高機動車にて
しばらくして、高機動車に乗って御殿から出て街からも出て、ひたすら道を走っていく。もちろん、高機動車は魂ではなく実車だ。街の外の風景は、まるでリアル世界のように草原だったり川が流れていたり、遠くに山があったりする。ちなみに出かけたのは大和と元帥と電子戦機EC-1だ。
EC-1は大型兵器なのか、まるでレスラーのように体がデカい。
そしてしばらく行くと空港があり、そこで輸送機に乗って離陸する。この輸送機も人間の形をした兵器の魂ではなく実機だ。ちなみに元帥は飛行機に搭乗するのは初めてらしい。
「で、僕たちはどこに行くの?」
「さきほどタイフーンがテロを計画したことは言ったけど、これは異世界とリアル世界で何かアクションを起こさないといけない」
「そうだよね」
「兵器は退役したり破壊されたり、すなわち人間でいうところの『死ぬ』とこの異世界に転生するのは説明済み。その辺はあいまいだけど、さらに言うと異世界に転生した後、リアル世界に戻った、すなわち蘇生した兵器の魂があるの」
元帥は驚いて「え……えええー」と素っ頓狂な声をあげる。
「人間のあなたには死んだ者が復活する蘇生と聞くと驚くと思うけど、何の根拠もないわけではないわ。たとえば日本にF-2という戦闘機があるんだけど、この戦闘機、東日本大震災で現地の基地の機体が津波で破壊されたの。当然、その魂がこの異世界に転生してきたんだけど……」
「うーん、そんなことあったっけ?」
「記憶がまだ戻っていないようね。まあ話を聞いてて。んでその後、破壊された一部のF-2が再生されたらしいの。となると当然この異世界にいたF-2の魂も……」
「蘇生してリアル世界に戻ったと?」
「そう。例はこれに限らず、海外の兵器でも同じような例がいくらかある。ただこの異世界は恣意的にできているのはさっき言った通り。F-4EJの話によると、日本の主力戦闘機F-15Jはかなり事故で損耗しているけど、その魂はこの異世界には来ていない」
「なんでかな?」
「あえて言うのなら『御神慮』って言ったところかしら。この世界の軍事バランスを保つための。まあその話は置いておくとして。とにかく兵器の魂が蘇生できる可能性がある。タイフーンはその方法を掴んだのかもしれないわね。そして双頭の鷲計画を実行する」
「うーん……あれ? 僕たちがこうやって行動を起こしたところを見ると、大和さんにはなんか対策でもあるのかな?」
「それは分からないわ。ただ試してみたいことがあるの」
「具体的には?」
「ロシア製最新鋭兵器の魂を転生させるにしろ、リアル世界を支配するにしろ、とにかくリアル世界のタイフーン級が絡んでいるのは間違いない。おそらくリアル世界に蘇生する方法があるはずだから、私たちもリアル世界へ蘇生する方法を確保しておく必要がある」
「え、ということは気長に震災が起きて兵器が破壊されて、それが再生されるのを待つと?」
「そんなことをしていたらタイフーンの双頭の鷲計画に先を越されてしまうわ。そこで……」
「そこでって、まさかそれを人為的に起こそうとか言うんじゃないよね」
「ご名答」
それを聞いた元帥はうなだれて「はあー」とため息をつき、そして続ける。
「そんなことできるわけないでしょ。人間が生き返る事なんてないんだし兵器も……」
「だけどさっき言ったように例はあるわ。だから私たちはこうして出かけているわけ」
「と言うより僕たちはどこに向かっているの?」
「アメリカ州」
「アメリカ州ってアメリカ兵器の魂の国だよね」
「そう。そこで異世界からリアル世界に蘇生したことのある兵器がいるの。それを当ってみるの。詳細はそこで」
「はあい……ところでこの世界ってどうなってんの? 宇宙とかあるの?」
「兵器たちに人間みたいな探求心がないから、そんなこと調べた兵器の魂はいないわ。ただ、朝にはお日様は昇るし夜は月が出るし火星も見える。だから恐らくこの異世界にはリアル世界と同じように太陽系が存在する。そして私たちがいる惑星は地球に当たるの」
「だよね」
「そしてこの惑星はリアル世界とは地図がだいぶん異なる。ただ兵器の魂は開発、生産、配備された国に従って固まって生活をし、国を形成している。それらの国は、リアル世界で超大国のアメリカや中国は州、ロシアやドイツは県、私たち日本は軍事力が低いから街を名乗っているわ」
「なんか喜んでいいのやら悲しんでいいのやら……」
「その国はそれぞれリアル世界の国とほぼ同経緯度に位置する。ただ国と言っても兵器の魂は食わなくても死なないし、ダウンさせられても死なない。だから福祉とかが不要……」
「んじゃ国と言っても政府みたいなのはないと?」
「いえ。一応、魂と言っても人に近い存在だから政府は必要。ただ普段は何もせず、魂同士でもめたり、何か調整の必要な事業があったりするときぐらいしか出番はないわ」
「んで、先日の異世界大統領選出戦は全世界のトップである世界大統領を選出するみたいなものなのかな?」
「そんな感じね。といってもやはり世界政府が無いように異世界大統領も権力があるわけではない。あえて言うのなら求心力が非常に高くなるということね」
「求心力ってなに?」
「人を引き付ける力ね。でも軍事力のような有形の物ではないわね」
「そうかあ、なんか不思議だね」




