一緒に、がんばろ!
『姉ちゃん、そっち!』
「おっと!」
私は、鍵爪を振り回しながら蜘蛛を倒していく。
『あっちにも!』
「…了解!」
倒しても倒しても、蜘蛛は湧いてくる。減る気配はなく、むしろ増えている気がする。
「これは…さすがにキツいね」
私は、少しそんなことを呟きながらも、ニヤリと笑う。
笑わないと。たくさんの人が、見てるから。
ほとんどの人が逃げたけど、頭上にはいくつかドローンが飛んでいる。どこかで報道されている。
きっと、みんなが応援してくれてる。
「呂都丸、大丈夫?」
呂都丸は相当疲れているはず。もし私が戦いを鳥さんに任せてたら、呂都丸は今頃家のクッションの上だったはずだ。
『…姉ちゃん、大丈夫だよ。』
「…ありがとう。」
『姉ちゃん、僕に無理させてると思ってない?』
「え?…えっと…」
『右!蜘蛛来てる!』
「あ、はい!」
右に鍵爪を振り、間一髪で蜘蛛を倒す。
『僕、疲れてるけど、大丈夫だよ。そもそも、これは僕が姉ちゃんに頼んだことだし。』
ちゃんと周り見て、と呂都丸に注意されながら、私は鍵爪を振り回す。
『僕ね、守りたいものが増えたんだ。だから、いくらでも頑張れる!』
先程の少し疲れた声とは違い、芯の立った、それでいてどこか笑いも含んだ声で、呂都丸は言った。
「…!」
私は、少し驚いてしまった。呂都丸に無理をさせている。そう思うこと自体、違ったのかもしれない。呂都丸には、守りたいものがある。ちゃんと“大切”がある。
『一緒に、がんばろ!』
頭の中に、呂都丸の声が響く。その声は、少し大人らしさの混じった、少年の声だった。
「…うん。2人で」
私は、ニコッと笑う。誰かと一緒に、そう思うだけで、力が湧いてきた。
「蜘蛛を倒すよ!」
「お前だけでは力不足だ。」
頭上から声が聞こえた。
「鳥さん!今なんて言った?!」
すごく登場を待ち望んでいたのだが、今ものすごく失礼なことを言われた気がする。
「お前だけでこの蜘蛛を倒すのは無理だ。」
「私だけじゃない!」
「…は?」
鳥さんが聞き返す。相変わらず、頭上から偉そうに私達を見下した状態で。
「呂…えっと、猫がいる!」
反射的に呂都丸の名前を出しそうになった。危ない危ない。
「私には、いつも一緒にいてくれる猫と男の子がいるの!」
フフンと得意気に笑う。
「…今回だけは、俺も協力してやろう。」
無視された。
「私、結構大事なこと言ってるんだけど!」
「仲間など、居ても足手まといだ。」
たった今、私達と協力しようとしてるくせに、よく言う。
「まったく、困った鳥さんだ。」
「余計な口を叩くな。…始めるぞ。」
私は、大きく目を見開いた。
鳥さんは、バサリと大きく、茜色の翼を広げる。
日が沈み、藍色に染まった空に、不気味に赤い矢が敷き詰められる。
矢の群れの中に悠然と佇む鳥さんは、空の覇王のようだった。
「…綺麗だ。」
空の覇王は、金色の目を妖しく光らせた。
「早急に終わらせる。…共闘だ。」




