またまた失敗
日本街、御殿。
季節は2月、雪が降ったので日本街の面々は雪合戦やら雪だるま作りで楽しんでいた。こういうのは陸上兵器がお得意のようで他の海空の兵器を持て遊んでいた。そこでも面々は元帥の気を引こうと雪合戦で盾になったり、ふざけて抱き着いたりする。それを大和が優しい眼差して見守っていた。
そして雪合戦が終わると面々は広間に上がって、廃油あんことシリコン餅の善哉を食べる。もちろん元帥は普通のお善哉を食べているが。
「んで大和さん。この前の作戦はどうなったの?」
「元帥君、そろそろF-15Aたちが帰投していい頃なんだけど……」
「相変わらず今回の作戦も謎だらけだよね。タイフーンの思惑はさっぱり見当もつかない」
「まあ双頭の鷲計画につながっているとしか分からないわね。でもうまく行くのに越したことはないわ」
「まあそうだけど」
そこに広間のふすまが開いてある人物が入室してくる。F-15Aその人だ。
元帥は毎度同じく「F-15Aっ」と叫んでその胸に飛び込む。F-15Aはその頭を優しく撫でる。
「あー、みんな。今から大事な用事があるから広間から出て行って」
大和がそう人払いをすると皆退室していった。もちろん機密保護のためだ。
「F-15A、いいわよ。報告を聞かせて頂戴。ただし小声で」
元帥は小声で「なんで小声なの?」と聞く。
「どうせみんなの事だから壁に耳あり障子に目ありだから」
大和がそう言うとF-15Aはヒソヒソ話を始める。
「はい大和姉さん。それで命令通りSu-24MPは全機破壊しました。Su-27IBPもドンガラはもう使い物になりません。ただ今回の作戦、タイフーンの思惑通りだったようです」
「どういうことなの?」
「アメリカ州の異世界情報局に問い合わせたところ、Su-27IBPがこの異世界に転生したということです」
大和は「やっぱりそうなのね」と合点の言ったことを言い、元帥は「えええー」と驚いた声を出す。
「大和姉さん、その様子だと予想されていたみたいですね」
「まあ。ある程度見当がついていたわ」
「どういうことなの大和さん? 最新鋭兵器はこの異世界に転生できないんだよね」
「元帥君。それが一つ例外があるの」
「そんなものあったっけ。そんなものがあるのならとうの昔にタイフーンが使っているよね。それに大和さんも作戦を考えなくても済むし」
「それは元帥君。自分に聞いて」
「僕に? うーん見当がつかないなあ、最新鋭兵器であるSu—27IBPが転生する方法かあ」
「待っていたら日が暮れてしまうから先に答えを言うわね、元帥君がこの異世界に転生してきた方法を使えば、最新鋭兵器でも転生できるの」
「うっそー……確かにその方法だといけないこともないかな」
「さすが大和姉さん、ご名答です。肉体のうちSu-27IBPの機体材料を51パーセント以上含んだ人間を用意してこれを死亡させれば、最新鋭兵器でも元帥君と同じくこの異世界に転生できてしまうようなのです」
「あれ、大和さん、あまり驚かないよね。知っていたの?」
「可能性のひとつとしては考えていたわ。ただ確証がなかったけど、この前のコマンドソロさんの心理テストで確信を持ったの」
「んじゃ、タイフーンはこの手で最新鋭兵器をこの異世界転生させるつもりなのかな?」
「恐らく違うと思うわ。この手を使った異世界転生にはリスクやデメリットがあって、そもそも手段として使えないの」
「なんで、いい方法だと思うけど。まあ本当に人を殺すんだから悪いことだけど」
「そもそも、この手段では異世界に人間の魂を転生させないといけない、すなわち死なないといけないの。リアル世界の人間に、異世界があってそこで極楽の生活をできるから、異世界に転生しないか、すなわち死なないかと言って誰が信じるのかということなの」
元帥は腕組みし難しい顔をして「うーん、でもお金を積んだら……」と言った。
「たしかにお金を積んだら何でもするという人はいるわね。特にロシアは経済大国ではなく困窮している人も少ないから、でも……」
「タイフーンには金がないと?」
