシーンだ。
細かく精密で、きれいな動き。
「いや〜きれいですよね。フェリスさんの動き。」
眼鏡のおじさんが、話しかけてくる。
「そう…ですね。」
私はそれに答えながらも、フェリスから一切、目を離さない。
「…なんだろう。この動き。」
誰かに似ている?
「全て計算され尽くしたような動き…。」
綺麗だ。
「お疲れ様でした〜!」
無事、シーンの確認が終わり、スタジオを出る。
「疲れたね~!」
『だね〜。早く優のところに行こ!』
「うん!」
今日は優が待っている。そう思うと、いつもより疲れは感じない。
「あ、ロトさん!」
「ん?」
後ろから呼び止められた。
スタジオの自動ドアを走り抜け、誰かがこっちに手を振っている。
「あ!」
その人は、私の方まで走り寄ってきた。
「フェリスさん!お疲れ様です!」
「お疲れ様〜。ロトさん、途中まで送るよ。夜は危ないし。」
「大丈夫ですよ!私強いし!あと、近くで友達が待ってくれてるので!」
私は力こぶを作ってみせたが、フェリスは聞かない。
「そう言わずに!その人のところまで送りますよ!」
「え〜」
この人連れてったら、優は怒るだろうか。
…まぁ、危ない人ではないし、大丈夫か。
「じゃあ、行きますか!」
「そうしましょう!」
私たちは、並んで歩き出す。
「フェリスさんの動き、すごく綺麗でした!…誰かに似ているような…」
「実際の戦闘時と似た動きをしているのか…」
「え?」
まるで、自分が実際に戦っているような口ぶりだ。
「どうした?鳥と、似ているんだろ?」
人気の少ない路地に入っていく。この先に優がいるはずだ。
フェリスが少し改まったように、…いや、まるで主従関係がある人と話すように、私に向き合う。
「ロト。久しぶりだな。」
「…??」
フェリスの口から、低く冷たい声が出る。
…まるで鳥さんのような…。
「久しぶりだな。フェリス。」
『姉ちゃん、こいつやっと本性出したね。』
「…?!」
後ろから、優の声が響く。頭からは呂都丸の唸り声がする。
「あぁ…もしかしてと思っていたが…」
また鳥さんと同じ声がフェリスから聞こえた。
「え?」
フェリスが優を指さしながら、こちらを見る。
「…あの、フェリスさん…?」
「さっきの友達って、こいつのことか。」
フェリスの金色の目が、妖しく光る。
私だけが、この状況を理解していないようだった。




