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脳なき猫、翼を広げて世界を包む!〜ヒーロー生活始めます〜  作者: 桜庭木陰
第2章 赤い翼編

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準備

「優、私思うんだよね。」

「何をだ。」

「うーん…あれ、なんて言おうとしたんだっけ?」

「…は?」

速攻で話そうとしたことを忘れてしまった。

「…ごめん。」

「…まぁ、思い出してから話したらいい。」

少し気まずい空気が流れる。

…優には申し訳ないけど、こういうときってあるよね。仕方ない。

「まぁ、たぶんそれほど大事な話ではなかったと思うから」

「そうか。なら思い出さなくてもいい。」

「…辛辣だな〜」

「天音羽の変な話を全部拾っていたら、時間がいくらあっても足りないからな。」

「そんなに言わなくても良くない?」

「姉ちゃん、映画の話…」

「うん?映画?」

呂都丸が、いそいそと会話に入ってきた。

先程まで呂都丸が遊んでいた音の鳴るボールは、優の足元に転がっている。

…さては、優が怖くて取れないんだな?

「ちょっと失礼」

「どうした…わっ」

私が優の足元に近づいた瞬間、優はヒュッと後ろに引き下がった。

「ボール取ろうとしただけだよ」

「……あぁ、悪い、気づかなかった。」

優はだいぶ間を置いたあと、少し目をそらして謝った。

「?」

「ありがとう姉ちゃん。…それで、映画の話は?」

「??」

映画の話とは…?

「ほら、電話来てたじゃん。あの眼鏡のおじさんから」

「……あ。」

そうだ思い出した。今日はそれを話すために優を呼んだのだ。

「優、この前の私をモデルにした映画なんだけど、また呼ばれてさ。もう一回動きを確認してほしいんだって。」

「あぁ、そうか。いつ行くんだ?」

「えっと…」

「明日でしょ?」

呂都丸が助言を入れてくれる。

「あぁ、そうそう!」

私はブンブンと首を縦に振った。

「呂都丸の方が覚えてるな。しっかりしろ天音羽」

優が呆れたように肩をすくめる。

「えへへ〜。覚えといてくれてありがとう!呂都丸!」

私はよしよしと呂都丸の頭を撫で回した。

呂都丸は嬉しそうに、ゴロゴロと喉を鳴らす。

「天音羽、何か俺に言うことはないか?」

「え?」

…なんか、優の後ろに炎が見える。

私と呂都丸は危険を察知し、ヒュッと縮こまった。

「もっとそういう重要なことは早く言え。なんの対策もできないだろ。」

長い髪から覗く優の目が…怖い。

「ごめん!でも大丈夫だよ!前スタジオ行ったときは、いい人ばかりだったから!」

「…うわべだけかもしれないだろ。」

「優、すぐ疑うのはよくないぞ!」

「天音羽はもっと人の裏を…いや、やっぱりいい。」

優は途中で首を横に振り、何かを考えるように顎に指を当てた。

「…とにかく、スタジオまで行くルートは今日中に送る。帰りは…今からルートを作るのは間に合わないな…」

ぶつぶつと呟いた後、スッと顔を上げた。

「帰りは、迎えに行く」

少し、沈黙があった。

「…へ?」

私の口から間の抜けた声が出る。

「いいの…?」

今まで優は、絶対ロトとの関わりがバレないようにと気にしていたのに…。

「いろいろ話したいこともあるしな。」

「話したいこと…?」

「あぁ。」

まぁよくわからないけど、いろいろ考えてくれてることがあるのだろう。

「優がいてくれたら心強いよ!」

「僕も!」

呂都丸も声を上げる。

「…とにかく、正体がバレそうなことは絶対しないように気を付けろ。」

優は、そっぽを向いてそう言った。


✽✽✽

「何かわかりました〜?」

「…いや、なかなか好ましい結果は出ていない。」

「え〜。遅くないですか〜?」

桃李は、つまらなそうにあくびをした。

「仕方ないだろう。あれから何代目だと思ってるんだ。」

榊は、指で額を押さえながら長いため息を吐いた。

「え〜でもそのせいで、ずっと実験体あばれさせてないじゃないですか〜」

桃李はそう言いながら、口をとがらせた。

「早くフェリスと戦わせたいのに〜」

「まぁもうしばらく待て。何か研究成果が出てからの方が、フェリスも殺りやすいだろう。」

「うーん…あ、そうだ。」

桃李は何かをひらめいたように、キラキラとした目で榊を見つめた。

「な、なんだ…」

「僕を、その研究チームに入れてくださいよ〜」

「何を言ってるんだ…。私たちのような末端の研究員が入れるわけがないだろう…。」

榊は、また大きなため息をついた。

それとは反対に、桃李は楽しそうに試験管をカチャカチャと鳴らす。

「いいじゃないですか〜。きっと僕が入ったほうがいろいろ見つかりますよ〜。」

桃李は金色の目を光らせ、楽しそうに笑った。

「せっかくの楽しみを、上に独り占めはさせないよ。」

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