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元帥君の心理テスト2

 そして元帥への心理テストは続く。

 死因は事故死と推測されたため、元帥の正体が核兵器か人間かを探る心理テストが行われた。

「ジュースを飲むなら紙パック、それともアルミ缶?」

「うーん、どっちかなぁ」

「あまり深く考えないで。でも答えられない場合はそれでもいいわよ」

「わからないや……でも紙パックかな」

「そうなの。次、この異世界で屈伸とか万歳とか、片足立ちをしたことはある?」

「あんまりしたことないなあ」

「女の子のおっぱい。自由にできるとしたら揉みたいか、吸いたいか?」

 元帥は「あのお」と言って顔を赤くするが、コマンドソロは真剣な顔そのものだ。

「真面目な話なの。欲望のまま言って」

「うーん吸う方かなぁ」

「お風呂は長湯、それとも短い?」

「あんまり長湯はしないほうかなぁ」

「溺死と焼死、どっちが嫌?」

「溺死かなあ」

「戦争と言ったらカラー映像か、白黒映像か?」

「カラー映像かなぁ。白黒映像はあまり見たことないや」

「喧嘩で重要なのは腕力、それとも根性?」

「腕力かな。相手が実力行使してきても力さえあれば勝てるから」

「青色で印象が残るのは?」

「青色と言えば空と水だよね。どっちも印象が残るなぁ」

「天空の城アニメで好きなのはポム爺さんかド○ラか?」

「大空を駆けまわるドー○かな」

「使い走りにされたことはある?」

「うーんわかんない」

「もうすこし詰めてみようかしら……ドッジボールとサッカー、どっちが好き?」

「ドッジボールかな」

「テレビとラジオどっちが好き?」

「ラジオはよく寝る前に聞いていたかな?」

「パラグライディングとサーフィン、どっちが好き」

「サーフィンかな」

「バンジージャンプは好き?」

「嫌い」

「ふーむ、なるへそ。ではこれくらいでいいかな?」

「何かわかったんですか?」

「あくまで心理テストによる推測だけど、君はたぶん核兵器、それもSLBMだと思うわ」

「SLBM?」

「潜水艦発射弾道ミサイル。すなわち潜水艦に搭載された弾道ミサイル、いわば核ミサイル。弾道ミサイルとは放物線のような弾道で飛ぶミサイルの事。長射程のものの場合は人口衛星を打ち上げるロケットのようなもので、衛星のかわりに核弾頭が搭載されている。そして人口衛星は地球を回る周回軌道に乗るけど、核ミサイルの場合核弾頭は目標へ落下する」

 元帥は「えっ」と絶句して黙ってしまった。

 そこに割って入ったのは大和で「理由はあるんですよね」と言った。

「ええ、もちろんよ。元帥君が核兵器の可能性があるのは事前に伺っているわ。核兵器もいろいろある。まずは戦略核兵器か、戦術核兵器か」

「要するに、敵国の都市や国民に対して使う戦略核か、敵国の軍や兵器に対して使う戦術核なのかということですね」

「そうよ、大和。それでまず戦略核の可能性から調べたの。戦略核と言っても戦略爆撃機に搭載される核ミサイルや核爆弾、地上発射式の大陸間弾道ミサイルICBM、潜水艦発射のSLBMがある」

「で、僕はSLBMだった?」

「そう、心理テストではSLBMという判断が出たわ。そして精査した結果、彼の正体、すなわち肉体は人間の肉体じゃない。51パーセント以上がSLBMでできている。正確に言うとSLBMだったものを原材料にして肉体が構成されている」

 元帥は「なっ」とまた絶句する。

「肉体の過半数が兵器でできていることから魂がこの異世界に転生したんだと思うわ」

「しかし、SLBMの材料ってまさか、重水素とかウランとか……」

「大和、そういう意味ではないわ。正確には核弾頭を除く、SLBMを構成していた部品ね。金属とか、プラスチックとか」

 それを聞いた元帥に異変が現れた。

「あ、あ……あ」

 元帥は口をだらしなく開けて涎を垂らし、声にならない声を上げている。目からは涙があふれている。

「元帥君、しっかりしてっ」

 大和は元帥の肩を持って体を強く揺らすが、彼は正気に戻らない。

「大和、落ち着いて。おそらく記憶が戻りつつあると思うの。彼の彼女なら体を強く抱きしめてあげて」

「わかったわ」

 大和は自らの大きな胸に元帥の頭をうずめ強く抱きしめる。

「大丈夫だから。私がついているから安心してっ」

 そして元帥は気を失った。


 そして数時間後、元帥はクリニックの病室のベッドで目が覚める。大和に優しく抱かれて、先程と同じく大きな胸に顔をうずめている。そして絶え間なく大和が頭を撫でてくれている。

「……大和さん……」

「どう落ち着いたかしら?」

「うん、なんとか。……僕、記憶が戻ったよ」

「そう。それはよかったわね。もしよければその記憶をお姉さんに教えてくれないかしら……でも、いやだったら別にいいわよ」

「うん、でも大和さんになら知っていてほしいの。僕は……」

 大和は「うん、うん」と言って元帥の頭と背中を撫で続ける。

「僕は子供のころ骨の病気だったの。たしか骨形成不全症だったと思う」

「そうなの。苦しかったわね」

「うん、体が痛かった、苦しかった、つらかった。で、あるとき、多額の治療費の提供を条件にロシアで治療を受けてほしいという提案が来たの。明らかに怪しい人たちだった……」

「……そう」

「そこで治療を受けたの。おそらく体の骨の大半が換装された。さっきコマンドソロさんが言ったようにSLBMで作った人工骨に」

「……」

「それから普通に日常を送っていたよ。そして死因。それはコマンドソロさんの見立て通り、事故だったの。車にひかれて僕は死んだ。十七歳の時の事だよ」

「怖かったわよね」

「うん。怖かった。絶命するまで時間があったけど、その間に父さんや母さんの顔が何度も頭をよぎった。もう会えることは無い、楽しく毎日を過ごすこともできない。悲しかった。現世にも未練があったよ」

「死にたくなかったわよね」

「……ううぅ。死にたくなかったよお、父さんお母さんと会いたいよお、生き返りたいよお」

「私にはとにかくこうするしかないから」

 大和は元帥を抱きしめる力を強くする。

「今日はいっぱい泣いていいからね」

 その日、元帥は一晩中泣き明かした。

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