鳥の痕跡
「問題は…誰が行くか、だな。」
あれから私たちは作戦会議をしていた。
日本での鳥さんの目撃情報は、ほとんどが私たちの住んでいる街だった。優が調べてまとめた地図を見てみると、意外にたくさん、実験体が出ているらしい。ただ、強さはそれぞれで、一般人が倒せる程度の怪物がほとんどだ。
「別の街にも、いくつか鳥人間の目撃情報がある。」
優は、地図を見ながら言った。
「おそらく、そこに強い実験体が出たんだろう。」
「なるほど〜」
私はフムフムと相槌を打ちながら聞いていた。
「じゃあその人に話を聞けば、何かわかるかもだよね!」
「あぁ。」
「よし!じゃあ行こう!」
「いや、天音羽はこの街にいたほうがいい。」
「なんで?!」
「今世界で最も頻繁に実験体が出るのはこの街だ。天音羽はここにいたほうがいい。」
「でも、鳥さんもいるでしょ?」
「だから、この街が一番鳥人間が出やすいだろ?」
なるほど。じゃあ私はこの街に残って、怪物を倒しつつ、鳥さんが出てきたら情報収集をすると。
「了解!…じゃあ、他の街の方は優が行く?」
「…いや、俺が探ってるのが相手にバレるとまずい。ロトと接点があるとバレたら天音羽がロトだとすぐにバレる。」
「…じゃあ、誰が行く?」
「そうだな…」
珍しく、優が途方に暮れた顔をしている。こんな顔すること二度とないかもだから、写真撮っておきたい。
「…僕がやる。」
「?!」
先程まで私の膝の上で黙って話を聞いていた呂都丸が、口を開いた。
「いや、お前は行かない方がいいだろ。そもそも猫だと人と話せないだろ。」
「お願い。僕が行きたい!」
「だめだ。」
優にあっさりと断られた。
「お前はいつ組織にバレるかもわからない。外に出ないほうがいい。」
「でも、猫の方が一般人には警戒されにくいでしょ?」
呂都丸はなんとか説得しようと必死だ。
「それにすぐ身を隠せるし、人が聞くよりもっといい情報を聞けるかもしれない。」
「確かに!」
それもそうだ。猫の方がいろいろできる。
「優!呂都丸にやってもらおうよ!」
「だめだ。何があるかわからない。」
「なんで?!」
「だから、いつも言ってるだろう。」
優は、眉間にしわを寄せながら言った。
「呂都丸は外に出たら危険だ。鳥人間が呂都丸のことをどこまで知ってるかもわからない。組織が捜索してる可能性もある。それに、その額のマークは目立つ。」
「大丈夫!」
私は全力で言い切った。
「何を根拠に…」
「だって呂都丸、かわいいから!」
「…は?」
「かわいい猫は警戒されにくいんだよ!SNSに投稿されることさえ気をつければ、そんなに警戒しなくて大丈夫だよ!それに、見た感じ、この街よりどこも人いなそうだし!」
「万が一のこともあるだろう。やめておいたほうが…」
「行かせてあげよう!」
呂都丸は、日常で外に出たことがない。私は情報収集よりも、呂都丸に外を楽しんでほしい気持ちの方が大きかった。今回は絶好の機会だ。
「お願い!優!」
私は、パン!と思いっきり鳴らしながら手を合わせ、優にお願いした。
優は、しばらく難しい顔をしていたが、ずっとお願いしているうちに根負けしたのか、
「…わかった。ただし、注意事項を必ず守れ。」
了承してくれた。
「やったね!呂都丸!」
「…姉ちゃん、ありがとう!」
呂都丸が、私を見上げてニコッと笑った。
…めちゃくちゃかわいい。
「よろしく!呂都丸!頑張れ!」
「…うん!」
「…おい呂都丸。何か隠してないか?」
急に、優が目を細めながら言った。
「?何も隠してないよ?」
「…そうか。」
優は、呂都丸から視線を外し、地図を見つめながら言った。
「…呂都丸、無茶はするなよ。」




