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大和の本当の目的

 日本街の飛行場。滑走路に電子戦機EC-1が着陸する。と言っても見た目は人間なので、それが滑走路に降り立つだけなのだが。そして搭乗していた面々はペイロード形態から人間形態に転換して降機する。

「あーあ、疲れたっすねえ。よく考えたら最終作戦以降二日以上寝てないじゃないっすか、道理で疲れたわけっすね。風呂に入って冷え切った航空燃料を飲みたいっすねえ」

 F-4EJは屈伸をしてそう言った。が、大和はそれを制する。

「それがそうも言ってられないようなのよ」

 すると留守番役の日本兵器が大和たちに走って駆け寄ってきた。

「大和姉、大変です。アメリカ州政府からの通信でタイフーンがリアル世界に蘇生。双頭の鷲計画が成功した模様らしいですっ。元帥さんも拉致されたようですっ」

「え、えええー」

 F-4EJはそう言ったが、大和は「やっぱりね」と言って合点のいった顔をした。その手にはフロッピーディスクが握られていた。

「ところで大和姉、さっきから気になっていたんすけど、そのフロッピーはなんすか?」

「それについては基地に帰投してから説明するわ」

「ラジャーっす」


 そして半日後、時間は夕方前だろうか。大広間に日本街の議員が集まった。

「みんなも知っての通り、タイフーンがかねてから計画していた双頭の鷲計画が成功したようなの。すなわちタイフーンがこの異世界とリアル世界の両方の統治者になるということ」

 そして大和はフロッピーディスクを掲げる。

「そのからくりが、このフロッピーディスクに入っているわ。んで、確認したところ……」

 大和はフロッピーディスクをノートパソコンに挿入すると、スクリーンにデータが表示される。

「しかし大和姉、そんなものどうやってありかを掴んだんすか?」

「F-4EJそれはね。実は今までの作戦は実はすべてカバーストーリーだったの。このフロッピーディスクの所在を調べるのを隠すための。そして私は裏でアリエスさんにリアル世界と異世界でロシア県を偵察するように依頼した。その結果がこのフロッピーディスクの所在だったというわけ」

「あいかわらず大和姉はすごいですね」

「お褒めに預かり光栄だわ。んじゃ行くわよよ」

 一同は生唾を飲みこむ。

「計画は二つの要素からなっているわ。タイフーンが蘇生してリアル世界のタイフーン級に憑依、搭載する核ミサイルで各国政府を恫喝するもの。もう一つはロシアの兵器見本市を核攻撃してロシア製最新鋭兵器の魂をこの異世界に転生させて、この異世界の統治者になる……」

 大和はそう言って額の汗をぬぐい、溜息をつく。どうやら疲労が蓄積しているらしい。

「そこで問題になるのは、この異世界とリアル世界に同時にタイフーンを存在させる方法と、この世界に転生できないロシア製最新鋭兵器を転生させる方法。んで解決方法としては……」

 パソコンのマウスをカチャカチャ操作する。

「ロシア製最新鋭兵器を転生させる方法も、タイフーンが両世界に存在する方法も両方とも魂の容量の問題なの。この異世界に兵器が転生できるかどうかは、それが分水嶺になっていた」

「要するにっすね……」

「F-4EJ、簡単に言うと兵器としてどれだけ長く運用されていたか、ということで、それが長いほど魂の容量が増加する。そして兵器が死んだとき魂の容量が一定以上だとこの異世界に転生できる、一定以下だと転生できない。だから運用期間の短く魂の容量が少ない最新鋭兵器は転生できないの」

「あれっ。大和姉はたしか就役から撃沈まで三年ほどでしたよね。かなり魂の容量は少ないはずなのに、なんで異世界に転生できたんすか?」

「恐らく戦闘経験が物を言ったみたいね」

 そして大和はパソコンを操作して画面を進めて続ける。

「んでタイフーンはどうするか? まずタイフーン自体の両世界に同時存在する方法だけど、簡単に言うとタイフーンの魂の容量を増やせばいいの。具体的にはタイフーンはいつもの方法で蘇生して、魂をタイフーン級に憑依させる。その後65-76魚雷によって船体の50パーセント未満を破壊」

「50パーセント未満?」

「そう、魂は肉体全体に宿るから、50パーセント以上破壊して、それを修理すると修理した部分にタイフーン級の主導権を奪われてしまうわ。それに50パーセント以上を破壊すると死んだとみなされて転生してしまうかもしれないから。だから50パーセント未満の破壊なの。私たちの65-76魚雷確保もこのための罠だったの」

「えええ。え、なら破壊された分の50パーセント未満の魂はどこに行くんすか? 50パーセント未満なら異世界にはいれないっすよね」

「そう。それのカギになるのは元帥君。彼の肉体は兵器で魂は人間、んで兵器としてはタイフーン級が搭載するR-39SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル、核ミサイル)」

「ほへえ、そうなんすか?」

「人間の魂は兵器のものと比べて圧倒的に容量が大きい。だからタイフーンは彼をハッキングして、彼の魂で自身の50パーセント未満の魂を補充して異世界に存在させつつ……」

「ハッキングっすかっ」

「フロッピーのデータによると、兵器の魂はダウンさせられた時にセーフモードで起動できるようで、そこからハッキングして魂を操作できるようなの。とくに精神力の弱い元帥君はハッキングに弱いらしいわ」

「そうっすか……あれ? それだと異世界のタイフーンの魂は元帥君が50パーセント以上を占めて逆に乗っ取られるんじゃ?」

「おそらくR-39自体の魂が一定数あって元帥君の魂が50パーセント以上を占めないようになっているはず。でね、さらに元帥君の魂をロシア製最新鋭兵器にも分け与えて魂の容量を稼いで、この異世界に転生させるつもりのようなの。かくしてタイフーン自身の両世界での同時存在と、ロシア製最新鋭兵器の転生を可能とする」

「そして旧式兵器の多いこの異世界で、ロシア製最新鋭兵器を擁するロシア県は大統領選で有利になる。それまで待たなくとも実力で権力を奪える。リアル世界もタイフーン級の核ミサイルを前にして各国政府は打つ手がない、という訳っすか……」

 そして一同は沈黙する。沈黙を破ったのはF-4EJ。

「しかし大和姉のひどいっすよ、そんな重要な作戦をいままで私たちに明かしてくれないなんて」

「カバーストーリーも万全ではないの。もしタイフーンに漏れたら一巻の終わりよ」

「んで、もうどうしようもないんじゃないんすか? 元帥君の魂がタイフーンに奪われたということは完全に同化してしまっているはず。これを分離する方法なんかないっすよ」

「ただ時間はあるの。リアル世界のタイフーン級は現在タイフーンの目論見通り65-76魚雷の爆発で大破、新品の材料で修理作業が進んでいる。これには数か月を要するわ。それに兵器見本市自体も春の開催でタイミングはほぼ同じはず。それまでに何とかすればいいわ」

「大和姉の落ち着き払ったその様子なら、何か対抗できる作戦があるんすよね?」

「当然それは練ってあるわ、それは『最後の希望作戦』。ただあくまで理論上はそうなるというだけで実際にやってうまくいく保証はないの。でも一応内容は開示しておくわ」

「そうこなくっちゃっすね」

「どの兵器にしろ兵器の魂を殺すことはできない。元帥君の魂も死んだわけではなく、タイフーンに吸収同化されているだけ。まあもう何の自由もないでしょうけど。とにかく、タイフーンの魂も殺すことはできない。でも一つだけこの世界から消す方法がある」

 そして最終作戦会議(改)は続く。

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