第22話 冒険者ギルド
「むぅ、また会いに来る」
フララさんとは翌日になって宿屋の前で別れた。
城から呼ばれていたが最後まで僕たちと一緒に行くと愚図るフララさんに大量のパンとおにぎりを持たせて納得してもらえたのだ。
おかげで今日は朝から体が怠くて仕方ない。
「それは魔法を使い過ぎて魔力欠乏になったんだよ」
サラがそう教えてくれる。
魔法を使い過ぎると魔力欠乏による疲労や眩暈が出るらしい。
酷い時にはそのまま倒れることもあるとか。
1日寝ていれば魔力は自然と回復するみたいだけれど今後は注意しないと。
「ミオちゃん、ここが冒険者ギルドだよ」
今日は2人と一緒に冒険者ギルドへやって来た。
リーディエルで女神像を探す旅へ出る前に冒険者としての経験を積んでおきたいとお願いしていたのだ。
「ミオ、ホンマに大丈夫か?」
「冒険者は夢もあるけど怪我したり死んじゃうこともあるんだよ?」
「大丈夫だよ。2人とも心配してくれてありがとう」
そんな2人に感謝しつつ目の前の建物を見てみる。
アテリルの街は木造が多い中、石造りの立派な建物だ。
「ここが冒険者ギルドなんだ」
朝は混雑するのか大勢の冒険者たちで賑わっている。
大きな剣を下げた獣人や綺麗な弓を背負ったエルフ、金属の鎧を身に着けた凄い髭のドワーフに見事な装飾のローブを羽織った青い肌の人は魔族だろうか?
種族も性別もバラバラで見ていて飽きない。
(本当に人間がいないんだな)
初めての冒険者ギルドは絡まれるのがお約束だ。
少し警戒しながら建物内へ入るが冒険者たちは自分のことに忙しくて僕のような子供がいてもチラッと見るだけで何も言ってこない。
(まぁ、僕は何も無い方が助かるけどね)
ちなみにサラとティナは仕事を探すために掲示板を見に行った。
その間に僕は冒険者の登録を済ませるため2人に聞いたカウンターを探して可愛い犬耳のギルド職員のお姉さんに声をかける。
「こんにちは、お姉さん」
「はい、こんにちは。今日はどのようなご用件……あっ、こちらですね」
僕には少し高すぎる受付カウンターだけれど気付いてもらえたらしい。
これでも自称10歳なんだけれど……小柄なのはアラミオン様の趣味か?
「可愛いお客様ですね。今日はお仕事の依頼ですか?」
受付カウンターから身を乗り出して話しかけてくるお姉さん。
よく見ると大きな胸が潰れて苦しそうで少し申し訳ない気持ちになる。
「いえ、冒険者の登録をお願いします」
僕みたいな子供が何も言われなかったのは依頼人だと思われたらしい。
いつかお願いするかもしれないので覚えておく。
「くくっ、ガキが何を言ってるんだ?」
僕の声が聞こえた周囲の冒険者から嘲笑うような声が聞こえるが無視だ。
「うーん、確かに冒険者カードの発行に年齢は関係無いけど大丈夫? ご両親は何て言ってるの? 冒険者は夢もあるけど死んじゃうこともあるんだよ?」
犬耳のお姉さんが僕の姿を見てサラやティナと同じ心配をしてくれる。
「アリシアさん、おはようございます」
「はい、おはようございます……ってサラさんとティナさんじゃないですか」
仕事を探すため掲示板を見に行っていた2人が帰って来たらしい。
「この子は私たちの知り合いから預かっていて簡単な仕事を手伝ってもらうために冒険者カードの発行をお願いしたいんです」
「身元保証ならうちらがするから大丈夫やで?」
サラとティナには宿屋で決めた説明をお願いしておいた。
「そう言うことなのですね。では手続きを始めるのでこの用紙に……ってカウンターに届かないかな。ちょっと待っててね」
2人の説明で納得したのかアリシアさんと呼ばれる犬耳のお姉さんは僕の方に回り込んで屈むと目線を合わせて話してくれる。
「お嬢ちゃんは文字の読み書きはできる? お姉ちゃんが代筆するよ?」
リーディエルに限らず異世界では識字率が高くない傾向がある。
もちろん僕はアラミオン様の加護があるから問題無い。
「大丈夫です。文字の読み書きは習いましたから」
返事をするとアリシアさんだけでなく2人も驚いている。
そんな僕を抱きしめるアリシアさん。
「お嬢ちゃんは凄いね! こんなに可愛いのに文字の読み書きもできてしっかりしてるなんて将来は素敵なお嫁さんになれるよ! もし将来の仕事が決まってないなら冒険者じゃなくてギルド職員なんてどうかな? お嬢ちゃんならすぐに人気者になれちゃうよ?」
アリシアさんの熱烈な勧誘に必死で笑いを堪えるサラとティナ。
「そうやで? ミオ……ちゃんは可愛いから人気者や。……ぷぷっ」
ティナが僕に向かって言うが絶対にワザとだよな?
それが証拠にサラは笑いを堪えきれずに後ろを向いて体が震えている。
「今日の2人の昼食は無しだから」
僕が<食糧>のスキルでパンやおにぎりを出せるようになってから料理担当は僕が引き受けている。
スキルレベルを上げるには使い続けるのが早いと教わったのだ。
「ミオちゃん、笑ってごめんねっ!」
「嘘やん! ミオ、許してや!」
手を合わせて僕に謝るサラとティナ。
僕も本気じゃないし2人の慌てた様子が可愛いから許すけれどね。
それにアリシアさんが褒めてくれるのは嬉しいけれど冒険者ギルドの受付には可愛いお姉さんが適任だと思う。
「あの……、僕は女の子じゃなくて男なんですけど」
この先もずっと間違えられると思うと少し落ち込んできた。
「ええっ、本当に男の子なの!? こんなに可愛いのに……。キミって彼女はいるの? 年上の女性ってどう思う? 私なんてどうかな?」
僕が男だと言うと目が輝き出し畳みかけるように質問される。
(いや、どう思うって聞かれても困るんだけど)
年上の女性も素敵だと思うけれど子供に何を言っているんだ?
でも面白そうなので質問に答えてみる。
「今は10歳で彼女なんていませんよ。年上の女性って包容力があって素敵だと思います。お姉さんのことは可愛いから好きです」
日本人の頃から彼女なんていなかったよ。
自分で言ってて悲しくなってくる……。
「よしっ、決めたわ! 私はキミのお嫁さんになるよ!」
おいっ、ちょっと待て。
リーディエルに来て10日も経たないうちに嫁候補が2人もできました。
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