14 義父(おやじ)と義兄(あに)と静かな夜 その2
ユージンとガストン、とりとめのない話をしているうちに、二人はアルベール邸に帰ってきた。
「ただいま」
本当に長い一日を終えて、やっと肩の荷を下ろすユージン達。アルベールとエレナは嬉しそうに二人を出迎えた。
「ハラ減ったよ。今日一日殆ど何も食ってねえし」
ユージンは礼装のジャケットを乱暴に脱ぎ捨てて、シャツの袖をまくり上げて椅子に沈みこんだ。
「何だ⁈……お前、食事させて貰えなかったのか?」
「いや……口に合わないんだ。日頃食べているものじゃないから、パス」
「……ユージン、あんたって小さい頃から偏食気味だったからねえ……」
エレナが困ったような顔をしながらも、彼が普段食べている温かい料理を並べていく。
「やっぱり家の料理が一番だな。……変に甘ったるくないし、肉焼いて、ちょっと岩塩振っただけの方が旨いし……」
ユージンも、嬉しそうに次々に料理を平らげていく。
傍らでアルベールとガストンが酒盛りを始めた。ユージンは疲れ切っているためか、酒に手を出そうとはしなかった。
「ストイックだな、お前」
「ちげーよっ。さっさと食べて寝てえんだよ!俺はっ」
「そうだな。大役だったよな、お疲れ!」
アルベールも笑う。
「いいから早く寝ろよ。出ないと明日の朝、早くからうるさいのがやってきそうだからな」
「___寝る」
口数少なく、あまり喋らないユージンだったが、好きな場所に帰ってきた安心感と疲労とですぐに自室へ戻っていった。
アルベールがガストンに尋ねる。
「どうだ?王宮内の様子は?」
「師範の思う通りですよ。そりゃあ、ただの平民騎士が今回先導騎士に選ばれたんですから、やっかみ連中も多いでしょう。私だって、アルベール師範の息子でなけりゃあ、そう思いますぜ」
「……すまんな。色々……と」
「……いえ、王宮でのあいつの味方は、モラン卿が、私しかおりません故……」
「そろそろ、動き出すのも頃合いだろう。王宮内の掃除を一通り終えたら、こんどこそユージンとこの国を出てもいいと俺は本気で思っているのだよ、ガストン」
「師範__」
(元はといえば、『ゼノス陛下の力』のお陰で生かされた命、これがどうなろうと悔いはない。……このことをガストンに打ち明けるべきだろうか……)
「ユージンがどの道を選ぶか分からないが、あいつの行く末をエレナと見届けるつもりだ。……まだまだ死ねんよ」
「はい……」
悪役を演じるガストン騎士団長だが、裏ではユージンをそっと見守る一人であった。




