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最終作戦前の作戦

 新年になってしばらくたつが何か行事があるわけでもなく、兵器の魂たちはそんなことを気にせずいつも通りに生活している。そして元帥と大和は黒書院でこたつに入っていた。大和はミカンの皮をむき、元帥に渡していく。

「大和さん、これで僕たちのやれることはやったよね。あとは最終作戦を実行するだけだよね」

「それがね、F-4EJが気になる情報を持って帰ってきていたの」

「えー、またすんなりと行かないのかあ」

 元帥は顔をしかめて嫌そうな顔でそう言った。

「そうよ元帥君。このタイフーンの陰謀は複雑で一筋縄ではいかないわ、はい口を開けて」

 大和はそう言いながら皮をむいたミカンを元帥の口に入れる。

「で、どんな情報なの?」

「なんでもタイフーンがリアル世界の電子戦機の魂を、この異世界に転生させたいらしいの」

「電子戦機というのは敵のレーダーにジャミング、すなわち妨害電波を浴びせる機体だよね。それで敵レーダーはこちらを探知できなくなると」

「そ。そして電子戦機はこの異世界では副次的にハッキング能力を持った兵器の魂が多いの」

「んじゃタイフーンはこの異世界においてハッキング能力を持った兵器の魂を望んでいると?」

「その可能性が高いわね。ただ話はそう簡単ではないわ。古い機体は古いハッキング技術しかないから、はい口」

 大和はそう言うとさらに元帥の口にミカンを放り込み、元帥がみかんを食べながら答える。

「なので最新のハッキング技術が欲しい場合は、新型の電子戦機が必要になる?」

「そう。しかし最新鋭兵器はこの異世界に転生できないわ」

 そう言って大和はこたつの上のミカンを取ってまた皮をむき始める。そのミカンを取る大和の手は白く、指は細く、それを見ているだけで楽しいものだ。

「そうなると前回僕たちがやった重要性の低い部分は古い部品、重要な部分は新しい部品で兵器を構成するしかないと?」

 元帥は口をモグモグさせながらそう言った。

「そういう事、おそらく前回の作戦はロシア県やタイフーンに筒抜けになっているみたい。おそらく古いドンガラの機体に最新の電子戦機器を搭載すると思うわ。リアル世界に蘇生したロシア製兵器の魂が作業に当たるみたい」

「んで具体的にはどんな電子戦機なの?」

「ロシアで最新の電子戦機と言うとSu-27戦闘機の派生型でSu-27IBPという機体があるの。そして古いドンガラとしてはSu-24MPがある」

「となるとSu-24MPのドンガラに、Su-27IBPのあんこを詰めるということなのかな。んじゃ手っ取り早く、あんこのSu-27IBPを破壊したらすべて終わりなんじゃ」

