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この国の戦力

「本題に入る前に発言をお許しください」


 扉が閉まると同時に、真っ先に口を開いたのはミラスであった。


「……どうぞ」


 カイルに目で確認を得たルトレリが、許可を出す。


 ミラスの矛先は、俺に向けられた。


「我が主にかけた呪いを解け」


「カイルへの叛意ありと見なすね」


「アギト」


 滲み出す瘴気に、カイルが眉一つ動かさずに止めてくる。


 だがカイルの制止にミラスが勢いづいた。


「平民の分際で……王と親しければ何でも許されると思ったか?」


 すると今度はカイルが立とうとしたので、肩に手を置いて落ち着かせる。


「そうだねぇ。

 王に縋ってばかりの雑魚貴族が治める大国の金級と、互角に渡り合える程度の平民だよ。

 ふんぞり返っている権力は、力の上に成り立ってる事を理解してから発言した方がいい」


 人とは不思議なもので、誰かが怒っていると怒りを吸われたかのように理性が戻ってくる。


 カイルの立場で俺らを庇うような発言をさせれば、後々揚げ足取りにたかられかねない。


 それに、ミラスをあえて突っぱねたのには訳があった。


「お付きの兵士を矢面に立たせて、肝心のご本人はだんまりかい。 いいご身分なこった。

 で、どんな理由で呪いを解いて欲しいんだって?」


 ミラスの背後で優雅に座る中年の男、『レヴァド・ヒーディア』。


 どうもこいつが、ミラスをあえて遊ばせているようなのだ。


 髭の先まで整えている神経質な容姿とは裏腹に、ヒーディアは挑発に動じること無く、うざったいくらいに口をゆっくりと開ける。


 どんなキザったらしい言葉が聞けるのかと楽しみに待っていれば、出てきたのは溜息であった。


「これだから教養の無い狂犬は困る。

 頭も品も無いくせして、鼻ばかり良いのだから」


「……カイルより態度でかいぞ。

 玉座譲ってやったらどうよ」


「……比較的マシな常識人なんだよ」


 ここまで仕上がっていると、怒りを覚えるよりギャグに思えてくる。


「世も末だね……」


「この国、もう結構末ですけどね」


 こらこら、縁起でも無いこと言うんじゃありません。


「あー……言葉を理解する知能があるなら、2択で答えてね。

 呪いを解く代わりに殺されたいか、呪いを解かずにこのまま過ごすか。

 どっちがいい?」


「王への忠義を示すべく、下賎な蛮族の穢れを寛大な心で許すとしよう」


「よーし分かった。

 もう喋らなくていいよ〜。

 お前に脳みそ1片たりとも使いたくねぇ。

 発案者抜きでシフト組もうぜ」


「そんな訳にもいかないでしょう」


 ルトレリが呆れているが、もう俺こいつと話したくないもん。


 ムカつくよりか、痛々しさを感じてならない。


「話を戻すわよ。

 悪夢はともかく、エゼロ。 あなたも数えさせてもらうわね」


「構わねぇ」


