猫と会話
「おねがい。た、すけて…」
猫が、しゃべった。
私は、全力で自分の頬をつねった。
「イッタ!」
夢じゃない。ヒリヒリと痛む頬をさすりながら、私は呆然と立ち尽くした。
「えっと…何があったの?」
いろいろ聞きたいことは山ほどあるが、まずは、なぜ助けを求めているのかを聞こう。
「…ぼく、にげてきたんだ。あいつらから…」
目は虚ろで、キレギレと声を振り絞っている。私は、水を渡してあげた。猫は肉球で器を掴もうとし、ハッとした様子で手を引っ込め、舌で舐め始めた。
「…やばいやつら。にんげんも、どうぶつも…どうぐみたいに扱う」
やがて意識がはっきりしてきたのか、猫とは思えない流暢な人間語をしゃべり始めた。
「数百年前から、ずっと続いている組織があるんだ。とある実験を続けている。」
「へ、へ〜」
キャパオーバーだ。話が壮大すぎる。まるで、漫画やアニメの世界だ。
「その組織の名前は、W.E.L.L.」
「ウェル…?」
「そう。動物のように人間を…」
『キャー!』
突然、外から悲鳴が聞こえた。
「…!」
「何ー?!」
驚きすぎて、悲鳴よりも大きい声で叫んでしまった。
「やばい。」
「何が?!」
もう何がなんだかわからない。
「え?!ちょっと待って!」
急に、猫が私の脇を通り抜け…ドアを器用に開け、外に飛び出してしまった。
「おおい!」
私も、外に飛び出した。そして…目の前の光景に、目を疑った。
「何。あれ…」
ギラギラ光る金色の目。ビルを簡単に覆ってしまうほどの真っ黒な巨体。長い耳や手足のようなものがだらりと伸びているが、それが何なのかは正確にはわからない。
ー怪物だ。
「W.E.L.L.が、作り出したんだ。こんな都会で暴れさせるなんて…!」
猫が、悔しそうに唸った。
暴れている。たくさんの人が逃げている。泣いている。もう何がなんだかわからない。
「止めなきゃ」
それだけが、混乱する頭の中で浮かび上がった。
「ねえ、何か方法、知らない?!」
この猫なら、何か知ってるはず。
止めなきゃ。止めなきゃ。それだけが、頭の中を飛び回っていた。
猫は、少し迷うように、目を泳がせた。
「あるにはある。でも、一人じゃできない。」
猫は、必死な目で、私を見あげた。
「お願い、姉ちゃん。僕に、力を貸して」




