激突 日本街の兵器たち
そして一週間後。対戦フィールド。相変わらず快晴の空と塩湖の白が映えている。離れた場所に設営されている観覧席や待機室は多くの日本製兵器の魂でごった返している。賭けが行われたり、屋台が出てお祭り状態だ。
今まで元帥が核兵器である可能性があることは、御殿の中とあと僅かな魂しか知っていなかったが、今回のお相手選出戦の宣伝上、隠すことができず周知の事実となってしまい、多くの兵器の魂が詰めかけた。
元帥がそういうのに慣れていないことを知っている大和は、それを配慮して実機のヘリで特別に会場入りさせ、控室に待機させた。そして、まず観覧席のステージで大和がお相手選出戦の概要を説明する。次にステージ中央のスクリーンに元帥の顔が映し出されると、兵器の魂たちの黄色い声は最高潮に達した。
その会場の受付をF-4EJとF-1が担当しており、ステージから降りてきた大和がF-4EJに話しかける。
「作戦は分かっているわよね。挑戦者とお客は受付で兵器名と国籍を申告することになっているけど、いくらでも嘘は付けるの」
「はいっ」
「そこでレーダーで挑戦者とお客を調べて、レーダーに映らない魂がいたら私に連絡して。F-35Aはレーダーに映りにくいステルス機だから、魂はあるのにレーダーに映らなかったらビンゴという訳」
「わかってるっす、大和姉」
「あなたが対戦に参加するときはF-1と交代して、隙を作らないように。んじゃあとはよろしく」
そうして大和は去っていった。
対戦はまず陸海空で分かれて予選トーナメントが実施され、そこで選出された3つの兵器が総当たり戦を実施する。ただ話はそう簡単ではない、各兵器には色々事情がある。航空機はリアル世界の戦争のように数を出せず、また燃料にも限りがあるから戦場で無双することはできない。
空母は例外的に艦載機とタッグを組めるが、それでも決定的とは言えない。また陸上兵器同士の戦いは対戦フィールドが海だと戦えないので、予選に限って対戦フィールド全てを陸にしている。
そして対戦がはじまる。まずは航空機による予選だ。ちなみに下馬評で有力視されているのは日本街の戦闘機の中で最も性能が高いF-4EJだ。だが……。
「このお、丸腰の癖にどこ行ったんすかっ」
F-4EJはご立腹。何せ非武装の早期警戒機(空飛ぶレーダーサイト)E-2Cを相手にしているのだが、なかなか尻尾を掴めない。
「私のレーダーの探知距離は80キロメートルほどで、E-2Cは400キロメートル。これを活かして逃げ回って燃料切れを狙うなんて卑怯っすよ」
ちなみに大統領選出戦同様、狭い対戦フィールドでの対戦なので探知距離、射程距離、破壊力、速度、大きさは落としてある。
閑話休題。そのうえ、滞空時間(飛んでいられる時間)はF-4EJよりE-2Cの方が上。だからE-2Cが一方的にF-4EJを探知できるから、F-4EJに探知されないようにフィールド上を逃げ回っている。F-4EJはE-2Cの位置をESM(電波傍受、逆探知)で掴もうするが、E-2Cはレーダーを間欠使用しているので位置を掴めない。
あえて言うなら速度はF-4EJの方が上だが、相手を探知できないことにはどうしようもない。
結局F-4EJの燃料切れで終わった。優勝候補と目されていたF-4EJの予選敗退によりお相手選出戦は混とんとしてきた。
元帥の居る控室に大和が入ってきた。すると元帥はマスコミの取材攻勢を受けていた。もちろんこの異世界でマスコミごっこをしている兵器の魂で、リポーターとカメラマンの二人だ。
「ずばり、好みの女の子は?」
「えーと……」
「おっぱいは大きい方がいいですか、ちっばいの方がいいですか? 戦艦大和と一緒にいるからやはり巨乳ですか。それとも元帥はショタっぽい顔ですから気の合いそうなロリっ子の方がいいとか」
そう言ってマスコミ役の2人は元帥に詰め寄る。
「うーん」
「この際、私のおっぱいどうですか?」
マスコミ役の魂は取材そっちのけで胸元のボタンをはずし、谷間を強調して元帥に迫る。元帥は顔を赤くしながら恐縮している。
「なんなら私のコネを利用して好みのおっぱいの女の子を探してきますよ。その代わり、私を愛人にしなさいな」
「愛人って……」
その時二人の頭をズシリと重い本で叩く人がいた。大和だ。
「あなたたち何やってんの。帰ってくれないかしら」
「えー、いいところだったのにい」
「さ、しっしっ」
マスコミ役の2人はしぶしぶ退室し、控室は元帥と大和の二人だけとなった。元帥は「で、どう?」と尋ねる。
「いまのところ、特にめぼしい情報は無いわ。選出戦に挑戦する魂はもちろんだけど、観戦するだけのお客もかなり数が多いわ。どうやら日本街の大半の魂が挑戦しているらしい上に、アメリカ州とかからもお客が来ているみたいよ」
「それを虱潰しに調べていると?」
「ただたくさんの兵器の魂が来ることはこっちにとって好都合よ」
「なんで、魂が多いとそれに紛れて見つけるのが大変になるんじゃ?」
「いえ、もし他国に最新鋭兵器がいるのならそれが来場する可能性があるから。日本の兵器の魂だけだと最新鋭兵器はF-35Aしかないけど、他国の兵器ならF-22とかいろいろあるから、ただ……」
「ただ?」
「そう、ただあまりに多いのでF-4EJの確認が少しざるになってるわ」
「どうするの?」
「そこで情報操作しようかと思うの」
「また小細工をするの?」
「そう、日本の兵器の魂たちにロシアのスパイが紛れ込んでいるという情報を流すの。そのスパイはステルス機の魂だ、と」
「それなら日本の兵器の魂たちはロシアのステルス機を探し出そうとレーダーを使い始めると」
「そう、目で魂が見えるのにレーダーに反応が無いのはステルス機という訳」
「なるほど、でもそううまくいくかなぁ」
「私としては今回の作戦はあまり重視していないわ。次の一手を打つまでの暇つぶしだから」
すると控室の電話が鳴った。
「もしもし、大和よ……え、なに……それはほんとうなのっ、すぐいくわっ」
大和はそう言い終えると電話の受話器を荒々しく置いた。
「どうしたの、まさかついに最新鋭兵器の尻尾を掴んだのっ」
「ご名答っ、元帥君も来てっ」
それを聞いた元帥と大和は走って控室をあとにした。




