アクション映画
「ぜひ、お願いします!」
最近よく出てくるようになった怪物をササッと倒した後、知らないおじさんが話しかけてきた。テレビ局の人で、アクション映画を作るらしい。
「ロトさんをモチーフにした映画を作るために、ぜひ一度テレビ局に来ていただきたく…」
おじさんが熱弁する。
『やめとけ。お前、赤点補講あるだろ。それに、何に巻き込まれるか…』
「お受けします!」
『おい。』
せっかくのお願いを断ることはできない。
私は、イヤホンから流れる優の忠告を無視して、その仕事を受けることにした。
「ねえ天音羽!聞いた?ロトがモチーフの映画!!」
「スゴイネー」
「…天音羽って、ロトのことホントに興味ないよね。」
これでも頑張って演技しているほうなのだが、どうやら棒読みだったらしい。
「でも今回は、絶対天音羽も観たくなる!キャストがすごく豪華なの!見て!」
真子は興奮しながら、鼻に当たりそうなところまでスマホを近づけてきた。
「特に注目されてるのは、この俳優!フェリス・アーレス!」
その名前を聞いた途端、わらわらと他の女子も集まり盛り上がり始めた。
「めっちゃかっこいい!!」「自分からこの映画に出たいって言ったらしいよ!」「今日日本に来るらしいよ!」
キャアキャアと騒ぐ女子達の間から、スマホの画面に映る俳優を眺める。
通った鼻筋、長いまつ毛。切れ長の涼しげな目。爽やかスマイルに白い肌。赤黒い髪と金色の目が、常人にはない魅力を放っている。
…確かにイケメンだ。
「絶対映画観る!」
女子達がそう息巻いている。
…もうロトの存在忘れられてない?
「よし!じゃあ変身しよう!」
「了解!」
優に指定された場所で変身し、テレビ局へ向かう。優には、指示を無視したことをめちゃくちゃ怒られたが、たくさんの注意事項を守ることを条件に許してくれた。
「お待ちしておりました!ロトさん!」
受け付けで、眼鏡おじさんが出迎えてくれた。
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ」
眼鏡おじさんに案内され、キャスト達の待っている部屋に向かう。
「こちらです。」
「…!」
有名人がいっぱいいる。
「始めまして!ロトです!よろしくお願いします!」
部屋中に響き渡る声で挨拶をした。
『…姉ちゃん。あいつ、誰?』
「え?あいつ?」
思わず声に出してしまった。キャスト達が怪訝そうな顔で私を見ている。
「誰と話しているんですか?ロトさん。」
大勢のキャスト陣の中から、赤黒い髪がひょこっと出てきて、私に手を差し出した。
「気を抜かずに頑張りましょう。…始めまして、ロトさん。」
私は、その俳優の手を握って握手をする。誰だっけこの人。どっかで見たような…。
「僕の名前は、フェリス・アーレス。よろしくお願いします。」
フェリスはそう言って、爽やかスマイルを浮かべた。
でも、その金色の目に笑みは見えず、私ではない誰かを狙っているようだった。




