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タリホー、しかし

 受付。F-4EJがある人物を注視していた。

「あのひとっす。魂はあるんすが、レーダーに反応がないっす。正確に言うとレーダー反応が小さいっす」

 F-4EJの視線に先には黒づくめの兵器の魂がいた。大和も耳に手を当てて、レーダーを指向する。

「間違いないわね。レーダーに反応が無いわ。タリホー(目標視認)。仮に『ターゲット』と呼称するわ」

「どうしますか、身柄を確保しまっすか? F-35Aは鈍足だから私でも追いつけるっすよ」

「逃げられると厄介だし、私は足が遅いから入口に待機するわ、F-4EJはターゲットに接触して、そのままいけば確保。もし逃げられたら入口の私の方に行くように追い立てて。最悪、攻撃して撃破してでも身柄を確保して。それと留守番はF-1がしといて」

「ウィルコ」

「ぼ、僕はっ」

「元帥君は私と一緒に。じゃ手はず通りに」

 そしてF-4EJはターゲットに接近する。その間に大和と元帥は走って入り口に陣取る。それと同時に、F-4EJがターゲットに接触する。すると二人は口論を始めた。どうやら大人しく身柄を確保されてくれないようだ。

 急にターゲットがF-4EJを突き飛ばし、兵器形態に転換して入り口に向けて走り出す。どうやら説得は不首尾に終わったようだ。

「F-4EJがしくじったわ。私たちで止めるわよ、元帥君は離れてて」

 大和そう言うと兵器形態に転換して両脚と両腕を広げて受け止めるようだ。しかしターゲットはそれに構わず、周りの客たちを吹き飛ばしながらどんどん加速する。しかし世界最強の戦艦である、大和に躊躇はない。多少のダメージを追ってでも受け止める気だ。

「こいっ」

 ただこれには罠があった、兵器の魂は見た目は女の子だが、戦闘機の魂の場合は空を飛べるし、潜水艦の魂は水にも潜れる。それも兵器と同じ性能で。すなわち相手が航空機だと飛んで逃げられる。

「っつ」

 そしてターゲットは止まることなく加速していき、入り口で大和に接触する寸前で「離陸」、そのまま大和の頭上を突破した。

「私が行くっす」

 そう言って、すぐさまF-4EJも兵器形態に転換し、滑走して離陸しターゲットを追った。といっても外見は人間のままだが。

「このままでは逃げられるっす。フォックスワン」

 F-4EJはそう空対空ミサイル(航空機から発射される対空ミサイル)発射の符丁を告げて、それを発射する。空対空ミサイルスパローはマッハ4でターゲットを追跡するが、ターゲットはどんどん加速していく。

「このターゲット、本当にF-35なんすかっ」

 そしてターゲットは音速を超えて飛行し、衝撃波が発生する。

「ターゲットはマッハ3に達したっすよ」。

 F-4EJからのその連絡を受けた大和は携帯電話を取って叫ぶように令する。

「短SAM(短距離地対空ミサイル)、攻撃を開始してっ」

 どうやら事前に布陣させていた短SAMにターゲットの撃墜を令する。

「ターゲットが早すぎますっ。無理ですっ」

 短SAMからも悲鳴のような叫び声が帰ってくる。

「僕が行ってみる」

 その声の主は言うに及ばず元帥だ。元帥はそう言ってジャンプすると空を舞い、そのまま上昇していく。最初はロケットのようにゆっくりだが、放物線の弾道を描きながら次第に加速していく。

「うわあああ」

 そして大和たちからは視認できない大気圏外まで上昇したのち、ターゲットの方向に進路を変えた。実に速度はマッハ20、秒速なら6キロメートル。ターゲットはなおも逃走を続ける。

