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タイフーンの撃退法

 最終作戦会議(改)は佳境に入る。

 そして一同は混乱し「え、え、え」と。

「そんな方法あるんすか。この異世界では兵器の魂に物理攻撃を仕掛けてもダウンはさせられるっすけど、一定時間で復活するっすよ。そんなものをどうやってこの異世界から消すと……いや、リアル世界に蘇生させれば、確かにこの異世界からは消せるっすね」

「いえ、それだと意味が無いの。確かに蘇生させて追い出すことはできるけど、私たちが何度もやっているように、自己破壊でいくらでもこの異世界に戻って来られる。それにリアル世界で憑依する物がなくなったら蘇生させられないし。時間が来たら退役となる可能性もあるし、まあタイフーン級は退役しないでしょうが……」

「んじゃほかにどんな方法が。この異世界とリアル世界の間に結界でも張るっすか?」

「一つの方法としては兵器でなくしてしまうことね」

「うっそお、そんなことできるんすかあ?」

 F-4EJは半信半疑の顔でそう言った。

「でもそれが一番の方法なの。この異世界には兵器の魂しか存在できない。それは元帥君でさえ例外でなかった。タイフーンも兵器でなくせばこの異世界から追い出せる」

「具体的には?」

「タイフーン級には民生化の計画もあったの。SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル、核ミサイル)の発射ではなく、民間ロケットの打ち上げプラットホームとして改造するというもの」

「あ、そう言えばそんな話もあったすね」

「おそらくSLBMの発射機、魚雷発射管、ソナー、各種戦闘システムを除去したうえで、再就役させれば、御神慮が民生品として認識し、この異世界から追い出せるかもしれないの」

「んじゃその魂はどこにいくんすか?」

「おそらく普通の『物』と同じように扱われるわ。ぶっちゃけ言ってしまうと、それ以降の事に関しては関知しないとしか知しないとしか言えないわ」

「で、それをどうやって実行するんですか?」

「現在タイフーン級を修理しているのはUAKから修理作業を下請けしているアリヨール社なの。アリヨール社はおそらく、タイフーンがこの異世界から蘇生させた兵器で、構成された会社のようなの」

「そんなものまであるんすかっ?」

「ただ兵器の魂では仮の肉体があっても、人間のように細かい作業はできない。おそらく、現場ではアリヨール社とUAKの社員が協力して修理しているはず」

「ならUAKを口車に乗せてしまえばいいと? 一番簡単なのは金っすね」

 F-4EJはそう言うと手を揉む。

「そんなお金、兵器の魂である私たちのどこにあるの? いままで私たちは双頭の鷲計画阻止でリアル世界のロシアまで敵視してきたけど、協力の余地はあるの」

 それを聞いたF-4EJは顔をしかめて「ええ、ロシアと協力う」と嫌がる。

「そもそも双頭の鷲計画はタイフーンが自分のためにやっていることであって、リアル世界のロシア政府にとっては迷惑でしかないの」

「言われてみれば、兵器見本市に核ミサイルをぶち込まれたり、核ミサイルで恫喝されたりする訳っすからね。しかもロシア政府はその失態の責任を世界各国から問われる可能性もあるっすし」

「それはUAKも同じ、いくらいまはアリヨール社とタイフーン級の修理で利害が一致しているとはいえ、双頭の鷲計画で何も得るものはないの。そこである手を打つ」

「ある手ってなんすか?」

「それよりもう一つ重大な問題があるわ」

「他に問題なんてありましたっけ?」

「忘れたの、元帥君の魂を手に入れた異世界のタイフーンの魂はどうするの?」

「あー、まだそっちが残っていたっすね」

「この問題のもっとも簡単な解決方法は元帥君をリアル世界に蘇生させるしかないわ。そうすれば異世界のタイフーンの魂の容量が必要量を下回って異世界に存在できなくなる」

「まあ、もうこうなったらいちいち驚かないっす。どうせ大和姉にはなんか作戦があるんすよね」

「ではそもそも元帥君はなぜ、この異世界に兵器の魂として転生してきたのか?」

「そりゃ子供のころ、肉体の50パーセント以上がR-39の部品に置き換わって……」

「そう、その後タイフーンに殺されたから」

 それを聞いた一同は驚愕し、F-4EJは「それ本当っすか?」と叫ぶ。

「タイミング的にそうとしか考えられないわ。ただ元帥君の病気は十年近く昔。タイフーンは周到に計画を用意していたみたいね」

「そうなるっすよね。んで蘇生方法は?」

「今回、タイフーンは元帥君の魂を手に入れて自分の一部にしたけど、この際元帥君の魂が、人間の物から兵器のものに変換されたと思われるの。そして皮肉にもこれが私たちには有利になる。いままでは元帥君の魂は人間のものだったから、兵器と同じように蘇生しても魂はR-39には憑依できない」

