呂都丸の懸念〜Rotomaru's turn〜
「じゃあ呂都丸、頼んだ!」
天音羽がブンブン手を振る。
「…ねぇ、優。」
僕は、難しい顔をして腕を組んでいる優に話しかける。
「なんだ?」
「映画って、まだ撮影してるの?」
「…あぁ、してるはずだ。」
「そっか。ありがとう!」
「…あぁ。」
優は質問に答えただけで、特に何も聞いてこなかった。
今日、僕は1人で出かける。
あの鳥人間の情報収集をするため…ではなく、その鳥人間に会うためだ。
これは、姉ちゃんたちには言っていない。確証がないし、もしかしたら危険かもしれない。いろいろ曖昧で、でもこれだけはなんとなくわかっている。
…鳥人間は、僕と同じだ。
だから、会いに行く。敵か味方かはわからないけど、どうして会ってみたかった。
だから、街を出るつもりはない。
…姉ちゃんには悪いことしたな。いろいろ、行く街の観光スポットとかも教えてくれたのに。
それにしても、優があんなにあっさり行かせてくれるとは思わなかった。僕が街からいなくなれば、姉ちゃんは変身できない。
優ならわかってたはずなのに。
それに、優は僕が何か知ってると気付いてる。…そんなに僕顔に出てたかな?本当に優は、頭も勘もいい。
人気のない路地を歩いていくと、この前姉ちゃんと一緒に仕事をしたスタジオに着いた。
ここに、あいつがいるはず。
僕はグルグルとスタジオの周りを歩き、空いている窓を探した。
「よし!」
そしてそこから、ピョンと中に入った。
スタジオの中は賑やかだった。人が慌ただしく動いている。僕はバレないように、カートの下や段ボールの隙間を通りながら、あいつのいる部屋を探した。
ガチャと扉を開ける音がし、女の人が外に出てきた。
「!」
その部屋の中に、あいつがいるのが見えた。僕は、ササッと中に入る。
「不法侵入だよ。猫さん」
あいつが話しかけてきた。ニコニコと笑っていて、声も穏やかだ。でも、…その裏に、押しつぶされるような圧迫感があった。
「…」
「何か喋ったらどうだい?君は、僕に用があって来たんだろ?」
「…僕は猫だよ。」
「…あぁ。元人間のな。」
「!」
あいつ…フェリスはスッと顔を真顔にし、低く冷たい声で言った。
「…知ってたんだ。」
「見ればわかる。」
フェリスは僕の方は見ずに、台本をパラパラとめくりながら言った。
「お前もそれで俺に気付いたんだろう。」
フェリスは、スッと金色の目を細めて言った。
「実験体は皆、金色の目をしている。…薬品の副作用だ。」
「…そうなんだ。」
副作用だというのは、初めて知った。でも、組織の施設にいた頃、たくさん金色の目の人がいたことに、最近気付いたのだ。
「じゃあ、フェリスは成功したんだね。」
「…俺が成功したわけじゃない。」
「?違うの?」
「あぁ。」
「誰が、成功したの?」
「それをお前に言う必要はない。」
「…そこまで言って言わないのはひどくない?」
「ここまではお前も知ってることだ。だがここからは、俺に関わる話。…部外者に話す義理は無い。」
「…じゃあ、質問を変える。」
僕は、真っすぐフェリスを見上げて言った。
「君は…君の知ってる成功した人は、どうやって逃げたの?」
フェリスは、台本をめくる手を止めた。
「僕も、組織の実験体だ。逃げてきた。その成功した人も、組織の施設から逃げたんでしょ?…でも、一つ問題がある。」
フェリスが、初めて僕の方を見た。光る金色の目が、施設にいた頃を思い出させる。
「施設から逃げるルートは一つだけ。狭い側溝を抜ける道。そこを人間が通れるわけがない。通れるのは、動物や虫だけだ。」
「…」
「どうやって逃げたの?」
僕は、もう一度聞いた。
「…もちろん、動物になって逃げた。」
「…?!動物に、変身できたの?」
「お前はできないのか?」
「…できない。」
「…そうか。だが、それを聞いてどうするつもりなんだ。」
フェリスは、怪しむように目を細めた。
「お前はそれを知るためにここに来たのか?」
「別の目的が本当はあるんだけど…」
「なら、なぜ聞かない?」
「聞いても、教えてくれないでしょ?」
僕は、口を尖らせて言った。
フェリスは少し目を見張り、フッと笑った。…正直、怖かった。
「…それもそうだな。」
「君がもし敵なら、僕倒すけど。」
「無理だ。」
「…やってみないとわからないでしょ。」
「お前の戦いを見ればわかる。」
フェリスは僕を蔑むような目をして言った。
「お前は、俺より弱い。」
そしてすぐ、台本に目を戻した。
「倒すなんて言葉は、人間に戻ってから言ったらどうだ。2人で1人前のうちは、俺には勝てない。」
「…?人間に、戻れるの?」
僕は、思わず上ずった声を出した。
「あぁ。」
フェリスは短く、そう返事をした。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!とうとう第4章突入です…!これからも皆さんに、天音羽たちのヒーロー生活を楽しんでいただきたいです!
さて、なんだか最後にとんでもない言葉が放たれましたね~。皆さん、次回もお楽しみに!早くて今日、遅くて明日の朝には投稿します!
感想、誤字報告をしてくださると、めちゃくちゃ嬉しいです!皆さんの推しキャラ、好きな場面、ぜひ教えてください!




