変な猫
猫を拾った。
なんか、変な猫だ。種類は三毛猫。でも、額に黄金色に輝く猫の目のようなマークがある。
『ピンポーン』
「あ!」
インターホンが鳴った。
「久しぶり。天音羽」
「久しぶり!優!」
外は、もう雨は止んでいて、アパートのベランダの手すりが、宝石をまとったようにキラキラ輝いている。真っ黒な長い髪。分厚い眼鏡。その奥から覗く冷たい目。
そう、このいかにも頭が良くて人を見下していそうなやつが、私の幼なじみ、谷間優だ。
「そいつか。拾ってきた猫は。」
「そう!かわいいでしょ〜」
私は胸をはって話したが、優は無反応だった。
「ケガしてるな。手当てするぞ。」
「うん。ありがとう!」
今日、この幼なじみを呼んだのは、この猫の手当てや世話を教えてもらうためだ。大抵のことは、この幼なじみに聞けばなんでもわかる。長い髪に隠されたこの頭のなかに、いったいどれだけ膨大な知識が詰め込まれているのか。一度見てみたい。
「三毛猫か。意外に綺麗だな。あまり蓄積した汚れがない。このマークは…」
ブツブツと呟きながら、優しく手当てをしていく。この見た目だから勘違いされやすいが、本当はめちゃくちゃ優しい奴なんだ。昔から、何かあるといつも助けてくれた。
それから優は、猫の様子を見ながらいろんなことを教えてくれた。ちなみに、オスらしい。どこで見分け方を覚えたのだろう。動物飼ったことないのに。
優が丁寧に洗った猫の毛は、輝きを取り戻し、真っ白な毛がツヤツヤ眩しかった。
猫を育て始めて、数日が経った。でも、猫はいっこうに目を覚まさない。このまま死んでしまうのではないかと、だんだん不安になってきた。
「クーン…」
「…!」
鳴き声…!目覚めた?
「お~い、猫ちゃ〜ん!…じゃなくて、猫く〜ん!起きてー!」
絶対うるさかったと思うが、私は、猫を起こそうと必死だった。起きないと、今にも消えてしまいそうなほど、か細い息だったから。
猫が、唸りながら、目を覚ました。
「やったー!!」
絶対うるさかったと思うが、私は思いっきり腕を振り上げて喜んだ。猫はうつろな目で、不思議そうに私を見上げている。蜂蜜色の、綺麗な目だった。
「た、すけ、て…」
「?」
今、どこかで声がしたような?
「たすけて…」
…勘違いではなかろうか。今、猫の口が動き、そこから声が出たような。
「おねがい。ぼくは…」
「うわーっ!!」
思わず声を張り上げ、飛び退いてしまった。間違いない。目の前の猫が、しゃべった。
か細く必死な、少年の声で。




