日常の終わり
その日は、雨が振っていた。
「おはよう!真子!!」
「おはよう!天音羽」
大好きな友達と挨拶をする。今日は雨がうるさいから、大きめな声で。
『おはよう!!』
ついでに、別の学校の幼なじみにも、ラインで挨拶。
『おはよう』
すぐ返信きた。
どんよりとした雲が空を覆い隠し、シャワーみたいな雨が振り注ぐ。そんな風景を、私は授業も聞かず、教室の窓辺の端っこの席でずっと眺めていた。
「フフ」
水たまりを蹴散らして走る小学生を眺めながら、思わず笑ってしまった。もちろん授業中だったから、先生に怒られた。先生にも見ていてほしかった。かわいい小学生を見たら、授業なんて聞いてられない。
「天音羽!部活行こ!」
「うん!」
私はバレー部に入っている。親友の真子と一緒に。説明遅れたけど、私の名前は天城天音羽。どこにでもいる、普通の高校生だ。
「疲れた〜」
「だね~。でも、今日の私のサーブ、めっちゃ良かったよね?!」
「そうだね。でも天音羽は、レシーブも頑張ろうね」
「う、はい…」
部活を思いっきりやって、家に帰る。片手にから揚げ棒を持って。
「そういえば天音羽。テスト勉強してる?」
フッフッフ…
「私がしてると思うかい?」
「ごめん。聞く必要なかったね。」
私は勉強が嫌いだ。ものすごく。
「まぁでも、天音羽にはあいつがいるからな〜」
そう。真子の言う通り、私には秘密兵器がある。全国トップレベルの進学校に通う、幼なじみ。彼に勉強を教えてもらえば、こんな私でも赤点は回避だ。
私は歩き。真子は電車。ということで、駅で別れた。真子とは高校入ってからの付き合いだが、話が合うし、サバサバとものを言う、裏表のない真子が、大好きだった。
ビルの間を縫うように歩き、家に向かう。夕方の街は暗く静かだ。雨がうるさいせいか、それとも…。
コツン。足に、何か当たった。
「?」
…段ボール?中に何か入っている。
「クーン…」
何かの鳴き声…!動物?ドキドキ…!
「なんだろっ!」
高鳴る胸を必死に抑えて、段ボールを開く。
雲間から光が差して、スポットライトのように私たちを照らした。
中身を見て、思わずにやけてしまった。段ボールの中には、ものすごくかわいい、猫が入っていたのだ。やせこけ、か細く息をしている。額に付いている猫の目のような模様だけが、鮮やかな黄金色に輝いていた。
この猫との出会いが、私の普通を塗り変えた。でもそんなこと、当時の私は、何も知らない。




