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第20話 天然娘の登場

「お前ら3人とも俺たちが性奴隷として飼ってやろう」


 下卑(げび)た顔で笑うジャコとその仲間たち。

 3人って僕も性奴隷の1人に入ってるんかい!


「私たちの体はそんなに安くないわよ?」

「あんたらの汚いモノなんか全部切り落としたるっ!」


 ジャコたちを(にら)みながら僕を(かば)うように前へ出るサラとティナ。

 今の僕のスキルでは2人の役に立てないことが悔しい!

 それでもこのまま戦闘が始まれば格下のサラとティナに勝利は無い。

 どう切り抜けようか悩んでいると野次馬の中から声が聞こえる。


「そのお嬢ちゃんは間違ってない。私が見ても劣化回復薬」


 声がする方を振り向くと1人の少女が僕たちを見ていた。

 背格好は僕より少し高いくらいだけれど頭にはウサギの耳が生えている。


「戦うなら私も参加する。お前たち、死んでもいいならかかって来る?」


 武器も抜かずに抑揚(よくよう)の無い声でジャコたちを睨む少女。

 正直なところ少女が1人増えても現状が変わると思えない。


(この少女は何者なんだ? 相手が強いってわからないのかな?)


 僕が呆気(あっけ)に取られていると野次馬たちがざわざわと騒ぎ出す。


「あれってBランク冒険者のフララじゃないのか?」

「ああ、そうだ! 数日前にも1人で脅威度Bの魔物を倒したと聞いたぞ」


 まさかこんな少女がBランクの冒険者なのか!?

 その声にサラとティナも少女の方を振り向く。


「えっ、フララさん!?」

「ホンマにフララ姉ちゃんやん!」


 サラとティナが少女に声をかけると無表情のまま小さく手を振る少女。

 フララと呼ばれる少女の登場でジャコたちの表情から余裕が消える。


「おい、ジャコ。あの女を相手にするのはマズい」

「あのガキが深紅の双剣か……」


 見た目はチビッ子なのにジャコたちが全員青い顔をしている姿を見ればフララの実力は相当なものだろう。


「どうする? 私も忙しいから10秒で決めて。いーち、にーい……」

「くそっ、覚えてろっ!」


 フララさんが秒読みを開始するとジャコは捨て台詞を吐いて仲間たちと逃げ出した。

 露店にあった劣化回復薬はそのまま放置しているが、あんな奴らが作った回復薬なんて怖くて使えない。

 その証拠に手に取ろうとする者はいなかった。





「あの、助けてくれてありがとうございました」


 少女にペコリと頭を下げてお礼を伝えると驚いて僕を見る。


 光を浴びて輝く真っ白な内巻きのショートヘアに宝石のような赤い瞳。

 サラより若干低い身長で見た感じはコスプレした中学生にも見える。

 けれど魔物の牙や角で豪華に装飾された革鎧は強者の証だろう。

 腰には少女に似合わないサイズの2本の剣を下げていた。


「この子可愛い。私の物にしていい?」


 ちょっと待て。

 僕の後ろから抱きついてくるフララさんを振り解いて、頭に軽めの手刀を叩き込むと手で頭を押さえながら「むぅ」と可愛い悲鳴をあげる。

 そこへサラとティナがやって来た。


「フララさん、ありがとう!」

「フララ姉ちゃん、助かったわ!」

「大丈夫。このお嬢ちゃんの言うことは間違ってない」


 僕はお嬢ちゃんじゃ無いんだけどなと思いながらサラとティナに話を聞くとフララさんは2人が住んでいた村の出身で初めてBランクに到達した英雄らしい。


「ところでフララさんは、どうしてこの街に?」

「呼ばれて帰って来たところ。このお嬢ちゃんは何者? 2人の隠し子?」


 思わずズッコケそうになる。

 このフララさんってかなりの天然なのかヤバい気がしてきた。


「ち、違いますよっ!」

「うちらはまだ男も知らんっての!……あ」


 サラもティナも何を言ってるんだか。

 自分で叫んでおいて周囲の視線を感じたのか顔が真っ赤だ。


「ミオちゃんは私たちが事件を解決した時に訳があって預かっているんです」


 サラの言葉に何となく寂しくなる。

 隷属(れいぞく)の首輪が外れるまで一緒だけれどその後はどうなるんだろう。

 2人と一緒に生活するのは楽しいけれど僕がいることで2人の邪魔になるなら一緒にはいられない。


(迷惑をかける前に街を出て静かに暮らすのも悪くないかな……)


 楽しそうに話している3人を見てそう思う。

 しばらくすると僕の方を見て何かを言い出そうとするフララさん。


「このお嬢ちゃんって人間――むぐぐ」


 最後まで言い終わらないうちにサラとティナに口元を押さえられる。

 こんな道の真ん中で何を言い出すんだ、この人は。


「あの……、お話し中に悪いけど僕は男ですよ?」


 さっきからずっと気になってたんだよね。

 僕が男だと説明すると驚いた顔で僕を見つめるフララさん。

 何を思ったのか僕の目の前に立つと「バンザイする」と言われたのでその通りに腕を空へ向かってピンと上げる。



 ――ズルッ!



 フララさんが僕の前にしゃがみ込んでナニかを見ている。


「ふむ、確かに男の子。ごめんなさい」


 そう言って腕を上げたままの僕に向かってペコリと頭を下げるフララさん。


「……」


 時間が止まって見える。

 サラやティナだけでなく大勢の人が往来している真ん中で僕は下着を足元まで下ろされたらしい。

 さっきまで忙しそうに歩いていた人たちが一斉に僕を見て固まっていた。

 風でナニかが揺れて少し肌寒い。


「うわわっ!?」


 僕が叫び声をあげると時間が動き出す。


「フララ姉ちゃん、何をしてるん!?」

「ミオちゃん、見えてるってば!」


 サラとティナも叫びながらしっかり凝視してる。

 周辺からも色々な声が聞こえてきた。


「きゃぁぁーーっ!?」

「うおっ!」

「ちっさーい!」


 最後の奴、ちょっと出て来い。

 自称10歳の子供に何を期待してるんだよ!


「な、何をするんですか、フララさん!?」


 下着をはきながらフララさんに抗議する。


「男か女の確認?」


 頭をちょこんと(かたむ)けて「それが何か?」みたいな顔で僕を見るフララさん。

 見た目は少女だけれど絶対にかかわっちゃダメな人だった。


「うぅ、もうお嫁に……じゃなくてお婿にいけない」


 泣き真似をすると今度はサラが僕に抱きついてくる。


「そんなこと言わないで? その時は私が責任取るから……ね?」

「……はい?」


 まさかサラにそう言われると思わなかった。

 そんな僕たちのやり取りを見て大笑いしているティナ。

 2人の食事を管理しているのは僕だけということを忘れているらしい。

 今度、ティナのおにぎりには塩の代わりにたっぷり砂糖を入れよう。


「まいどありー!」


 騒ぎのあとは近くの露店で目的の回復薬を2本購入する。

 こっちは銅貨9枚で本物の低級回復薬だ。


「お腹空いた」

「フララ姉ちゃん、お腹減ってるんか?」

「それじゃ肉串を少し買って宿屋に戻ろうか?」


 肉串の言葉を聞いて喜ぶフララさん。

 見た目は可愛い少女なのにBランク冒険者って凄いよな。


(かなり天然っぽいけど)


最後までお読みいただきありがとうございます。

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