 しかしターゲットはマッハ3、元帥はマッハ20。追いつくのに時間はかからなかった。

「ようし、このまま……」

 元帥は気楽にそう言ったが、問題はそれからどうするか。元帥は核兵器だと目されているが、対戦フィールド外で核爆発を起こせば、本物の核爆発同様火球とともに、膨大な熱線と衝撃波を発生させる。もちろん兵器の魂は死なないが、建物などは破壊されてしまう。それも数十キロメートル範囲で。

 それに元帥は気づいたらしく「追いついたけど、どうしたらいいのおぉぉっ」と情けなく素っ頓狂な声を上げる。

「とにかく体当たりをすればっ」

 元帥はそう言ってターゲットに向かって落下していく。大気との摩擦と空気圧縮による空力加熱で元帥は真っ赤になりながら落下してくる。

「おりゃー」

 そしてついにターゲットに衝突。核爆発はしなかったが、衝突のエネルギーでターゲットは絶大なダメージを受け、ヒットポイントのゲージがゼロになった。しかし一方の元帥のヒットポイントもゼロになり地上に墜ちた。地上には目を回してダウンした元帥とターゲットが残された。


 そして翌日。いつものように大広間で面々が朝食を取っていた。が、仏頂面だ。

「みんなそんなに怒らないでよ……」

 そう言って口を開いたのは大和だ。

「仕方ないっすよ。みんなお相手選出戦で元帥君と結ばれる希望を抱いたのに、決勝が相打ちで終わったんすから」

 そう。お相手選出戦は、決勝に護衛艦「たちかぜ」と早期警戒機(空飛ぶレーダーサイト)E-2Cが残り、非武装のE-2Cに勝ち目はないというのが下馬評だったが、「たちかぜ」の対空ミサイルをE-2Cがレーダーアンテナを盾代わりにしてしのぎ、その間にE-2Cが「たちかぜ」に特攻して相打ちに終わった。

 もちろんこれは大和の目論見通りで、その後は平常運転に戻るはずだったが、閉会の演説で大和がそれを吐露してしまい、総スカンを食らう羽目になった。

「しかし、ひどくないっすか、大和姉」

「F-4EJまあ今回は私が悪かったけど、元帥君を誰かのものにするより、永遠に公共財にした方がいいんじゃ……って無理よね」

 そして朝食はお開きになった。


 大広間には元帥と大和のみが残り、元帥は大和に耳掃除されていた。

「で、結局、F-35Aはいたの?」

「それについては結論が出なかったわ」

「え、僕が撃墜したのはステルス機じゃなかったの? F-4EJのレーダーに探知されなかったって。たしかF-35Aはステルスだって大和さん言ってたじゃない」

「あれはね、F-35Aじゃなかったの。予想外だったけど、アメリカ州のSR-71偵察機の魂だったのよ。マッハ三で飛行出来て、原始的だけどレーダーに映りにくいステルス技術が施されている」

「え、最新鋭兵器じゃないの?」

「SR-71は1960年代の機体だから最新鋭兵器ではないわ。とうに全機退役していて、この異世界に居ても何ら不思議じゃない魂」

「ええ、そんなぁ……ん? でもSR-71以外に観客の中には……」

「F-4EJもF-1も最新鋭兵器、すなわちステルス機がいることは確認できなかったわ」

「んじゃ……」

「たから今回の作戦の目的だった、最新鋭兵器がこの異世界に転生できるかどうかは分からなかったわけ」

「あーあ、じゃ取り越し苦労だったのかぁ」

「でも一定の収穫はあったわよ。ここまでしても最新鋭兵器は出てこなかった。おそらくこの異世界に最新鋭兵器が転生できる蓋然性はほぼないとみていいと思うわ」

「でも最新鋭兵器が昼寝でもしていて、今回のお相手選出戦を知らなかっただけかも」

「まあ、それはいずれわかるわね。私はとりあえず次の作戦を立てるわ」

「また次の作戦かぁせっかく異世界に転生してきたのに、なんか休むこともできないとはなぁ」

「まあそれもいずれ解決すると思うわ」

「うーん」

 そう言った元帥は解せないといった顔で膨れていた。

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