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突然のハーレム

 そして大統領選出戦から帰ってくると兵器の魂たちの少年を見る目が変わった。明らかに好意を抱いているようで、少年は起床すると兵器たちに囲まれていた。

 それを大和が制し、いつもの御殿の大広間で朝食をとる面々。兵器の魂たちはボルトやネジを食べ、油を飲む。少年はあいかわらず魚の塩焼きやみそ汁を食べている。だがやはり兵器の魂たちがチラチラと少年へ視線を飛ばす。

「ね、この航空燃料飲んでみない? 日本製の最高級の燃料だよ」

「少年がそんなの飲むわけないっしょ。そこの川で汲んできた水はどうかしら。リアル世界の高級ミネラルウォーター級だよ」

「そんな水はトイレにでも流してきて。私が以前の航海で釣ってきた天然物の真鯛はどう?」

「私この前の演習でトリュフを見つけたんだけど……」

 代わる代わる、少年のもとにやってきていろいろと勧めてくる。

 そんな調子の食事を終えると大和が切り出した。

「はい、みんな。これまでの総括と今後の予定を説明するわね」

 一同大和に注目する。

「大統領選では私たち日本はロシア県に負けました。そしてアメリカは準決勝で中国州を、決勝でロシア県を下し、無事に異世界大統領の選出権を得ました。そしてアメリカ州内での協議の結果、空母エンタープライズが大統領になりました」

「そんなことは大和姉が再度説明しなくとも知ってるっすよ」

「まあまあF-4EJ話しを聞いて。それ以外にもいろいろなことがわかりました。少年の記憶が少し戻りました」

「おおっ」

 一同が驚きの声を上げる。

「僕の名前を思い出したの。僕の名前は源水下みなもとみずかだよ」

「みなもとみずか、みなもとみずか、げんすいか……ようするに元帥閣下という事っすね。これから元帥って呼んであげるっす」

 元気よくそう言ったのはF-4EJだ。

「はい、それで彼はリアル世界では何だったのか。ある程度推測できるようになりました」

「大和姉。たしか、大統領選出戦で最後ロシア県の核ミサイルを何発か迎撃したんすよね」

「そうF-4EJ。元帥君は核ミサイルを無効化した。ここで一番新参のF-4EJならついこの前までリアル世界にいたから、なにか分からないかしら?」

「簡単にいえば核ミサイルを無効化できるのは、イージス艦っすね。簡単に言えば高性能な対空ミサイル艦っすね。それなら核ミサイルを撃ち落とせるっす」

「確かにイージス艦なら可能よね」

「いや僕が撃ち落としたというより、僕はただ爆発しただけなの」

「そうなの元帥君。んじゃほかに可能性としては……」

 大和がそう言うと。一同が口を紡ぎ沈黙が流れる。そこに発言したのは意外にも対潜ヘリHSS-2B(潜水艦を捜索して攻撃するヘリ)だ。

「私は戦後兵器の中では最古参ですから。少し思い当たる節が……、もしかして核兵器なんじゃ? 例えば戦略原潜(核ミサイル潜水艦)とか。まさか『遺憾の意』とか……」

「核兵器? あ、たしか冷戦時代、核ミサイルを自国上空で爆発させて、その放射線で敵の核ミサイルを無効化するという手があったわね。でもそれはあり得ないんじゃ、日本が核兵器を保有している可能性はゼロなんだし、ましてや戦略原潜なんてのは……」

「そうっすよね、大和姉。私もそれでいろいろ揉めたっすから」

 そう言ってF-4EJは後頭部をかく。F-4EJはリアル世界で核兵器を搭載できるとかで政治的に揉めたことがある。

「でも大爆発、おそらく核爆発を起こしたということは、元帥君が核兵器である蓋然性が高いわね」

 その大和の発言を聞いた面々は熱い視線を元帥に送る。

「元帥君、核兵器は人類最大の破壊力を持つから兵器たちにとってはメチャクチャ魅力的なの。これから大変よ」

「え……大和さん。それって、どういう事」

 元帥は短くそう言って困った顔をする。

「それともう一つ。元帥君は男の子としての本能も復活したようです」

 それを聞いた面々は眼の色を変える。しかしそれを制する大和。

「かといって、兵器の魂の外見は女の子。男の子の元帥君に見境のないことはしないように」

 面々は「はーい」と素直に答える。そして大和が続ける。

「それとアメリカ州から一つ情報が入っています。なんでもロシア県のタイフーンがテロ計画『双頭の鷲計画』を立てたということです」

 大和の発言を聞いた一同はキョトンとした後「ええー」と大声で発した。大和が続ける。

「なんでも大統領選出戦で敗退して、選出戦に不正があったと主張。もちろん誰も聞く耳を持たないので、テロで政権を奪うつもりらしいです」

「なんかまるで人間の世界みたいだよね」

「まあ元帥君はそう思うかもしれないわね。ただそれだけでなくこの双頭の鷲計画は異世界とリアル世界両方を手中に収めるもののようです」

「なんかあまりにも壮大過ぎて、話しが理解できないよ」

「元帥君、タイフーンの魂はもともとリアル世界では核ミサイルを搭載したタイフーン級戦略原潜なの。あ、ややこしいからタイフーンの魂と区別するため、戦略原潜の方はタイフーン級と呼ぶわね」

「んで、戦略原潜って何?」

「潜水艦発射弾道ミサイルSLBMを搭載した原子力潜水艦の事ね。SLBMは例外なく核弾頭を搭載しているから、事実上SLBMイコール核ミサイルなの。今後話を進めるうえでこの二点だけは覚えて頂戴。で、だからタイフーン級が使えればリアルの世界と異世界の両世界を支配できないこともないの」

「しかし話はそう簡単ではないよね。そもそもどうやってこの異世界にいるタイフーンが、リアル世界のタイフーン級を使うのか……」

「元帥君、単純に考えてね。簡単に言うとこの異世界からリアル世界に戻る、すなわち『蘇生』すれば、タイフーンの魂はタイフーン級に戻るから、それを使うことができるの」

「えっ、えええ。でもそんなことは……」

「まあ蘇生の仕方については置いておくとして、両世界を統べる方法だけど、この異世界では兵器の性能、すなわち軍事力がすべて。ということは自国の最新鋭兵器の魂がやってこれば、その陣営は強くなって大統領職を得やすくなる」

「ということはリアル世界で最新鋭兵器が退役すればいいということ?」

「ぶっちゃけ言ってしまうとそうなるけど、この異世界の『ことわり』は明確な理論ではなくかなり恣意的なの。退役したり撃破されたりした兵器の魂は確実にここに来るのは分かっているわ。あと事故とかね」

「と言うことは、まさか……」

「なんらかの方法で、リアル世界でロシア製最新鋭兵器が破壊されれば、異世界に転生してくる可能性が高い。それは核ミサイルがあるリアル世界のタイフーン級ならできないこともない。それにリアル世界を統べる方法も、タイフーン級の核ミサイルで各国政府を恫喝すれば……」

「確かに……」

「続きは高度の機密なのであとで話します。では解散」

 大和がそう言って会議を打ち切る。話が途中で終わったことに面々は不満だが、兵器である以上機密は心得ているので、みんな大人しく去っていった。

「元帥君にはちょっと付き合ってほしいの。一緒に出かけてもらえないかしら?」

「え、いいけど」

 だが、面々が見逃さない。「私も」「私も」と同行を求める。それを大和が制して場は収まった。

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