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トライアル

 その頃。リアル世界。F-15Aは蘇生して毎度同じく、デビスモンサンのおじいさんに肉体を作って貰うが、人型の肉体では何もできない。

「おじいさん。少しお願いがあります。私はこの後自己破壊で転生しますが、すぐに蘇生してきます。その時、今のような人型の肉体を製造せずに、F-15Aの機体そのままで、その機体を稼働できるようにしてほしいのです。そして自爆装置を搭載しておいてほしいのです」

「わかったわい。任せておけ。でも少し手間はかかるぞい。稼働できるエンジンを入手しないといけないし、機体自体もモスボール解除作業をしないといけんしな。それに最近、お前さんが何かしたのか、ワシも米軍に少し怪しまれているようじゃからの」

「ご迷惑をおかけしているようで申し訳ありません。何卒よろしくお願いします」

 F-15Aは転生と蘇生を再度実行し飛行可能なF-15A戦闘機になった。そしてタイミングよくトライアルが行われるインド洋に向かった。


 そしてF-15Aはすぐにインド洋東部に向かった。到着すると新興国の新型戦闘機調達計画のためのトライアル、すなわち模擬空中戦が実施されており、F-15Aはロシア製戦闘機が模擬空中戦を実施するタイミングを知るため偵察飛行する。

 F-15Aは新興国側に探知されないよう、IFF(敵味方識別装置)は米軍の物を使用、通信もレーダーも停止して逆探知されないようにする。新興国側のレーダーに引っかからないようにするため、レーダーに対して距離が変わらないように、すなわち前を横切るように飛行する。なぜなら航空機のレーダーは遠ざかるものと近づくものしか探知できず、距離が変わらない物は探知できないからだ。

 なので偵察手段は専らアイボール、すなわち眼だが、高性能の赤外線カメラが搭載されているのでかなり遠くまで見える。

 そしてついに模擬空中戦が始まる。

「さて模擬空中戦の塩梅はどうですか……」

 F-15Aはそう言って赤外線カメラで様子をうかがう。しかし模擬空中戦用戦闘機は遠すぎて点としか識別できない。しかしF-15Aには手はある。心で戦闘機の魂に呼び掛ける。

「こちらF-15A、アメリカ製戦闘機がいたら返事してください」

「こちら米空軍、F-15EX戦闘機。F-15A先輩、何か用事ですか?」

「ああ、よかった。そちらの今の状態を教えていください」

「現在、トライアルの模擬空中戦を実施するため、当該空域へコリドー(道)を通って向かっています」

「了解。模擬空中戦の相手はどこの戦闘機ですか?」

「本日の模擬空中戦の相手はロシア製戦闘機Su-35Sです」

「F-15A了解。私はある密命を帯びて行動しています。そこでお願いがあります。Su-35Sとの模擬空中戦が開始されたら教えてください」

「……私にはそれを判断することはできません。私は米空軍の戦闘機ですから軍には逆らえません」

「私の指示に従ってもらえたら、おそらくあなたはSu-35Sに勝てるでしょう。それなら私たちの利害は一致しているはずです」

「……わかりました。ただ模擬空中戦の開始タイミングを告げるだけなら協力しましょう」

 F-15Aが「それで結構です」と言うと、F-15Aとすれ違う戦闘機の轟音が聞こえた。どうやらF-15Aの死角から近づいてきた戦闘機のようで2機編隊だ。そして英語で呼びかけてきた。

「こちらマレーシア空軍機。貴機は軍の訓練空域に侵入している。直ちに退去せよ」

 そして間を置かずにマレーシア機はF-15Aの前後にそれぞれ占位し、F-15Aを挟むように飛行する。

「バレましたか。でも大人しく帰るわけにはいきませんよ。とりあえずは無視ですね」

 F-15Aは前後を挟まれた状態で飛行を続ける。すると「退去せよ、退去しなければ撃墜する」と警告を受ける。しかしF-15Aはそれも無視。するとマレーシア機は機関砲で警告射撃をしてきた。

