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第27話 初めての依頼

「依頼を始めようかな」


 鍛冶屋を出てから依頼をこなすために近くの森へ来た。

 もちろんサラとティナも一緒だ。


「今日は冒険者の先輩としてうちらが教えたるわ」


 そう言って意気込むティナ。

 先輩って言葉が気に入ったみたいだ。


「最初は薬草を集めることから始めるといいよ」


 サラの話では薬草採取は新米冒険者にとって定番らしい。

 自身が怪我をした時には回復薬を使うのが基本で薬草はその材料になる。


「街の人もみんな回復薬を使うの?」

「そんなことは無いよ。街の人が怪我をしたら教会か薬草かな」


 元世界で医者の代わりを教会が務めているらしい。

 それに薬草だけでもちょっとした怪我には有効だと聞いた。


(まあ街の人は冒険者ほど危険じゃないしな)


 それに比べて冒険者は街の外で危険な依頼を行うために回復薬は必須だ。

 旅先で魔物にやられて何度も街の教会へ戻る訳にもいかない。

 そんな薬草を採取しに森へ来たんだけれど……。


(うーむ、どれが薬草なんだ?)


 当たり前だが森の中は緑の絨毯が広がっていてどれが薬草かさっぱりだ。

 リーディエルの住人にとって薬草は馴染みがあるけれど僕は見たことが無い。

 念のためにサラから薬草の現物を見せてもらう。


(足元の雑草ですら薬草に見えるんだけど……、違いがわからん)


 2人に薬草を探すためのコツを聞くと茎の部分が微妙に白く、葉っぱは茎の部分から葉先にかけて白から緑に変化しているらしい。

 確かに足元の雑草と見比べると言われた通りの違いがあった。


「この違いを広大な緑の絨毯から探すのか……」


 僕が唖然としている間にもサラとティナは数本の薬草を見つけたみたいだ。

 薬草10本を1束にして冒険者ギルドへ持ち帰れば依頼達成となる。

 泣き言を言っても始まらないし頑張りますか。



 ――30分経過。



 はい、全然見つかりません。

 緑ばっかりで若干目がおかしくなってきたよ。

 見習い冒険者の依頼だし簡単に集まると思ったけれど難しい。


「どうや、ミオ。薬草は見つかったか?」

「……まだ」


 サラとティナには何も言わないようにお願いしてある。

 見習い冒険者の最初の依頼くらい1人でやってみたい。

 そんな2人の手には薬草の束とどこかで見つけたウサギの魔物があった。


(これはさすがにマズい。初めての依頼が失敗とか残念すぎる!)


 そう思って右を見れば緑の雑草だらけ。

 左を見渡しても同じ光景が広がるだけ。


(どうするんだよ、これ……?)


