F-4EJ、行方不明になる
F-15Aは何時ものアリゾナ州デビスモンサンで例のおじいさんの手で蘇生、数人の兵器の魂を引き連れて日本の福岡県に向かった。大和の事前の情報では、ここでF-4EJが展示保存されている。民間施設なので作業は簡単だ。
深夜に現地着。
「F-4EJ。いまから改造を実施します、異世界とリアル世界の平和はあなたにかかっているます、頑張ってください」
F-15Aがそう言うと、F-4EJは「よろしくっす」と答えた。面々はF-4EJのレーダーやエンジン、コンピューターをおじいさんが調達してくれたものに換装していく。
F-4EJは日本の戦闘機だから、機体の各部の注意書きも日本語、アメリカの戦闘機の魂だけだとお手上げだが、日本の戦闘機F-1が参加していることが奏功した。作業は一晩掛かった。そして改造が終わるとF-15Aは機体を撫でて……。
「F-4EJ、改造は完了しました。あなたがきっと両世界の平和を守ってくれると信じています。さ、異世界に転生するため機体を壊しますね」
が、異常が起きる。F-4EJの返答がない。
「あれ、F-4EJどうしたのですか……って返事が無いですね、眠っているのですか? まあいいです、もうそろそろ日の出だから破壊しますね」
面々はのこぎりやハンマーを手に機体の破壊に取りかかった。しかしアンビバレンスな気持ちにかられる。何しろさっきまで丹精込めて各部を換装した機体を、自らの手で破壊しないといけないのだから。
そして破壊しつくされた機体を朝日が照らした。
F-15AとF-4EJが蘇生してから数週間後。季節はもう冬だ。御殿の雰囲気も重いものになりつつあった。なにしろタイフーンが設定した春に開催される、ロシアの兵器見本市が刻一刻と近づいているからだ。いつもは元帥の気を引くためにエッチな思考を巡らす面々も珍しく大人しい。
御殿の黒書院。元帥と大和が火鉢で手を温めている。
「それにしても作戦を立てるのはいいけど、その結末を待つだけってのもつらいよね」
「仕方ないわよ元帥君。私たちにはできることは限られているんだから。私たちがリアル世界に蘇生することができない以上、彼女たちの作戦が成功することを祈るしかないわね」
「うーん、そうだけど……」
「まあそれに今回の作戦は失敗する要素はほぼないし『果報は寝て待て』でいいと思うわよ」
「なんか僕には嫌な予感しかしないんだけどなぁ……」
「元帥君は死に方が悪かったから悲観的になるのも仕方ないわよね。でも今回は大船に乗った気でいて。それに最終作戦も考えつつあるから」
「え、最終作戦?」
「そ、そろそろロシアの兵器見本市が開催される春も近いから、タイフーンとは決着をつけないと」
その時黒書院の障子が開きある人物が入室してくる。
「やまどでえさあん」
そう言って入ってきたのはボロボロになったF-1だ。そのまま大和に抱き着き泣き始めた。大和は状況を理解できず一瞬戸惑ったが、すぐにF-1を優しく抱きしめた。
そしてしばらく大和は泣き続けるF-1をあやし続ける。
「ところで、F-1。一体何があったの? 一緒に蘇生したF-4EJはどうしたの?」
「グスン、グスン。確かに大和姉さんの言いつけ通り、F-4EJを改良するレーダーやエンジン、ミサイルなどを用意したんです。日本での武器の取り扱いは厳しいから色々大変だったんですよ、なのになのに」
「それで?」
「F-4EJの改良を済ませて、転生のため破壊したんですが……」
「まさか……」
「そう、転生できなかったんです。確かに私はF-4EJの機体を破壊したんですよお。確かに稼働を停止しましたあ、でもF-4EJは、彼女は……」
「F-4EJはこの異世界に再転生してきていない。リアル世界にも魂が無いとすれば……まさか魂が行方不明になったあ?」
さすがの事態に大和も驚いてそう言った。
「うわーん、F-4EJの魂が死んじゃったよお」
「これは緊急事態よ。兵器の魂が行方不明になる、死んだかもしれないなんて前代未聞よ」
「ええぇ。どうすんのさ」
「元帥君、これはまさか御神慮かしら。私たちが分不相応な行動をとったことに対する神の怒りとか……」
「わたじはどうずでばいいんずがあ」
「F-1うーん、魂のサルベージなんて私も経験したことは無いし……」
「とりあえず元に戻すしかないんじゃないかな?」
「元帥君、元に戻すって、まさかF-4EJを改良前までに戻すって事? 確かに今はそれしかないわね。F-1……はあまりリアル世界で機体が残っていないから無理よね。ここはF-15Aに危険を冒してでも再度リアル世界に戻ってもらうわ」
「やはりF-4EJを元に戻すんだね」
「今はそれしかないわ。リアル世界に蘇生してもらって、今回破壊した機体を何でもいいから再生して、そして改良点も戻して破壊して。F-1はその方向で動いて頂戴」
「はあい」
そしてF-1が退室していった。
「意外だわ。まさかこの作戦が失敗するなんて」
「大和姉、でもどうするの? この作戦が駄目なら旧式兵器の改良型をこの世界に転生させるのは無理になるよね」
「だんだん手詰まりになってきたわね。やはり最終作戦を繰り上げるしかないのかしら……」
大和はそう言って火鉢の縁に両肘をつき、指を組んだ。




