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大和たちの脱出作戦

 その頃、ワリヤーグ港、バラクラヴァ原子力潜水艦秘密基地。イーグルハント作戦に参加した日本兵器の魂たちが集まっていた。

「どう、F-4EJ、外に出れそうかしら?」

「大和姉、どこもダメっすね。空にはロシア戦闘機の魂が飛び回っています」

「『はるしお』、ドックから外に出れそうかしら?」

「そとには艦艇が集結しているから無理ですね。原子力潜水艦もいますし」

「ロクマル(60式自走無反動砲、いわゆるミニ戦車)、地上には出れそう?」

「出口を完全に塞がれていますから無理ですよお」

「正面突破は無理そうね。どうしたものかしらね」

「でも大和姉。イーグルハント作戦は成功したんすよね。確か元帥君が65-76魚雷をアリエスさんのもとまで連れて行ったのなら……」

「F-4EJ、たしかに私がダウンする前に元帥君はワリヤーグ港を脱出したはずよ。まだその時は邪魔するロシア兵器の魂はいなかったはずだから。しかしその代わり……」

「私たちが復活したロシア兵器に囲まれてここから出られなくなるとは思わなかったっす」

「F-4EJもわざわざ私たちを助けに着陸してこなくてもよかったのよ」

「いえ、大和姉を捨てて日本街に帰ることはできませんから」

「しかもみんな逃げ帰らないで全員ここに集まって来るんだから。しかもダウンした子までF-4EJがここに運んでくるんだから。まあ私を見捨てなかったのは嬉しいけど、軍隊なら軍法会議ものよ」

「ハハハ……」

 F-4EJが乾いた笑い声をあげる。

「しかし完全に袋のネズミね。地上は復活したロシア兵器がウヨウヨで出口は塞がれている。空中にはロシア戦闘機の魂が舞っているし、この秘密基地のドックを出たところには艦艇が多数張り付いている。完全にお手上げね」

「そうすっねえ」」

「完全に誤算ね。私たちの大半がダウンさせられることは計算に入れていなかったから。数人のダウンは考えていたから、その場合は『はるしお』に回収してもらって引き上げるつもりだったんだけど」

「目的は達成したっすけど、これじゃどうしようもないすっね」

「いえ、あなたが日本街に帰らず、みんなをここに連れてきてくれたから、カードはいくらか手に入ったわ」

「と言うと?」

「もしここにいるのが突入した子だけだったら、私たちの脱出は無理かもしれなかったから」

「ということは何か手でも?」

「いえ、ただカードが全くないということではないというだけよ」

「でも逆に言えば、足手まといが増えたともいえるっすよね」

「いえ、どうせ兵器の魂はペイロード形態にすれば、持ち運びが簡単だから人数はさして問題ではない。利害得失を考えたらプラスになる可能性の方が高いわ。んで、ロシア兵器の戦力は?」

「戦闘機はSu-27やMiG-29。それにもっと旧式の物も多数いるっすね。地上戦力は数えきれませんっす。大半は人間形態ですが武装していまっす。艦艇はここがワリヤーグ港とだけあって、オールスター総出演っす」

「対してこちらは、戦闘機はF-4EJとF-1、電子戦機のEC-1、護衛艦『たちかぜ』潜水艦『はるしお』、あとは小銃を持った人間形態の兵器か……もう完全に詰んでしまったわねえ……」

「まあ、この秘密基地を出た瞬間にミンチにされて終わりっすね。でも私たちは死なないんじゃ……」

「死なないといっても、ダウンするときは痛いし、拘束されたら確実に脱出できるわけではないわ。ロシア式の拷問を受け続けるのは嫌よ」

「その辺って微妙すよね。兵器は武力が備わっているから、リアル世界やこの異世界である物で拘束し続けるのは難しい。でも完全にそうとは言い切れず、性能の低い兵器は拘束され続ける可能性がある」

「まあ私は拘束されても主砲の破壊力ですべてをぶっ壊せるけど、小型車両とかの魂だと無理よね。性能の低いといっても味方の兵器を見捨てていくわけにもいかないから、何とか、ここを脱出してみんなで日本街に帰投しなければならないわ」

「私が包囲網を強硬突破してアメリカ州に救援を頼みにいくのはどうっすか?」

「F-4EJ、あなた第3世代戦闘機よね。どう考えてもロシアのSu-27などの第4世代戦闘機を振り切れないわ。そもそも逃げるために敵へお尻を向けた瞬間に、戦闘機として負け確定よ」

「それに地上や艦の対空ミサイルも大量にあるっすしねえ。ただ不幸中の幸いなのは時間があるってことすかね」

「そう、もう少し前だと、私たちが復活する前に秘密基地に突入されるところだったから時間との競争になっていたけど、今私たちは全員復活している。向こうも簡単に突入できないはずよ」

「んで具体的にはどうするか、っすね。一番手っ取り場合のは輸送機がもとになっている電子戦機EC-1にみんなを搭乗させて逃げるってことっすか」

「それも私も考えたけど、さっきも言ったようにF-4EJですら突破が難しいのに、さらに鈍重なEC-1ではほぼ無理」

「となると、世界最強の防御力を誇る大和姉で突破することっすね」

「確かに私の防御力は世界最強よ。しかしその防御力をもってしても、第二次大戦時のプロペラ戦闘機に沈められている。まさかジェット戦闘機相手に生き残れるとは思えないわ。特に私は鈍足で有名、その足でワリヤーグ港から脱出するのは無理よ」

