作戦会議3
そして元帥、大和、F-15Aの三人が作戦会議を続ける。他の面々は相変わらずも水遊びをしている。話を切り出したのは元帥だ。
「んで、気になっていたんだけど、F-15A。蘇生した後はどうなったの? やっぱりモスボール保存した機体に憑依したんだよね。んじゃ人間見たく動けないよね」
「それはかくかくしかじかです。んで本題ですが、やはりタイフーンがテロ計画を目論んでいるのは間違いないようです」
大和は合点の言った顔で「やっぱりね」と短くつぶやく。そしてF-15Aが話を進める。
「内容も大和姉が言ったように、リアル世界でロシア製最新鋭兵器を破壊してその魂を異世界に転生させて、次の異世界大統領選出戦で勝利を目指すもののようです」
そこへ元帥が割り込む。
「すこしいいかな。タイフーンがロシア製最新鋭兵器の魂をこの異世界に転生させるのはいいけど、最新鋭兵器にしてみればタイフーンに殺されるようなものだよね。そんなタイフーンにこの異世界で従うのかな?」
「それは確かに言えるわね。人間と同じように兵器にも生きたいという気持ちがあるわ。撃破されたくない、撃沈されたくない、撃墜されたくない、と。まあさっきから繰り返すけど、そこにもタイフーンは何らかのアテがあるようね」
「大和姉さん。それは単にこの異世界では先輩のタイフーンに従うしかない、というだけのことかもしれません。それとも……」
そこに再度元帥が衰が割り込む。
「F-15A、ほかに何かあるの?」
「いいですか元帥君。ロシアと日米では価値観が大きく異なります。ロシア国民は国民の権利や自由、民主主義より、自国が強大であることを望んでいるという調査結果があります。要するに全体主義的。ですから、もしかするとロシア製最新鋭兵器は自分がタイフーンに殺されたことより……」
「自国のタイフーンが両世界を統べることを優先するのか……」
「そういう事よ元帥君。話を進めるわよ。んでF-15A、ロシア製最新鋭兵器の殺し方は?」
「大和姉さん、来年の春にロシア国内で兵器見本市が開催されるようです。事前にタイフーンが蘇生、兵器見本市をタイフーン級で核攻撃してロシア製最新鋭兵器たちを殺すようです。ところが一つ謎があります。西側各国もこの兵器見本市に招待されているようなのです」
「え? どういうこと?」
また元帥は理解できていないらしい。
「ロシア製最新鋭兵器の魂が欲しいのに、なんで西側まで巻き添えに? F-15Aは何か知っているの?」
「そこです、大和姉さん。おそらくロシア製の最新鋭兵器のみを転生させる方法があるようです」
「まあいいわ、それはおいおい判明するでしょ。んで、リアル世界に対しては核兵器を恫喝に使うつもりなのよね」
「はい。先ほどの兵器見本市を核攻撃するというのは魂云々もありますが、リアル世界への恫喝も含まれているようです」
「そういうことね。で、タイフーンはいまどこに?」
「今の時点ではタイフーン自体はまだ蘇生していないようです。ただいくつかのロシア製兵器の魂が異世界から蘇生したのは間違いありません。彼女らがリアル世界で工作活動を実施しているようです」
「んで、どうするの? 大和さん」
「元帥君、まあロシア製最新鋭兵器を破壊するのはある程度読んでいたから驚きはしないわ。だったら、こちらも同じ手を使うまでよ」
「大和さん、まさか僕たちも西側の兵器見本市を核攻撃するんじゃないよね?」
「そんなことするわけないでしょ。こちらも最新鋭兵器を破壊すればいいだけの事よ」
「そんなこと簡単に言ってくれるけど……」
「それはF-4EJがいい情報を持ってきてくれたわ。F-4EJちょっと来て」
大和はそう言って、水遊びしていたF-4EJを呼び出し、呼ばれたF-4EJは走ってこっちにやってくる。ちなみにF-4EJは普通のスカイブルーのビキニだ。
「なんすか、大和姉?」
「F-4EJ、確かあなたこの異世界に転生するときに、ある計画を知ったって……」
「あー、デジタルセンチュリーシリーズっすか?」
「デジタルセンチュリーシリーズ?」
元帥は何もわかっていない顔でそう言った。
「簡単に言うと新しい戦闘機の開発、運用方針すね。いままでの戦闘機は開発期間も運用期間も長い。その運用期間に改良も必要っすし、維持費も上がりますし、性能的にも陳腐化します。そこでデジタル技術を使って短い期間で開発して、機体強度も落として改良もせず運用期間も短くする。そして次々に戦闘機を開発しようという計画っす」
F-4EJが長い説明を難なくこなす。
「それが大和さんの思惑と何の関係が?」
元帥はまたまた状況を理解できいないようだ。
「この計画では多様な機種を開発して他国に追随されないようにすることも考えられている。ということはこの計画で多数の新型機が完成することになるわ」
大和は元帥の質問にそう答えた。
「しかし大和さんは前に新型機はこの異世界にやって来れないと……」
「元帥君、再々度言うけど、それはタイフーンにも言えるわ。兵器見本市には新型機も出品されるはず。それがこの異世界に来る方法があるはずなの」
「ところで死んだ兵器の魂がこの異世界に来れる、来れないの分水嶺って何なのかな?」
「簡単に言うとリアル世界で運用されていた年数かしらね。ただこれも以前言ったように明確な線引きは無いの、完全に御神慮の裁量が決めている。F-15J戦闘機の魂がこの異世界にないように」
「それで話を戻すけど、デジタルセンチュリーシリーズの話は……」
「そうそう元帥君。簡単に言えばF-15Aに再度蘇生してもらい、デジタルセンチュリーシリーズを推進するように工作したうえで、出来上がった新型機を破壊してもらいたいの」
「大和姉さん、それはできないことは無いですが……デジタルセンチュリーシリーズの魂がこの異世界に転生するかどうかは置いておくとしても、米国製兵器は個人主義な面があるから、仮に転生しても我々に従ってくれる保証はないですよ」
「F-15A、ぶっちゃけ言ってしまうと、保険という意味合いが強いの。死んだデジタルセンチュリーシリーズの魂がこの異世界にやってこなくとも、従ってくれなくとも、その解決策をタイフーンは持っている」
「なら、それが判明したあとでタイフーンの真似をすればデジタルセンチュリーシリーズが手に入る、つーことっすね」
「F-4EJそういう事。それに兵器見本市で西側の兵器が破壊される可能性が高いのなら、それにも同じ手が打てるはずよ」
「なるほど」
「なら話は決まりね。F-15Aは早速アメリカ州のアリエスさんのところに行って蘇生して頂戴。それとアリエスさんにこれを渡しておいて、あ、決して中身を見ないように」
大和がそう言ってF-15Aに渡したのは小さなフロッピーディスクだ。
「大和姉さん、なんですか、これは?」
「それは秘密。あ、それと最後に言っておくけど、リアル世界で決して人を殺さないようにね」
「最後に今回の任務のため一つ蘇生させてほしい兵器があるのですが……」
F-15Aはそう言うと大和の耳元で耳打ちし、大和は「わかったわ」と返事する。
それを聞いたF-15Aは「かしこまりました」と言って無事に旅立った。