「それとさっき金級2人でって話していたけれど、まるっきり2人を拘束するのは現実的では無いわ。

 1人は城待機、もう1人は王都内にいるようにしましょう。

 他にも銀級くらいが何人か欲しいわね」


「それならギルドから出しゃいい。

 信頼出来るやつを見繕っておくから……」


 ルトレリとエゼロの仕事の早いこと早いこと。


 俺達が話について行こうと聞いている間に、気付けば大雑把なシフト表が完成していた。


「都合の悪い日があったら、私かエゼロに教えてちょうだい。

 調整するわ。

 こんな所でいいかしら」


「あざまーす。

 『悪夢』は今んとこ、このシフトでおkよ」


「俺も問題ねぇ」


「……私もこれで構わない」


「私は主を御守りする役目がある。

 後日都合の付かぬ日を伝えよう」


 王の護衛の勤務だってのにこの発言はだいぶ舐め腐っているのだが……カイルが何も感じていないのなら、まぁいいだろう。


 話が纏まったのを見計らい、ミラスらは苛立つムアを避けるように部屋から出て行った。


「あ、ファルシュは居残りね」


 開け放たれた扉からコソコソ逃走を試みていたファルシュは、呼ばれるなり肩を跳ねさせて固まった。


 それを不思議そうに見ながら、エゼロとティラックがすれ違って出て行く。


「ルトレリは残って。

 この中で1番大人だから」


「待て、それはどう言う……」


 思わず振り返ったファルシュは、人の姿のムアを見るなり、今度こそ完全に固まってしまうのであった。



●●●●



「そう……レミニールの……

 不思議な縁もあったものね」


 カイルから事の経緯を聞いたルトレリは、感慨深げに呟いた。


「ルトレリは祖母と面識があったの?」


「少しだけよ。

 とても聡明で魔力が強い子だった。

 けれど『気』が弱くて、少しでも無理をすると直ぐに体調を崩していたけれど……あなたは健康そのもので良かったわ。

 それで……ファルシュ。

 親友の孫に、何かかけてあげたい言葉は無いの?」


「……私には、顔を合わせる資格など無い」


 ため息を付いたルトレリは、ファルシュを椅子ごと拉致し、カイルの前に座らせる。


「……」


 それでもファルシュは頑なに顔を合わせようとしない。


「ファルシュって学生の頃からこうだったんですか?」


 リーチェの質問に、ルトレリが見えがよしに溜め息をつく。


「そうなのよ……。

 レミニールと喧嘩した時も、この子の場合は力が力だから、いつも私が仲介に入ってね…」


「先生、その話はいいだろう」


「ほら、この態度が原因で誤解されるのよ?

 私はファルシュの優しい所を知って欲しくて、いつも心配していたのに、ちっとも変わってないじゃない」


「でも……」


「だったらお友達はどれくらい増えたの?

 言ってみなさい」


 強……


 もうお母さんやん。


 てかルトレリも見た目通りの年齢じゃ無いのね。


 30代くらいに見えるけど魔仙か何かかな?


