W.E.L.L.
「あ〜…負けちゃったか〜」
ククッと喉を鳴らしながら、男は笑った。男が動くたびに、白衣に縫い付けた試験管がカチャカチャと音を鳴らす。
「まったく…その試験管なんとかしてくださいよ。うるさくて集中できません。」
眼鏡をかけた男がパソコンを操作しながら、迷惑そうに言う。
「え〜いいじゃん。試験管は芸術だよ。」
「わけの分からないことを言ってる暇があったら、今回の始末をきちんと説明してください。」
「相変わらず冷たいな〜」
男は、拗ねたように唇を尖らせた。
ダンダンと大きな音を鳴らし、目をつり上げ、顔を真っ赤に染めた男が部屋に入ってきた。
「どう落とし前をつけるつもりだ!」
男は、部屋に入った途端、叫んだ。
「桃李!」
桃李と呼ばれた男は、試験管をカチャカチャと鳴らしながら、笑った。
「やだな〜。そんなに怒らないでくださいよ。頭から煙が出てますよ?」
「何をヘラヘラと…!」
男は額に血管を浮かび上がらせ、桃李を茶色の瞳で睨みつけた。
「お前が必ず成功すると言ったから、あの蜘蛛を出したんだぞ!上になんと報告するつもりだ!」
「何も期待した結果が出なかったからって、そんなピリピリしないでくださいよ。あなたも上層部も。寿命縮みますよ?」
「桃李!!」
「あ〜もううるさいなぁ。何も収穫が無かったわけじゃないんだから…」
「!何か掴んだのか?!」
「ええ。」
「なぜそれを先に言わない!」
「言ったほうが良かったですか?」
「お前はいつもいつも…わかったことは全て伝えろ!」
そう叫ぶと男は、強く桃李の腕を引っ張った。
「キャア痛い!なにするんですか〜」
桃李は女みたいに叫び、体をくねらせた。
「これから会議がある。そこでお前の口から直接、報告をしろ。」
「え〜嫌ですよ。僕、堅苦しい場所嫌いです。」
「お前が始めたことだ。責任を取れ。」
「え〜」
男はずんずんと進み、ドアの前でピタリと止まった。
「?」
男は振り返り、きょとんと首をかしげる桃李を上から下まで見回す。
「どうしました?そんなにジロジロ見ないでくださいよ〜」
「桃李。」
「はい?」
「その試験管を片付けろ。」
「…はい?」
「お前、その格好で上層部の前に出るつもりか?」
「いいじゃないですか。試験管は芸術ですよ。」
「くだらんことを言うな!今すぐ片付けろ!」
そう叫んだ後、男はドアを開けた。
「俺は先に行く。お前はその試験管を片付けてから来い!いいか!絶対に変な格好で来るんじゃないぞ!!」
バタンッと強くドアを鳴らしながら、男は出ていった。
「ハハ。なんだか、慌ただしかったね〜」
桃李は、ヘラヘラと笑いながら、眼鏡の男に話しかけた。
「全てあなたが招いたものですが」
「え〜みんな辛辣だな〜」
ムスッとしながら、桃李は白衣を脱ぐ。そのたびに、試験管がカチャカチャと音を鳴らす。
「はあ〜この音、いいなぁ~」
桃李は、うっとりしながら、白衣を揺らす。
「この音、聞かせてあげたい。」
「誰にですか?」
「もちろん、フェリスにだよ〜」
「…ロトにかと思ってました。」
「誰が、あんな子猫ちゃんに興味を持つだって?」
「違ったんですか?」
「うん。違う。」
そう言いながら、桃李はニタリと笑った。先程のふざけた態度とは打ってかわり、狂者のような恐ろしさが浮かび上がる。
「僕が興味あるのは、成功体だけだ。」
桃李は、更に笑みを深め、試験管を掲げる。
「一度、戦ってみたいな〜」
お久しぶりです!更新がかなり遅れてしまい、大変申し訳ございません…。
これからは少しずつ更新を再開していきたいと思っていますので、ご愛読いただけると嬉しいです…!
さて、今回は敵組織サイドからお話を書かせていただきました!桃李…だいぶクセキャラですね…。今後天音羽たちとどう関わってくるのか、皆さんお楽しみに!
最後に、長い間天音羽たちの話の続きを待ってくださっていた皆さん、本当にありがとうございます!これからも天音羽たちをよろしくお願いします!