「そうすっよね」

「でももしリアル世界でタイフーンが再就役するタイミングで、R-39がタイフーン級に搭載されていて再就役したら、元帥君も蘇生してR-39にその魂が憑依する可能性がある」

「しかしR-39なんて現存するんすか?」

「極秘裏に少数が残されていることは確認済み。ただ核弾頭は撤去しないといけないし、元帥君の魂を収容可能な大容量のデバイスは新調しないといけないわね」

「……たしかにそうすっね。それにまたまたタイミングがかなりシビアっすよね。R-39もタイフーンと米露にバレないように、タイフーン級に搭載しないといけない。しかもタイフーンとR-39の再就役が済み次第、R-39はすぐに回収しないといけないっすね」

「そ。確かにかなりシビアな作戦なの。そしてそのR-39の部品で人型の肉体を製造する。そうすれば、元帥君は見かけ上は人間として存在できるはず」

「しかし、それは元帥君にとっては酷かもしれないっすよ。一生兵器として生きていくしかないっす。肉体はR-39の物だから基本的に老化しないっすし、脳デバイスも換装し続けたら死ぬこともできないかもしれない。仮に死ねてもR-39の部品が肉体の50パーセント以上なら兵器と認識されて、この異世界に転生することになる可能性が高いっすよ」

「たしかに今回私の作戦で蘇生したら、元帥君の肉体も魂も100パーセントR-39だから、兵器として認識される。では元帥君が死ぬ前、R-39の部品に置き換える前の有機的な元帥君の肉体はどうなったか?」

「そんなの処分されたんしょ。まさかホルマリン漬けにして大切に保管されているわけないっすよ」

「いえ、おそらくそうとしか考えられない。さっきも言ったように魂は肉体全体に宿るわ。もし置き換える前の有機的な肉体が処分されていたら、元帥君が殺されたとき、本来の肉体は100パーセント消える。なら魂も人間が死んだ後に行く『あの世』になるはずなのよ」

「ではこの異世界には来なかったと? そうなるとタイフーンの陰謀は実現しない。なら元帥君の50パーセント以上の肉体は、まだどこかで誰かが保管……ってまさかっ」

「そう、タイフーンが保管しているはず。正確に言えば、リアル世界に存在するアリヨール社の連中ね」

「……確かにそうっすね」

「だからこれを回収してバイオテクノロジーで元帥君の肉体を再生する。そしてR-39の部品を再換装して人間の肉体が50パセントを超えると人間と認識される。なら寿命も人間と同じで、寿命を終えてもこの異世界に転生してくる可能性もない」

 それを聞いた一同は大きく息を吸うと、また大きく吐き出す。

「で、アリヨール社が保管している元帥君の有機的な肉体をどうやって確保するんすか?」

「これにはさっきも言ったタイフーン級民生化も関わってくるの」

「え、なんででっすか?」

「とにかく、米国の当局に顔が割れていないF-16Aを蘇生させる。そして彼女に米政府のサーバーに双頭の鷲計画の詳細を極秘ファイルとして保存させる」

「なんか話が壮大になってきたっすね」

「この極秘ファイルにアクセスする際の生体認証を元帥君の生体データにする。そしてその極秘ファイルの存在を意図的にロシア側にリークする。するとロシア政府のハッカー達はアクセスするために元帥君の有機的な肉体を探そうとする」

「うーん、そううまくいくっすかね……」

「まあ、たしかにうまくいくかどうかは分からないけど、ロシアならやるはずよ。そして無事に見つけて極秘ファイルにアクセスすると、例のタイフーンの双頭の鷲計画が書いてある」

「まあロシア側は食いついてくるっすね」

「そうするとロシアにとってタイフーン級は厄介者でしかなくなる」

「まあ、延々タイフーンに狙われ続ける。もし奪われたらさっきも言ったように手に負えなくなるっすね」

「そこでF-16Aは米政府関係者を装いロシア政府とUAKにある提案をする。元帥君の有機的な肉体と引き換えに、タイフーン級の民生化の資金を提供すると。そうすればロシア側の連中は諸手を上げて話に乗ってくるはずよ。事前に情報を米政府にもリークしておけば民生化費用も何とかできる」

「それでF-16Aが元帥君の有機的な肉体を回収して、米政府がタイフーン級民生化の予算を通して……」

「あとはロシア政府とUAKがタイフーン級を民生化して、私たちが再就役したR-39を回収して元帥君を蘇生させる。そしてそのあと肉体をバイオテクノロジーで再生すれば、元帥君は晴れて人間に戻れてハッピーエンド」

 最終作戦会議は大詰めを迎えた。

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