謎の乱入者
「うわ!5体!!」
応援の歓声が飛び交う中、私は怪物5体と対峙していた。
見た感じ、犬みたいだ。でも、牙が長く鋭い。複数の光る金色の目が、不気味さを増している。
「アオーン」
怪物のうちの1体が鳴いた。
「狼だ!」
遠吠え。それを聞いた他の怪物も、一斉に私に牙を向けてきた。
でもそんなことよりも
「優!!狼!私わかったよ!」
いつもは何の種類の動物か、優が教えてくれていたが今日は私だけでわかった。これは褒めてもらうべきだ。
『ワースゴーイ』
『姉ちゃんすごい!』
耳に付けたイヤホンと頭から、同じ意味のはずなのに全くトーンの違う声が聞こえてきた。
「余裕!!」
動物の種類さえわかってしまえば…
「優!どっかに骨ない?」
『…は?なんで?』
「狼って犬の仲間でしょ?」
そのくらい私だって知ってる。得意気に言ったのだが、耳に入ったのは長いため息だけだった。おかしい。
『姉ちゃん前!』
「おわ!?」
そんなことを話しているうちに、あっという間に狼に囲まれてしまった。
こんなことを一瞬で考えるなんて…
「優!狼頭良いよ!」
『知ってる』
即答された。
「まぁでも、このくらいなら!」
『やっちゃえ姉ちゃん!』
「どおりゃ!」
私は、鍵爪をぶん回しながらクルッと一回転した。狼がたじろぐ。そのうちに狼の囲いの中から抜け出した。
「よし!次はこっちの攻撃!」
「いけ!ロト」「やっちゃえ!」「がんばれー」
みんなの応援を聞きながら、私はヒュッとならしながら鍵爪を一振りして気合いを入れた。
そのとき、また狼が口を開いて
「アオー…」
遠吠えをしようとしたが、鳴き終わる前に、その声は空に吸い込まれて消えてしまった。
「?!」
狼はバタッと倒れた。その喉に、黒い矢が突き刺さっている。…そのまま、ドロリと消えてしまった。
「…え?」
次々と狼が倒れていく。そして一斉に、ドロリと消えてしまった…。
……。
その場にいた誰もが、声を出せずにいた。何が起きたのか、わからなかった。
…ただ、目の前の青い空に、真っ赤な翼が広がる。
真っ黒な霧に覆われ、それがどんな姿をしているのか、翼があること以外わからない。
その手に構えた真っ赤な弓。その構えがあまりにもきれいで、私は目を離せなかった。
その姿は…
「…鳥?」
思わず私は、そう口にした。妖しく光る金色の目が、黒い霧の中から刺すように私を見た。
『…まさか、あの弓で狼を全員撃ったのか?…この短時間に?』
イヤホンから、優の呆気に取られたような声が聞こえる。
『グルグル…』
頭の中で、呂都丸が唸り声をあげる。
それもそのはず、目の前のそれは、並々ならぬ雰囲気を纏っていた。…隙も無駄も感じない、圧倒的な強者感。
その場の誰も、声を出すことができなかった。ただ、異様なほどに不気味、それでいて惹き込まれるその姿に、魅了されていた。
それは、真っ赤な翼を一際大きく振り、高く飛び上がった。
「…ま、待って!」
なんとか、声を出した。…これ以上、はやる心臓を押さえることはできない。
「今のどうやったのー?!」
知りたい。この人は、どうやって狼を倒したのだろう。すっごく気になる!
…でも私が口を開いたときには、もうどこにもその姿はなかった。