「こうなったら仕方ありませんね」

 F-15Aはそう言うと急旋回で離脱する。しかし形勢は圧倒的に不利だ。相手は2機で実弾装備、こちらは丸腰。F-15Aは背後を取られて蛇行飛行でマレーシア機の機関砲攻撃を回避する。だが相手は引かない。

 そのまま双方空中戦にもつれ込み、互いに攻撃に有利な相手の背後を取ろうと急旋回する。しかし一機しかいないF-15Aが2機のマレーシア機の背後を同時に取ることはできない。マレーシア機の1機が囮になり、もう1機がF-15Aの背後を取り空対空ミサイル(航空機発射の対空ミサイル)で攻撃を仕掛けてきた。

「やっぱりそうなりますよねっ」

 F-15Aは急旋回で離脱する。エンジン排気の熱源めがけて飛翔してくる空対空ミサイルは確実に距離を縮めてくる。F-15Aにはミサイルをかく乱する装備はなく、ただ機体の速度と急旋回で逃げるしかない。F-15Aは9Gの重力加速度の急旋回で逃げ切る。重力加速度とは旋回でかかる遠心力で、機体とパイロットにかかる重力が地上の何倍か、と言う意味だ。つづいてもう一機のマレーシア機が空対空ミサイルを撃ってきた。

「うーん、こんなマレーシアの戦闘機、米軍の最新鋭戦闘機なら一蹴できるのに……」

 F-15Aは急旋回で逃げ続け、これも回避する。もちろんF-15Aの魂には米空軍で運用されていたころの記憶が残っており、米軍のパイロットの技術がしみ込んでいる。それが空対空ミサイルの回避を可能とした。

「ってよく考えたら私、パイロットを乗せていなかったんですよね。ならこれでどうですっ」

 F-15Aは完全にキレた。パイロットが乗っていないのをいいことに、なんと12Gの急旋回を見せる。パイロットがいないのならいくら重力加速度をかけても問題ない。

「どうせこの機体は使い捨てですしねっ」

 そうモスボール機でパイロットのいないF-15Aの機体は使い捨てだから、機体が12Gの急旋回で壊れても構わないのだ。一方マレーシア機は有人で機体も捨てることはできない。だから9Gを一瞬出すことくらいしかできない。F-15Aが繰り出す12Gの旋回にかなわず2機同時に背後を取られる。

 と言ってもF-15Aは丸腰、ただマレーシア機の背後を取ってプレッシャーをかけるしかない。当然マレーシア機2機は、それぞれ別の方向に旋回し、一機が囮になり、もう1機が再度F-15Aの背後に回ろうとする。そして形勢は振出しに戻る。しかしF-15Aは時間稼ぎをできたらいいのだから、マレーシア機に勝つ必要はない。

 そこに「こちらF-15EX、模擬空中戦を開始しました」と短くF-15EXはそれだけ告げた。

 F-15Aは「ではこれミッションコンプリート」と言っておじいさん謹製の自爆ボタンを押す。F-15Aの機体は爆散した。


 アリエス宅。元帥はマンガを読み、大和は腕を組んで静かに目を瞑り、アリエスはマフラーを縫い、MiG-29は緊張を紛らわせるためか何か手品をしている。ただ時計の秒針が進む音だけが響く、静かな時間が流れていた。そこへ空中にF-15Aが急に出現してドサッと床に落ちた。面々は「F-15Aっ」と駆け寄る。

「F-15Aただいま転生してきました」

「わかったわ、ロシア製戦闘機のトライアルが始まったのね、MiG-29っ、早速蘇生の準備をして」

 MiG-29は大慌てで「分かりました」と答えて、蘇生プログラムの詠唱を始める。しかし今までの練習と蘇生自動化の甲斐があって詠唱のスピードが凄まじく早い。物の30秒ほどで詠唱を終えて蘇生し、その魂はこの異世界から消えた。

 そして「……」とみんな黙り込み沈黙が戻る。

「んで、大和さん。どうするの?」

「あ。ロシア製戦闘機のバックドアが発動したか、誰かが確認しないといけないんだったわ」

 一同、大和のドジにズッコケる。

「わかりました、大和姉さん。私が行ってきます」

 F-15Aはそう言うと蘇生プログラムの詠唱をはじめ、MiG-29の後を追った。

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