「それが簡単にはいかないの。タイフーンは極秘裏に1機だけ製造しているからSu-27IBPの所在が分からないの」

「んじゃ詰んでいるじゃん」

 元帥は机に突っ伏して体を投げ出す。

「だからまずはSu-24MPを破壊していくしかないわね。その過程で……」

「Su-27IBPが出てくるかもしれないと?」

「そういう事、Su-24MPのドンガラとSu-27IBPのあんこを合体させる以上、どこかで両機は接触するはず」

「んで仮に接触できなくともSu-24MPを破壊しつくしてしまえば問題解決ということだね」

「そ。だからどっちに転んでも作戦は成功するはず」

「ならそれで一件落着か」

「でもそう簡単ではないの。Su-24MPは現役の兵器でロシア国内各地に配備されている。ロシアは世界一領土が広い。それをシラミ潰しにしていくのは難しいわ」

「ならどうするの?」

「手はあるわ。少しでも多くの兵器の魂を蘇生させて、総がかりでロシア国内のSu-24MPの破壊に当たれば行けるはず」

「でもそんな多くの兵器のアテはあるの?」

「もちろんアメリカ州との共同作戦になるわね。それも結構大掛かりな」

「でもアメリカ州政府も助力は惜しまないはずだよね。タイフーンの目論見が達成させられれば権力を失うことになるから」

「それに私の作戦なら、タイフーンは電子戦機の異世界転生を急いでいるようだから、ロシアを走り回っているうちに、いい塩梅に両機の接触が計られると考えているわ」

「あれ、タイフーンが急いでいるのなら、んじゃ逆に先を越されて、ニコイチの機体ができて時間切れになるんじゃ?」

「そこなのよね……」

 大和はそう言うと皮をむいたミカンを手でこね回す。

「すわ軍師大和にも限界があるのでありますか?」

「そうだけど。今まで私の作戦は裏目に出ているか結果を出せていないパターンが多いから」

「大和さんも少し自信喪失気味なのかな?」

「そうね、そろそろF-15Aが来る頃だから作戦の詳細は彼女が来てからするわ」

 そこに黒書院の障子が開いてF-15Aが入室してくる。

「こんにちは。いやあ、日本の御殿ってなれませんね。土足厳禁ですから」

「こんにちはF-15A。こたつに入って」

「はい元帥君。日本の御殿は苦手ですが、こたつは素晴らしいアイデアですね」

 F-15Aは明るく振舞うが、大和の表情は先ほどから変わらず固いままだ。そして話始める。

「F-15A、早速だけど次の作戦の詳細を説明するわ」

 それを聞いたF-15Aは真顔に戻り「イエッサー」と返事をする。

「タイフーンは電子戦機を所望でSu-24MPのドンガラとSu-27IBPのあんこを組み合わせた兵器を作って、その魂をこの異世界に転生させるつもりらしいの」

「それを阻止するのですね」

「そ、だから米軍の戦闘機の魂を複数人蘇生させてロシア国内各所に配備されているSu-24MPを全機破壊してほしいの。そしてその過程でSu-27IBPと接触したら殲滅してほしい」

「……分かりました。しかしタイフーンはなぜ、電子戦機を欲しているのですか?」

「それは分からないわ。ただこの時期に電子戦機を欲するということは単なる趣味ではないはず。双頭の鷲計画に何らかの影響があるはずよ」

「そうですよね」

「なので今回も蘇生後に人型の肉体は用意せず、実機で蘇生して爆装(爆撃装備)し、各自ロシア領空に侵入。ロシア軍基地に駐機するSu-24MPを破壊してほしいの。しかもあまり時間的余裕が無いの」

「無茶言ってくれますね。そう簡単にはいきませんよ。蘇生させる魂の数は確保できます。ただリアル世界でどこまで実機を再生できるか。仮にできても……」

「爆装は難しいか……」

「そうです。まあ蛇の道は蛇なのでデビスモンサンのおじいさんなら爆弾は手に入りますが、精密攻撃可能な最新の誘導爆弾は難しいと思います」

「となると、無誘導の爆弾を使うしかないか」

 大和がそう言うとF-15Aは短く「はい」とだけ答える。

 大和も答えに窮して「となると……」と言って沈黙する。

 そこに元帥が遠慮気味に発言する。

「言いにくいけど、機関砲とかは使えないの?」

「使えないことは無いですが、かなり低空に降りないといけません」

「んじゃ地上の対空砲火を浴びることになるんだよね」

「そういう事です。自分が撃墜されたらおしまいですから」

「なら、かなり言いにくいのだけど、あとは特攻とかできないのかな? どうせ転生するなら死なないといけないんだし」

「……元帥君。まあ遠慮気味に言ってくれたので悪意はないと受け取っておきますが、人間が人命を軽視した特攻を嫌うように兵器でも特攻は嫌なものなのですよ」

「でも、それしかないわ。自分の事じゃないから気安く言っているのは分かっているわ。でもそれが最も効率はいいの。あと元帥君、私たち兵器の魂は蘇生と転生ができるからいいけど、死んだら終わりの人間は絶対してはいけないわよ」

 元帥は悲しい顔で「うん」としか言わなかった。

「だからF-15Aは可能な限り爆弾を搭載して、それでもSu-24MPを破壊しきれなかった場合は機関砲と特攻で片をつけて」

 F-15Aは眉間にしわを寄せて、それを指ではさみ「イエッサー」とだけ答えた。

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