第26話 鍛冶屋へ行こう
「やったーーっ!」
ついに冒険者の仲間入りができて思わず叫んでしまった。
「ミオちゃん、おめでとう!」
「これでミオもうちらの仲間やな!」
可愛いケモ耳少女が一緒に喜んでくれると嬉しいね。
「冒険者の先輩に聞きたいんだけど最初はどうしたらいいかな?」
「せ、先輩やなんて照れるわ!」
「私たちも見習いを卒業してFランクに上がったばかりだし」
謙遜しつつも嬉しそうに照れるサラとティナ。
2人の笑顔を見ているだけで嫌な気分が吹き飛ぶよ。
「最初はギルドが指定する依頼をこなすんだけど、先にミオちゃんの装備品を揃えないとね」
「そうやな。サラの剣の修理も終わってるやろ」
「えっ……?」
確かにサラの言う通り冒険者に装備品は必須だ。
けれど今の僕はお金を持っていない。
(財布の中に銀貨数枚があるけど緊急用だから使えないし)
依頼のすべてが魔物と戦う必要は無いから、最初は簡単な依頼から始めてお金が貯まってから装備品を買い揃える方がいいだろう。
「私たちと同じ冒険者になった記念にプレゼントするよ」
「そやけどあまり高いのは勘弁してな?」
そう言って僕の頭を撫でるサラとパチっとウインクするティナ。
リーディエルに転生して本当によかった!
「おっちゃん、こんにちは!」
2人が通っている鍛冶屋に到着して店の中へ入る。
装備品を売っているのは武器屋かと思ったけれど鍛冶屋が兼任している場合もあるらしい。
「グスタフさん、剣の修理はどうなりましたか?」
2人が声をかけたのは小柄な体格だけれど立派な髭を蓄えた男性だ。
「サラとティナか。剣の修理じゃがもう終わっておるぞ? ところでその子供は?」
「先日の奴隷市場の件で助けた出した子供ですよ」
サラたちがお世話になっているなら僕も挨拶をしておかないとな。
「初めまして、グスタフさん。僕の名前はミオって言います。今日は初めて冒険者に登録したので装備品を見にきました」
「おおっ、そうじゃったか! サラの剣を取ってくるから自由に見てくれ」
グスタフさんにお礼を言って店内を見て回る。
ゲームで見たことがある剣や斧、槍に弓まで揃っている。
変わったところだと鞭のような物まで並んでいて男心にワクワクしてしまう。
「……ヤバい、楽しいっ!」
思わず漏れた心の声にサラが笑顔で僕を見ている。
ティナも僕に似合うような鎧を探すのに一生懸命だ。
「ミオ、この鎧なんかどうや?」
そう言って僕に見せてくれたのは軽装備の棚に飾ってあったシンプルなデザインの革鎧だ。
体の中でも重要な心臓の部分に金属を使うことで軽さと強度を上げているらしい。
僕のような子供でも着れそうだけれど気になることがある。
「それって女性用だよね? 胸の部分が盛り上がってるように見えるんだけど」
「あれぇ、間違えてしもうたわ。ごめんな?」
絶対にワザとだよな?
