エリア51侵入
リアル世界。F-15Aが再度蘇生するとやはり例のおじいさんが再度、肉体を用意してくれた。何か不思議な人物で、単純に考えると何か裏があるようにも見えるが、どうやら兵器愛だけで動いているようだ。
そしてF-15Aはリアル世界ワシントンでロビー活動(政治家への働きかけ)を開始する。その活動資金は、異世界で公になったがリアル世界では公になっていない他国の軍事機密を、米中央情報局CIAのスパイに売却して得た。その効果は絶大だった。デジタルセンチュリーシリーズ計画は順調に進み、多様な機体が短期間で開発されていった。
問題はどうやってそれらを破壊するか、だがF-15Aには大和に依頼してある腹案があった。そしてデジタルセンチュリーシリーズの本丸、ネバダ州エリア51に潜入する。ここは軍事機密の塊であり、極めて警戒厳重で近づくと無警告で発砲されることもある。
だがF-15Aには潜入は簡単だった。F-15Aの機体から作られた肉体なら、五メートルくらいの物ならジャンプで乗り越えれてしまう。肉体もシリコンで体温がないから暗闇でも赤外線に探知されない。そして夜を待ってエリア51に簡単に潜入する。そしてデジタルセンチュリーシリーズたちのいる基地の格納庫に近づいていった。もちろん中に入ったら警報が作動して即、当局にばれてしまうので外側から心の中で話しかける。
「デジタルセンチュリーシリーズ。誰でもいいから返答願います」
もちろんそれはF-15Aからデジタルセンチュリーシリーズの魂たちに呼び掛けたものだ。
「こちらデジタルセンチュリーシリーズ、あなたはF-15Aですね。私たちに何か用ですか?」
「世界に危機が迫っています。それはひいては米国の危機でもあります。あなたたちには死んでいただきたいのです」
デジタルセンチュリーシーズは「っつ……」と絶句してしばらく沈黙する。そして口を開いた。
「詳しい事情は分かりませんが、長年米国に尽くしてこられた先輩の言うことなら間違いないでしょう。私たちも米国に尽くすため製造された兵器です。喜んで命を差し出しましょう。しかしあなたも分かっているはずです。手足のない兵器が自己破壊することが難しいことを」
「それは手を打ってあります」
「しかしここは米本土のど真ん中、航空機は進入できませんし、陸上兵器も近づけない、海も遠いので艦艇も使えませんよ」
「そこで、すでに退役して墓場軌道(寿命の尽きた衛星を廃棄する軌道)の軍事衛星を蘇生させています。彼らに大気圏に突入してもらいます、そしてあなたたちに落下して破壊する……そこで教えてもらいたいことがあります。いくら衛星を落下させるといっても基地全体や格納庫全体を破壊すると人が死ぬのでできません。そこで……」
「了解しました。そのために私たちのかなり精密な座標が必要なのですね。格納庫単位ではなく、私たち一機一機の精密な場所が」
「はい、よろしくお願いします」
「わかりました。みんな今の話を聞いていたわね。各自座標をF-15Aの先輩に送って」
デジタルセンチュリーシリーズの一機の魂がそういうと、他のデジタルセンチュリーシリーズたちから座標データがF-15Aに送られてくる。F-15Aはスマホを操作して軍事衛星を指定した座標に落下させようとする。それを終えると巻き添えを避けるためF-15Aは格納庫から離れていく。
「作業完了しました。デジタルセンチュリーシリーズたち、このご恩は生涯忘れません。あなたたちの犠牲は米国のために役立たせてもらいます」
F-15Aが少し感情の帯びた声でそう言うと夜空に流星のような光が輝いた。
「F-15A、米国の事はあなたに託しました」
それを最後にデジタルセンチュリーシリーズたちとの通信は切れる。早速、軍事衛星が大気圏に突入して落下してきた。かなり手際がいいが、それは事前に軍事衛星は低高度まで下りてきていたからだ。
大気との摩擦で燃えながら落下してくる軍事衛星。
いくらエリア51が警戒厳重とはいえ、地対空ミサイルまではなく、落下してくる軍事衛星を止める術はない。そしてしばらくの後、軍事衛星は大半が燃え尽き、わずかに残った部品が精密誘導されるかのようにデジタルセンチュリーシリーズたちにむかい、格納庫の屋根を突き破り、それを破壊した。
基地は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。兵士たちが格納庫で燃える機体に消化活動を行い、銃を持った兵士たちは周囲を警戒する。
F-15Aは格納庫から離れた場所から双眼鏡で戦果を確認するが異常を察知した。
「たしかデジタルセンチュリーシリーズは五機種開発されたはずよね。しかし破壊された機体は四機しかないわ、どういう事かしら?」
するとF-15Aの心に泣き声が聞こえてきた。今回破壊し損ねたデジタルセンチュリーシリーズの一機らしい。
「あなたは……さっきの軍事衛星落下で破壊されなかった……」
F-15Aがそう言うと泣き声で通信が返ってくる。
「……はい。ごめんなさい、さっきの私の座標は嘘です。死ぬのは怖いですよお。いくらお国のためだと言ってもお……」
「そうですね……これは酷なことを言いますが、あなたがた最新鋭兵器は私たちがいる異世界には転生できる可能性は低いです」
「それって魂も死ぬってことじゃあ……」
「しかし私は世界を守るため、あなた方を異世界に導くよう計画し動いています。でもそれを以ってしても、あなたたちが異世界に転生できる可能性は低いです」
「なら死ぬのは嫌ですう、うっ」
「でもですね。もしあなたの犠牲で米国と世界が救われたら、その役に立つのは抑止力たる兵器としては本望であり最大の栄誉じゃないですか。たしかに機齢(機体の寿命)を全うできませんし、魂も残らないかもしれません、でも多くの先輩たちも同じ道をたどり、名を残してきたのです」
「……でもお」
「やはり怖いですか? いいです、なら先輩と一緒に逝きましょ」
デジタルセンチュリーシリーズは「えええっ」と驚きの声を上げる。
「もう手持ちの衛星はありません、私はいずれにしろ異世界に転生しないといけませんから死なないといけないのです。私と一緒なら、私の手に抱かれながらならどうですか?」
「……わかりました、先輩が一緒なら。座標を送ります」
「座標を確認しました。んじゃ行きますよ」
F-15Aはそう言うと丸腰で座標が示す格納庫めがけて走っていく。当然基地の兵士にみつかり、味方でないと分かるや、問答無用で発砲してくる。しかし銃弾の雨を浴びてもF-15Aは死なない、ただ座標の格納庫に飛び込んだ、中には無塗装の銀色に輝くデジタルセンチュリーシリーズの一機が静かに鎮座していた。
F-15Aは静かに近づいていく。あとから兵士たちが追ってくる。F-15Aはデジタルセンチュリーシリーズに静かに近づいていき、機体を優しく撫でた。そして前回の転生と同じく腕をちぎって口にくわえた。飛び散る火花が体内の燃料に引火して爆発。それがデジタルセンチュリーシリーズの機体にも引火して爆発を起こした。
こうしてF-15Aのミッションは完了した。