 何か方法が無いか考えていると、とあるスキルの存在を思い出した。

 さっそく手に持っている雑草に<鑑定>を使ってみる。



【 雑草 】

  普通の雑草。



 ……ですよね。

 この方法で1本1本を<鑑定>で調べれば……って今と変わらないじゃん。

 確定はできるけれど探すのは1本ずつだし目視するのと同じ。


「あっ、もしかして!?」


 僕が持っている<創造>は組み合わせて使う魔法だ。

 豊穣の女神メラッド様から授かった<食糧>と組み合わせてパンやおにぎりを魔法で作り出せた。

 それなら範囲を広げるイメージを頭に浮かべて<鑑定>すると僕の思ったとおり発動する。

 そして僕の目に飛び込んできたのは――。


「……この辺り、薬草の宝庫じゃん」



【 アスオン草 】

  そのまま煎じた汁を飲めば若干体力が回復する。

  かなり苦めで美味しくない。



 足元に生えている雑草だと思っていたのも実は薬草だった。


「ふぅ、見つけたよ」


 僕がそう言うとサラとティナが嬉しそうな顔をしていた。


「ミオちゃん、おめでとう!」

「やっと足元の薬草が見つかったか」


 どうも2人には僕の足元に薬草が生えていたのもわかっていたみたい。

 僕がいつ気付くのかドキドキしていたと言われたよ。


「こんなに時間かかってごめんね」

「大丈夫だよ? ミオちゃんが薬草に馴染みが無いって聞いてたしね」

「そうやで。獣人のうちらは薬草の匂いでわかるけどミオみたいに探すのが苦手な種族もおるねん」


 そうなのか。

 僕以外にも苦手な人が存在していると聞いてホッとしたよ。

 けれど探し方がわかったから次は簡単だ。


「最低でも10本集めないとギルドで依頼達成にならないからね」

「うん、もう大丈夫! コツもわかったし」


 コツと言うかチートだけどな。

 すぐに<鑑定>を範囲化させて次々と薬草を集めていくと2人が驚いている。


「コツがわかっても、そんなに早く見つかるんか?」

「僕のスキルを活用してるからね」


 最初は30分かけて0本だった薬草が15分かからずに20本近く集まった。

 さすがに取り過ぎたかなと思ったけれど雑草並みに生えるので大丈夫らしい。


「それなら街で栽培すれば?」

「森へ来ればたくさん生えてるしね」


 教会では高級な薬草のために栽培しているけれど普通はしないらしい。

 確かに雑草並みに生える草をわざわざ土地を広げて栽培するのは面倒か。


 結局、今日は1日かけて薬草採集をしてしまった。

 途中で少し遅めの休憩とお昼ご飯にする。

 街で買った肉串と僕の魔法で作り出したパンとおにぎりだ。


「ミオちゃんのおかげで食事に使うお金が減ったから助かってるんだよ?」

「そうやで? ミオの装備品もそれで貯金ができたしな」


 そう言って喜んでくれるサラとティナ。

 最初は僕1人で異世界生活を送ると思っていただけに今が凄く楽しい。

 そんな2人のためにもスキルレベルを上げないと。


「それじゃ街へ戻ってギルドに報告だ」




 ☆☆☆




「こんにちは、アリシアさん」


 アテリルの冒険者ギルドへ戻ってギルド職員のアリシアさんに声をかける。

 まだ夕方前の時間とあって冒険者の数は少ない。


「あら、ミオくん。今日から依頼を受けたんだよね? どうだったかな?」

「ちゃんと薬草を持って帰りましたよ」


 そう言って受付カウンターの上に僕が採取した薬草50本を並べる。

 昼食の後も探すのが楽しくなって結果的に57本の薬草を採取したのだ。

 薬草採集の依頼は10本で1束なので端数は<収納>へ入れておく。


「……ミオくん、1人でこんなに集めたの?」


 僕に尋ねながら後ろのサラとティナの顔を見るアリシアさん。


「私たちは一切、手伝ってませんよ」

「薬草採取のコツは教えたけど実際に探して取ったんはミオやで」


 2人の言葉に納得してくれたのか笑顔を僕に向ける。


「ミオくん、よく頑張ったね! 初めての依頼で薬草を50本も持ち帰ったのはミオくんが初めてだよ」


 受付カウンターに身を乗り出して僕の頭を撫でてくれる。

 今回も胸が潰れて苦しそうだけれど言っちゃダメな場面だよな。


「では薬草の買取りだけど1束で銅貨2枚だから5束で銀貨1枚だよ」


 僕の目の前に銀貨が1枚置かれた。


「ミオくん、依頼達成おめでとう!」

「ミオちゃん、おめでとう! 立派な冒険者の仲間入りだね!」

「ミオ、よく頑張ったやん」


 アリシアさんだけでなくサラやティナも一緒に喜んでくれる。

 こんな可愛い笑顔を向けられれば僕も嬉しいよ。


 冒険者ギルドを後にして僕が最初に向かったのは肉串の露店だ。

 パンやおにぎりは僕が魔法で出しているけれど肉串は無理だった。


「こんにちは、おじさん。これで買えるだけの肉串を下さい!」


最後までお読みいただきありがとうございます。

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