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脳なき猫、翼を広げて世界を包む!〜ヒーロー生活始めます〜  作者: 桜庭木陰
第2章 赤い翼編

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人間に戻す方法〜Yu's turn〜

「どっこいしょ〜!」

目の前でソーラン節を踊る天音羽を見ながら、俺は悩んでいた。

…いつ、話を切り出すか。

特に重い話を持ってきた訳では無い。ただ、天音羽があまりにも必死の形相で踊っているため、途中で別の話にすることは気が引けるのだ。

今日、俺が天音羽を尋ねた理由。それは、怪物化した人間を元に戻す方法を見つける算段がついたことを報告するためだ。



街での蜘蛛の実験体の暴走、そしてフェリスと天音羽の共闘が終わった数日後の土曜日。

俺は、補講を終えた後、職員室へ向かった。

とある教師に会うためだ。

「失礼します。」

ノックし扉を開け、俺は真っすぐ、奥の席へと向かう。

「…教頭先生、少しよろしいでしょうか。」

「おや、谷間さん。…たしか、君だよね。一年生で不動の一位の成績。前回のテストは途中で早退したんだって?期待の生徒が休んでしまったって、担任の矢野先生、卒倒してたぞ〜。」

「…そうですか。」

「辛辣だね〜」

先生は、やれやれというふうに首を横に振った。教頭になるには若く、三十代くらいの男のような女性だ。…噂では、怒ると鬼のような形相になるらしい。気をつけよう。

「…で、なんの用だい?補講の免除なら、私に頼んでも無駄だぞ?」

「…そんなくだらない話をしに来たわけではないですよ。」

「…ほう?」

先生は、笑いながら目を細めた。黒く深い目が、何かを探るように俺を捉える。

「先生、国立黎明大学の教授に、僕を紹介してくれませんか。」

「国立黎明大学?お前、あそこを狙ってるのか?てっきり東大に行くと思ってたぞ。たしかに黎明大も国内トップレベルだが…」

「いえ、そこに行く気はないですよ。」

先生は少し困惑したように、顔をしかめた。

「?なら、何をしたいんだ?」

「そこに、この教授がいますよね?」

俺は、ポケットからスマホを取り出し、画面を見せた。

「先生、この教授と知り合いですよね?」

「…あぁ。私とその教授はこの高校の同級生だったからな…。て、おい。なんでそれをお前が知ってる?」

「調べたらすぐ出てきましたよ。」

「…私とその教授に今も面識があるかはわからないだろ。」

「…まぁ、インスタに載ってたので。」

「ああ?!まさかお前、私のインスタ…!」

「はい。見つけました。」

「チッ!最近の高校生は教師のSNSをすぐ…!」

「まぁ、そういうことなので、紹介お願いします。」

俺はだんだん面倒くさくなってきたため、サッサとお願いして終わらせようとした。

「おい、待て。まだ私の質問に答えてないぞ。」

先生は、少し前に身を乗り出し、スッと俺を見据える。

「この教授に、なんの用があるんだ?それがわからないと、私は紹介も何もできないぞ。」

…やっぱそうだよな。

俺は、改めて居住まいを正し、真剣な表情で先生を見つめた。

「この教授のしている研究に、興味があるので、直接話を伺ってみたいなと…」

「本気でそう思っているのか?」

「はい。この教授、遺伝子工学についての研究をしていますよね?」

「ああ。」

「…遺伝子について詳しく知りたいので。」

「ならまず、こいつの講演会に行けばいいだろ。」

「行きましたよ。」

もちろん行った。そこで教授とコンタクトを図ったが、上手く行かなかった。教授はSNSなどもあまりやっておらず、調べてはみたものの、面識のある人もあまり多くはないらしい。

…だが、黎明大の教授の履歴に、その人についても載っていた。この高校の出身とわかったときは少し驚いたが、あり得ない話ではないだろう。この高校も、国内トップクラス。実際、黎明大には、他にもこの高校を卒業した教授が多くいた。

「お願いします。もっと詳しく知りたいので。」

…その研究をしているなら、もっと怪物化した人間を元に戻す方法の手がかりを、掴めるかもしれない。

「…お前、なんか嘘くさいな。」

先生はさらに目を細める。

…俺、やっぱこういうの苦手だ。…フェリスの方が上手く演技できただろうな。

「…まぁいい。紹介してやろう。」

「…え。」

今の説明で良いのか?

「まぁ、何か他にもあるのかもしれないが、紹介する理由として他に教師として聞くことはない。それに」

先生は、ニヤリと笑いながら、机に肘をつく。

「なんか面白そうだからな!」

「…ありがとうございます。」

「詳しくは、次に教授に会ったときに聞くよ。」

…それはやめてほしいな。



「優〜。見てる?」

「あ?…ああ。」

「ちゃんと見といてよ優!姉ちゃんすごいんだよ!すごく魚なんだよ!」

どんな感想だ。

俺は心の中で呂都丸にツッコミを入れながら、天音羽を見る。

…相変わらず、必死の形相で踊っている。たしかにすごい形相だ。

俺は、思わず頬の力が緩む。

こんな日常が、いつまでも続けばいいと思った。

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