「そうなの。アメリカ州は異世界においても情報収集に余念がない。異世界でしか手に入らない情報もある。だからリアル世界に蘇生してその情報で金を稼げないこともない。でもロシア県は情報を軽視するきらいがあって、金の種が無いの」
「あれ? この前のロシアの落日作戦失敗で金は腐るほどあるんじゃ?」
「それはロシア企業のUAKの話でタイフーンたち一派は金がないはずよ」
「んじゃ誰も異世界に転生してくれる人はいないと?」
「そういう事。そして人間の魂の最新鋭兵器を転生させるということは、あるリスクがある」
「あれ、最新鋭兵器が転生してこればタイフーンは大喜びなんじゃ」
それを聞いた大和は難しい顔をする。
「兵器の魂はほぼ自国の主将となっている兵器の魂に従うわ。日本の兵器なら私にね。一匹狼など例外がないこともないけどほぼそうなっている」
「そうだよね」
「ただ転生してきた人間の魂は自国の兵器の主将に従うという確証がない」
「確かに。人間には強い自我があるよね」
「それに最新鋭兵器はとくにこの異世界で絶大な力を持つ可能性が高く、それを自覚してしまったら、今まで通り主将の兵器に従うかはわからない。下克上になる可能性が高いの」
「んじゃSu-27IBPも転生させたとしても従うかは分からないじゃ……」
「恐らく、リアル世界で有り金全部をはたいて従順な人を確保したか、蘇生した兵器がリアル世界で人質をとったかして隷従を強いれる人を確保して転生させたんだわ」
「なるほど」
「そういう事です。異世界情報局によるとそれによって、リアル世界のSu-27IBPの魂はこの異世界に転生したとのことです」
「F-15A、今回はご苦労様だったわ」
「いえいえ、大和姉さんにいいお知らせを届けられなくて残念です。では私は失礼します。ってあ」
F-15Aが一旦は退室しようとしたが、きびすを返し大和に耳打ちした。
「アリエスさんから言づてです。例の件、答えが分かりましたとのことです」
元帥は状況が呑み込めず「え、なに?」と言った。
大和も小声で「わかったわ」とだけ告げた。そしてF-15Aが退室した。
「相変わらず、大和さんも秘密が多いなあ」
「元帥君も分かっているはずよ、私たちの作戦がタイフーンに筒抜けになっているということを」
「だから僕にも言えないと?」
「そ、元帥君は心が弱いから、つかまって拷問にかけられれば口を割ってしまうかもしれない。そんな元帥君に秘密を聞かれたらタイフーンに付け込まれるかもしれないから」
「逆に僕のためでもあるのか」
「そういう事」
「でもタイフーンは最新鋭の電子戦機、すなわちハッキング能力を持った兵器の魂が欲しいんだよね。でもそんなの手に入れてどうするの?」
「元帥君も知っているようにこの異世界ではリアル世界と同様にネットなどはあるけど、そんなに重要な意味はないの。世界のものがアナログチックだから」
「なら安心なのかなあ?」
「でもアリエスさんの家で見た兵器の魂がリアル世界に蘇生時するときのさまはデジタルそのもの。だからタイフーンの目的は兵器の魂に干渉することなのかもしれないわ」
「まさか兵器の魂を乗っ取ったりできるとか?」
「それはないと思いたいわね。というよりそもそも魂相手にハッキングなんかできるのか、ということなの。私たちがやってる蘇生も本人がプログラムを詠唱しないといけないから、外部からのハッキングなんてできるのか分からないわ。だからタイフーンには何か思惑があるはずよ」
「そうだよね」
「というより御神慮は兵器の魂をどうこうすることを見逃さないはず」
「でも、御神慮もSu-27IBPの転生を容認したよね」
「まあその辺は私にもわからないわね。ただそろそろ答えは出ると思うわ」
「そうかあ。ん? ところで壁に耳ありの件はどうなったの?」
元帥がそう言ったように室外が静かだ。
「おそらくみんなタイフーンの拷問を受けたくないから秘密を聞きたくなかったんでしょ」
元帥は「ハハハ」と渇いた笑いをする。
こうして最終作戦へと話は進んでいった。




