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元帥君の心理テスト

 そして数日後。アメリカ州、州都ユナイテッドステーツの中心街。

「なんで日本街は戦国時代の御殿やら武家屋敷ばっかりなのに、アメリカ州はビル街になってんの?」

 元帥がそう言ったようにユナイテッドステーツは高層ビルだらけで、さながらリアル世界のニューヨークだ。

「そもそも、アメリカ自体が比較的新しい国で、古式ゆかしい宮殿とかお城とかが無かったから、ビル街が再現されているの」

「なら日本街もいっそのことビルを建てたら?」

「私たちは日本の兵器の魂だから御殿の方が落ち着くの。元帥君も絨毯やソファーよりも畳がいいでしょ」

「たしかにそれは」

「まあ、この異世界には経済というものの概念があまり無いから、別に街が発展して県になり、県が発展して州になる必要が無いの。人口もほとんど増えないから発展のしようがないこともあるわね」

「でもアメリカ州は結構人が多いよね」

 確かにユナイテッドステーツは結構にぎわっている。

「その兵器の魂の多さが軍事大国アメリカを象徴しているわね」

「それでこんな都市にコマンドソロさんはいるの?」

「この異世界が兵器の魂の世界ということだから、魂の健康の維持も重要で、それは心理戦に精通したコマンドソロさんの十八番なの。だからこの都市でメンタルクリニックを開業しているわ」

「へえ、まるで人間みたい」

「この異世界もすべてが平穏とは限らないから。タイフーンが双頭の鷲計画を立てたように、国家間でいさかいはあるし、国内でも兵器の魂同士でけんかもある。魂の健康が損なわれることもあるの。そしてそれは体が蝕まれるのと同じくらいつらいの。それは心の弱い元帥君は分かるわよね」

「でもそう言うことなら引く手あまたで、忙しいのかな?」

「いえ、元帥君の事を伝えたら快諾してくれたわ。さすが同盟国アメリカよね」

「へえ」

「さ、着いたわ。ここよ」

 到着したのはビル街の中にある、かなり大きなビルの一階。看板には「コマンドソロ、クリニック」と英語で書いてある。壁はガラス張りで中がよく見える。繁盛しているようで魂たちで賑わっていた。

 そして大和が受付を済ませると、優先的に診察室に通される。そこで対面した医師はインテリエリートで綺麗な顔だが、兵器だった時の図体の大きさが影響しているのか、かなり長身だ。彼女がコマンドソロらしく挨拶してくる。

「ミス大和。初めてお会いするけど、話しは以前から伺っているわ。同盟国日本の世界最大にして最強の戦艦、大和の魂。まあ当時、日米は敵国だったけど、今は同盟国で頼もしい味方」

「初めまして、私の事を詳しくご存知のようで光栄です。これは手土産ですが……」

 大和はそう言って持っていた紙袋をコマンドソロに手渡す。

「あ、これは日本製超高張力鋼の塩焼き。おいしそうね」

「で、さっそくですが、この子の事で……」

 大和はそう言うと元帥を紹介する。

「この子は、源水下君。いわゆる元帥君です。女の子の外見の兵器の魂しかいない、この異世界で唯一の男の子の外見をしているわ。人間と核兵器のハイブリッドとかいう推測もありますが……」

「この子がこの異世界にやってきた理由、すなわち死因を特定して正体を突き止めるのね」

 元帥はおどおどと出てきて「よろしくお願いします」とお辞儀をする。

「しかし、こんなケースは初めてよ。だから力になれるかは分からないけど、最大限協力するから期待せずに臨んで頂戴。今回の心理テストの方向性としては元帥君の死因の特定、そして正体が兵器なのか人間なのかを確認すること。では早速」

 コマンドソロはタブレットパソコンを手に持って操作し始める。

「これから複数の質問をするのでそれに答えていってちょうだい。あまり深く考えないで直感的に答えて行って」

「はーい」

「注射と飲み薬、強く印象に残っているのはどっち?」

「そりゃ一般的に考えて痛みのある注射の方が印象に残りますよね」

「確かにそうだけど、薬も常用していたら印象が強くなるわ。で、どっち?」

「注射かな」

「夏に涼しくしたいのなら、水かクーラーか?」

「それも普通クーラーでしょ」

「いえ、喉が渇くと水という人もいるから」

「うーん、僕の場合ならクーラーかな」

「次、友達にするなら、コナ○君か、のび○君か?」

「またこれは……うーん、コ○ン君よりの○太君かな」

「漢字と数字どっちが好き? それとも両方に興味が無い」

「漢字かなぁ」

「好きなのは車と馬どっち?」

「まあ馬なんて全く馴染みが無いし、馬肉も食べないし、競馬も興味ないから車の方が好きかな。うーんでも待てよ、車は事故る可能性があるかな」

「好きな光はどっち」

コマンドソロはそう言うと、二個の懐中電灯を取り出しスイッチをオンにする。すると一個はピンクの、もう一個は青の光が点灯する。

「うーん……青は若干冷たい気がするなぁ。ピンクの方が暖かいかな。今丁度季節は秋だし」

「生まれ変わるとしたら水になりたい? 空気になりたい?」

「なんで空気と水なの……そうだなぁ。目に見えない空気より水の方がいろいろと楽しいと思うけど……」

「手に入れたいものは手錠か縄か」

「縄の方が使い道があるかな」

「夕焼けは、赤かオレンジか」

「うーん、赤」

「なるほど、なるほど……次はこれを見て」

 そう言ってコマンドソロはある絵を見せる。それは大きく膨らんだ人間のお腹の絵だ。絵だから男の人のものか女の人の物かは分からない。

「この写真の人はなんでお腹が大きいと思う?」

「妊娠しているんじゃ……」

「と言うことは飢餓ではないのね」

「あ、その可能性もあるのかあ」

「サイレンで嫌なのはパトカーのサイレンか、救急車のサイレンか?」

「救急車かなあ」

「と言うことは……」

「あの、この質問に何の意味があるのか教えてもらえませんか?」

「詳細は企業秘密だから教えられないけど、簡単に言うと死因を探ってみたの。可能性としては病気、事故、自殺、犯罪、餓死。寿命で死んだのは考えられないから外したわ。まあ質問の内容と意味はだいたいわかると思うけど」

「それでどうなんですか?」

「今までの質問だと、可能性としては事故死の可能性が高いと思うわ。今までの心理テストでは病気や自殺、犯罪や餓死の可能性は低いことを示している」

「え、そうなんですか。僕としてはあまり実感がわかないのですが……」

「まあ、あくまで心理テストだから確度が100パーセントではないけど、ある程度の予測は可能よ。では死因は事故死として、今度は元帥君の正体を調べましょうか。主に、人間なのか核兵器なのかという観点から」

「あれ、今から何を調べるかを言ってしまったら、僕が予断を持って判断するかも?」

「まあだから直感的に考えて。じゃ行くわよ」

元帥は顔をきりっとさせて「はいっ」と元気よく答える。

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