笑いながら棚に戻すティナを見て次回の食事を減らそうと思う。
しばらく装備品を見ているとグスタフさんが1本の剣を持って戻って来た。
「サラよ、剣を持ってきたぞ」
「グスタフさん、ありがとうございます」
サラが修理の終わった剣の具合を確かめている間、グスタフさんが僕たちへ声をかける。
「お前さんの装備品は決まったのか?」
「見ているだけで楽しくて全然決まらないんですよね」
「がはは! そうか、楽しいのか」
僕の言葉を聞いて豪快に笑うグスタフさん。
「ところでお主、変わった種族じゃな? 少しだけフードを取ってもらえんか?」
街中では髪色が目立たないようにフードを被るようにしていた。
(ずっとフードを被ったまま生活するのも面倒だしな)
何も言わずにフードを取ると僕の髪色を見て少し驚くグスタフさん。
そして頭のてっぺんから足先までゆっくり眺めた後に僕の手を取ってジッと見ると何かを思い出したかのように店の奥へ消えていく。
「どこまで行ったんだろう?」
すぐに戻ると思ったのに僕は未だに放置されたまま。
数分ほど経ってようやくグスタフさんが戻って来た。
「待たせてすまんな。お前さんにピッタリの剣を持ってきたんじゃ」
グスタフさんが持ってきた剣を手に取る。
刀身は鈍い銀色だけれど店内の照明が反射すると虹色に輝いている。
柄の部分は装飾が施されていて引き込まれそうなほどに美しい。
「その剣は儂が鉱山で貴重な鉱石を探している時に偶然見つけた遺跡に眠っておってな。ずっと倉庫に置いてあったのじゃがお前さんを見て思い出したんじゃ」
「お、おっちゃん……。これってミスリルの剣とちゃうの?」
「えっ、ミスリル?」
その名前はゲーム好きなら1度は聞いたことがある異世界の希少金属だ。
「お主らも知っておったか。これはミスリル製の剣じゃ」
「グスタフさん、こんな高価な剣は私たちに買えないですよ!?」
「こんなに綺麗な剣なら金貨10枚以上はするんちゃうの?」
金貨10枚って平民が何もしなくても数ヶ月は暮らせるほどの大金だ。
そんな高価な武器を僕に持たせてどうしろと?
「いや、このミスリルの剣はちと特殊でな」
顔にしわを寄せて話を始める。
何でも遺跡で見つけた当初は店に持ち帰って磨いたらしいけれど切れ味がまったく戻らなかったらしい。
他のミスリルの剣で試し切りをした時には切れた物ですら歪にしか切れなくて店で出しても全然売れなかったとか。
(そりゃ、冒険者が切れない剣を持ってても荷物なだけだしな)
命を預けるといっても過言ではない武器が切れないんじゃ話にならない。
逆にそんな剣を僕に持たせてどうするんだろう?
「儂にもわからんが数日前に夢を見てな。その中で黒髪黒目の子供が尋ねて来たらその剣を渡すように言われたんじゃ」
それって確信は無いけれど神様だよな?
僕が来ることがわかっていたのか気になるところではある。
「だけど黒髪黒目の子供なんてリーディエル全体を探せば僕以外にもいるんじゃないの? それにこの剣って凄い剣だよね?」
「ミスリルの剣なんてCランク以上でも持っている冒険者は少ないよ」
サラの話を聞いて余計に扱いに困ってしまう。
「この数字って何やろか?」
「それは儂が遺跡で見つけた時から彫られていてな」
ティナが刀身の一部に数字が彫られていることに気付いた。
グスタフさんも顎鬚をさすりながら頭をかしげている。
「僕にも見せてくれる? えっと090xx△△……」
数字を見て膝から崩れ落ちる僕。
これは僕が1番知っている数字だった。
「何で剣に僕の電話番号が彫ってあるんだよっ!?」
「ミオちゃん、急にどうしたの!?」
僕が大声で叫んだせいでサラやティナを驚かせたようだ。
他にも数人の客がこっちを見ていた。
「あっ、大声を出してすみません」
僕が頭を下げると冒険者たちは何事も無かったように品定めを始める。
大声を出した僕も悪いけれどこの剣も問題だよな。
「お前さんはこの数字が何かわかるのか?」
グスタフさんが僕に聞いてくる。
さすがにリーディエルでスマホと言っても理解してもらえない。
「これは僕の……個人を表す番号みたいなものです」
厳密には違うんだけれど説明のしようが無いもんな。
これで納得してもらえると思えないけれど仕方ない。
「そう言うことなら、その剣はお前さんの物じゃよ」
僕の説明になぜか納得してくれたグスタフさん。
夢の中で見たお告げの効果なんだろうか?
「そやけど、うちらにこんな高価な剣を買うお金なんて無いで?」
「その剣は儂が遺跡で偶然見つけただけで持ち主に返すだけじゃから金などいらんよ。その代わりに何か面白い物を見つけたら儂にも見せてくれ」
そう言って笑うと他の装備品を見立ててくれて鍛冶屋を後にした。
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