「大和姉が空を飛ぶのは無理っすしねえ。うーん……簡単に言えば、大和姉の防御力とEC-1の速力を併せ持つ兵器があればいいんじゃ……」

「確かに、それだと私の防御力で持ちこたえている間に、EC-1の高速で逃げれば逃げ切れないこともないわね。でもそれは飛行戦艦でもないと無理よ、そしてそんなものはないわ」

 大和がそう言うと一同は沈黙してしまう。その沈黙を破ったのは大和だ。

「あ、いい案を思いついたわ」

「え、なんすか? まさか降伏することとか言わないっすよね。このワリヤーグ港を破壊しつくし、住民をダウンさせ尽くして、だいぶ恨みを買ったから、降伏しても許してくれるとは思えないっすよ」

「それは百も承知。ここは兵器の魂の特性を突くしかないわ。私は排水量72,000トンとはいえ、ペイロード形態になれば体重は軽い。だからとりあえず兵器形態の私にみんなを回収してドックから脱出。その後私はペイロード形態になり、EC-1が兵器形態になって私を含めみんなを回収する」

「そんなことをしたって……」

「まあ話を聞いて。とりあえず可能な限りEC-1は全速力で逃げて、ロシア兵器から攻撃を受けた場合、被弾寸前に私が兵器形態に転換して攻撃を引き寄せる。わたしなら攻撃を受けても簡単には撃破されないわ。そしてそれが済み次第、私は即ペイロード形態に戻ってEC-1に回収される」

「なるほど、それを繰り返せば、ロシア兵器たちを振り切るのも無理はないと。でも大和姉は72,000トンっすよ、大和が空中で兵器形態になったら即落下するっすよ」

「だから私が兵器形態に転換するのは敵ミサイルが命中する一瞬だけ、それなら落下も少しで済むはずよ」

「うーん、それしかなさそうっすね、みんないいっすね」

 一同は敬礼して「ラジャー」と答える。


 そして準備が整い、大和以外はペイロード形態になり、大和に乗艦する。そして大和はドックから泳いで外へと向かった。そして外に出た瞬間、ロシア兵器の魂たちに見つかって、盛大な歓迎を受ける。ロシア兵器たちは先刻の憂さを晴らすかのように無数のミサイルや砲を撃ってくる。そして命中の瞬間……。

「EC-1おねがいっ」

 大和がそう言った瞬間、EC-1がペイロード形態から兵器形態に転換し、大和はペイロード形態に転換しEC-1に「搭乗」する。そしてEC-1はジャンプして岸壁に飛び移り滑走して離陸する。さすが機体がもともとジェット輸送機だけあって、早い、ワリヤーグ港からどんどん離れていく。

 しかしロシア兵器もそれを見逃さない、Su-27など戦闘機が追撃してくるが、超音速戦闘機を輸送機がベースになっているEC-1が振り切れるはずもない。大和たちを生かして帰してなるものかと空対空ミサイル(航空機から発射される対空ミサイル)を乱射し、マッハ4の速度でEC-1に迫る。

 しかし命中寸前EC-1が「大和姉、今です」と合図を送ると、ペイロード形態でEC-1に搭乗していた大和が兵器形態に転換。空対空ミサイル全弾の被害を引き受ける。空対空ミサイルの弾頭は軽く破壊力は低いので、重装甲の施された戦艦である大和には屁でもない。

 そしてすぐさまペイロード形態に戻りEC-1に「搭乗」する。

「いくらなんでも空中で戦艦になるのは無理があったわね。だいぶん高度が下がったわ」

「大和姉、どうするんすか。これを続けたら高度が落ちていく一方すよ。低高度は大気が濃いから空気抵抗で速度が出ないっす」

「そうねえ。ここはとっておきの手を使うしかないわね」

「また作戦っすか。大和姉っすよね。まさかEC-1の上に乗るとか言わないっすよね」

「いえ、ここは慣性を使うわ。敵の空対空ミサイルが接近してきたらEC-1がペイロード形態の私を乗せたまま最大速度で上昇する。そして私を上に放り投げるように投下した後、私は兵器形態に転換する」

「まさか、それで慣性の法則でしばらく上昇するから、降下を押さえられるって事っすか。しかしいくら何でも荒唐無稽すぎるんじゃ……」

「いくら私が重いと言っても慣性の法則は働くはず、それでいくわよっ」

 EC-1が「次の空対空ミサイルが来ます」と警告を発する。

「んじゃ先程の作戦で、EC-1、よろしく」

 そしてロシア戦闘機の放った空対空ミサイルが再度接近してくる。EC-1は上昇に転じ、エンジン出力最大で加速する。

 大和はタイミングを見計らって「いくわよっ」と、兵器形態に変化する。大和は数十メートルほど上昇したが、さすがに重たすぎ。上昇が終わり一瞬空中に静止したが、その瞬間に空対空ミサイルを引き受ける。次の瞬間には既にペイロード形態に戻っており、無事にEC-1に回収される。高度はあまり墜ちていない。

 一同は口を開けたまま見ていた。まさかこんな作戦が成功するとは思わなかった。

「大和姉、すごいっすね……」

 大和の作戦を間近で見てきたF-4EJもさすがに驚いたようだ。

 そして作戦は成功し、日本街の面々は無事帰投することに成功する。

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