「それにリーチェは友達……」


 苦しい弁解の末に出したリーチェの名で自爆し、再び黙り込むファルシュ。


 しょうがない。


 せこいやり方ではあるがお力添えさせて頂こう。


「そもそもリーチェは何でカイルに顔向け出来ないのさ」


「……決まっているだろう。

 レミニールの望みに反するからだ」


「でもカイルの気持ちが変わって、自分の意思で王になったから俺達も今ここにいるんだよ?」


「……」


「それに、資格なんて誰が決めたのさ。

 今、カイル本人の望みが紛れもない事実でしょうよ」


「でもアギトも、戦ってる時間違えてた」


「反省したからこその今があるのです」


 容赦無く刺してくるムアを鉄面皮で弾きつつ、ファルシュの返事を待つ。


「………それに、私はアギトの事を殺そうとしたのだぞ」


「知ってる。

 俺はファルシュが殺すのを躊躇ってくれたのを逆手にとって、騙し討ちの時間を稼がせて貰った。

 ほら、おあいこだ」


「………」


 『やるじゃない』とサイレントスマイルを向けてくるルトレリに、ドーモと鼻を鳴らして返す。


 しばらく考え込んでいたファルシュだが、遂に頭の中での言い訳が尽きたのだろう。


 顔を手で覆って項垂れた。


「…………これでは私が駄々を捏ねているようでは無いか」


 そうなんだよ、とは喉から出かかっても言わない。


「ムグ…」


 あ、ラグニィがムアの口塞いでら。


「ふぅ………」


 意を決し恐る恐る顔を上げたファルシュは、カイルの顔をまじまじと眺める。


「……あ、あぁ………」


 宙に浮かぶ言葉の変わりに、涙が細く後を綴る。


「僕の祖母の事、聞かせてください。

 ……あなたの、親友の話を」


 握り締められた指の隙間から零れるのは、見覚えのあるペンダントのチェーンであった。



●●●●



 城の結界を抜け、振り返る。


「それじゃ、当番ヨロシク!」


「ああ。

 ……ありがとう。 先生も」


「ちゃんと友達が出来ていたみたいで良かったわ。

 一応、気をつけるのよ」


 あれからしばらく語り明かし、ファルシュの涙が乾いてきた頃合でカイルが目を擦り始めたので、お開きとなった。


 ルトレリと共に、5人で学園橋をのんびり歩く帰り道である。


 学園橋の終点が城にぶっ刺さっているのは、流石王族待遇と言ったところか。


「ルトレリって何歳なの?」


「ンッグ」


 ムアの突然のぶっ込んだ質問に、ラグニィがおかしな呼吸をしてむせている。


 だが当の本人に気を悪くした様子は無いようだ。


「そうねぇ……一応、学園やトラモント王国よりは年下よ」


 そこら辺が比較対象に上がる時点で、並の年齢で無いのは確かだ。


「トラモントが建国1200……何年だったから……ライゼンより年下」


「あら、ライゼンって豊穣のライゼンの事かしら?

 そう言えばアギトの力って、ライゼンの力に似た者があるわよね?」


 こら、またこの子は……


 でもルトレリの人となりは何となく分かったし、まあいいか。


「そ、俺とムアの師匠ね。

 面識ある?」


「残念ながら無いわね。

 でも、そう………通りで強い訳だわ。

 それに、権力や富にも執着が無いのも似てるわね」


「そう? お金は好きだけど」


「でも道具としてでしょう?」


「まぁ、確かに」


 ただお金への執着の無さは、権力や地位などと似たような感覚があるような感じはする。


 日本の『円』ばかりに触れてきたせいで、こちらの貨幣を使っている時は物々交換をしている気分なのだ。


 『銅貨100枚』か『諭吉さんだよ』と言われたら、価値が高いのは前者だと分かっていても心が喜ぶのは諭吉さんなのである。


 その諭吉さんも近々淘汰されると、空間の裂け目に吸い込まれる前に聞いたのだが。


「植物の食べ物はノゾムがいれば足りるから、お金はそんなに必要にならない」


「いやいやいや。

 直近でっかい買い物したの、私忘れてませんからね」


「……?」


 本気で心当たりの無い様子のムアに、ラグニィが渋い顔をする。


「土地ですよ、土地。

 いくら呪われていたって、普通に生きてたらあんなに大きな土地買わないですからね?」


「前言っていた、あなた達の新しい家の事?

 そんなに大きいの?」


「大きいですよー。

 こーんな……ちょっと」


 身振り手振りを頑張るラグニィについ口元が緩んでしまい、ジロリと睨まれる。


「王都にある侯爵の別邸の3分の1くらいです」


「大きいわねぇ」


「カイル夜ご飯に誘えば良かった」


「今日は遅くなったから、どちらにせよまた今度だね。

 その時はファルシュにも声掛ければいいさ」


 友達の家で夜ご飯を一緒に食べる。


 地球にいた頃には経験できなかったが、俺自身是非やってみたい。


 たこ焼きパーティーとかしてみたい。


 鉄板用意しとくか……タコいないけど。


「ルトレリ寝る時間要らなかったら来る?」


 誘い方よ。


「あら、いいの?

 2人も、夜遅いけど大丈夫?」


 いいんかい。


「ルトレリ先生こそ、お疲れじゃなければ是非食べて行ってください」


「是非是非!

 広いお風呂もありますよ〜。

 リーチェが調合してくれた薬湯でお肌ツルツルですよ!」


「いいじゃない、いいじゃない〜」


 こうなってしまっては俺の意見など暖簾に何とやらである。


 こりゃ朝までリビングは占領されそうだなぁ……。







「そう言えばムアちゃんは何歳なの?」


「ムアは中くらいの世界3つ分」


『え?』

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