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進む道

「天音羽、俺は足りないなんて思わない。」

優は、そう言い切った。

「…でも、足りなかったから、あのとき助けられなかったんじゃ…」

「…あいつの言った覚悟は、そういう話ではないと思う。」

「?」

「…救えるかじゃない。人間を倒すしかない状況でも倒せるか、ということだ。」

「…!そんなの!」

無理だ。私にそれはできない。

「私は、人助けがしたくてヒーローになったの。人を助けるために人を倒すことはできない!」

「できなくていい。」

「…え?でも、それじゃ…」

「探すぞ。治す方法。」

「無いよ!治す方法なんて!」

呂都丸が珍しく声を張り上げた。

「あったなら…もしあったなら、誰も、死んでないんだ…」

呂都丸が苦しそうに顔をしかめる。

「…なら、探すべきだろ」

「だから、無いんだって!」

「今はな」

「え…?」

「…お前、何のために組織から逃げてきたんだ?」

「なんでって…組織を止めて、世界を救うために…」

「それだけじゃないだろ。」

「…!」

「お前のもう一つの目的…他の実験体を救うこと。」

「…その言い方、やめて。…実験体じゃなくて、仲間だよ。」

呂都丸が、グルグル唸った。

「…でも、みんな生きてるかわからない。この前の“あの人”だって…もしかしたら…」

そうだ。もしかしたら、呂都丸が知っている人だったかもしれないんだ。

「…意志がなくなった人は、もう元に戻ることはできない。」

呂都丸が、うなだれる。

「まだ諦めるには早い」

優は目を細め、考える素振りをしながら言った。

「呂都丸、お前は薬品でその身体になったんだろう?…それは、お前の意志じゃないよな?」

「…?そうだよ。自分でなろうとなんて思わないよ…」

「なら、打つ手はある。時間はかかるかもしれないが…」

「それって何?」

私は、前のめりになって聞いた。

「薬品には薬品を…元に戻る薬を作ればいい。」

「…!」

「そうすれば、倒す必要もない。」

優はそう言いながら、私に向かって微笑んだ。

「だから、天音羽はそのままでいい。…人助けは、天音羽の中心にある、立派な意志だ。」

「優…!」

「でも、時間がかかるなら、あまり意味ないんじゃ…」

呂都丸が反論する。

「それでもやるべきだろ。長い目で見れば、必ず必要になる。」

…そうか。私は、目の前しか見れない。優は、ずっと先のことも考えていたんだ。

私がここで落ち込んでいても、何も変わらない。鳥さんは当てにならない。救えるのは、私だけ。

「…ありがとう、優。」

「…別に。当たり前のことを言っただけだ。」

「…フフ。久しぶりに聞いたよ。そのセリフ。」

私は、チラッと呂都丸を見る。呂都丸はまだ元気がない。耳を垂らしてうなだれ、何か考え込んでいるようだ。

呂都丸は小さな背中に、大きく重いものを背負っている。

「呂都丸、何かあったら、何でも私たちに言うんだよ!」

私は、呂都丸の頭をヨシヨシと撫でた。

「私たちは、ずっと呂都丸の味方だから…!」

呂都丸は少し目を見開いた後、小さく頷いた。

…晴れた顔はしていないけど、これが今私にできる、精一杯。

「よーし!それじゃあ…頑張ろう!」

私は、一度ぶっ倒れかけた自分を奮い立たせるため、ドンッと胸を叩いた。

まだ何も変わってないけど、何か、いつもより先が見える気がした。いつも、優のおかげだ。

…あれ?

「そういえば、薬ってどうやって作るの?」

「俺は基本的な薬学知識しかない。」

「…!それだと作れないの?」

「難しいな。」

「やばいじゃん!」

私は、大声を張り上げた。

「一つ、あてがある。」

「ホント?!」

「あぁ。…ロトのこととか、いろいろ話すことになるが…いいか?」

「優が信頼できる人なら、いいよ!」

「なら、薬作りはその人と俺でやる。その間天音羽は…」

「動物の実験体を倒しつつ、特訓をします!」

私も、もっと考えないといけない。人助けをする意味を。そして、もっと強くならないと。…あの鳥さんよりも、もっと。

「わかった。」

強くなるんだ。全ての人を助けるために。もう誰も、目の前で奪われることのないように。

「よし!」

私はもう一度胸を叩いて気合いを入れ、早速特訓の準備をしに行った。


…“人”と戦う前に優達がつかんでいた鳥さんの正体は、聞くのを忘れていた。

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