第19話 劣化した回復薬
「この露店みたいやで!」
お腹いっぱいになった僕たちは街へ買い出しに来た。
もちろん肉串ではなく戦闘で使い切った回復薬の補充のためだ。
サラには留守番しててもいいって言われたけれど、どんな回復薬が売っているのか見たくて一緒に連れて来てもらった。
「他の露店でも回復薬が売ってたけど中身が違うの?」
ゲームなんかだと同じ品質の回復薬ならどこの街で買っても同じ性能だけれどリーディエルでは違うのかもしれない。
「ええ、もちろん。作る人の錬金スキルによって性能はかなり違うんだよ? まぁ値段も上がっちゃうんだけどね」
作り手のスキルによって性能も値段も変わってくるのか。
ティナがこの店に決めたのも何かお目当てがあるのか聞いてみた。
「ダンジョンの帰りに回復薬のことを話してたらこの店を勧められてん。確かに値段も安いし賑わってるから穴場かもしれんわ」
回復薬には低級、中級、上級と3種類あって効能と値段が違う。
通常の冒険者は低級か中級を、高ランクの冒険者になると高級回復薬を使うこともあるらしい。
中にはもっと凄い回復薬が存在するらしいけれど一般には出回らないとか。
「お店にもよるけど高級回復薬だと金貨10枚以上はするんだよ?」
「うちらもそんな回復薬を使ってみたいけどかなり先の話や」
「今の私たちには低級回復薬で十分だしね」
ちなみに低級回復薬は銀貨1枚、中級回復薬は金貨1枚だと教えてもらった。
怪我をしないのが1番だけれど冒険者だしな。
「回復魔法を使ったりしないの?」
魔法が存在しているんだから使えないとも思えない。
「うーん、回復魔法はあるけど使える人が少ないの」
「そやから普通の冒険者は回復薬を使うねん」
だから回復薬が安いこのお店が繁盛してるのか。
サラやティナの話を聞きながら棚に並んでいる回復薬を眺めていると店主が声をかけてくる。
「お嬢ちゃん、いらっしゃい。うちの回復薬は他の店より安いよ!」
「銅貨8枚かぁ。確かに安いけど中身は大丈夫なんか?」
ティナが店主と話をしている間に回復薬を<鑑定>してみる。
【 回復薬:劣化 】
低級回復薬に水8割を混ぜたもの。
すり傷程度の回復は可能。
(あれ? 買うのは低級回復薬だって言ってたよな?)
たまたまこの回復薬がそうだったのかもしれない。
棚に並んでいる他の回復薬を<鑑定>すると劣化の文字が見えて中には腐敗と書いてある回復薬まであった。
さすがに気になって隣のサラに小声で聞いてみる。
(サラ、劣化した回復薬ってなに?)
(失敗作の回復薬だけどそれがどうしたの?)
(えっと、ティナが買おうとしてる回復薬に劣化の表示があるんだ。この店に並んでる他の回復薬にも劣化の文字が見えてるよ?)
(ええっ!?)
サラに伝えると驚いた顔で僕を見る。
「ミオちゃん、それって本当に見えてるの?」
「うん、間違いないよ」
僕の表情を見て本当だと判断したのかサラがティナを呼び戻した。
「ティナ、ちょっと待って!」
「サラ、どないしたん? この店は安いから2本じゃなくて3本買うん?」
「店主に聞きたいんですけどこれって低級回復薬ですよね? 劣化した回復薬とは違いますよね?」
サラが店主に尋ねると横で回復薬を見ていた冒険者たちの手が止まる。
他にも買った直後の冒険者も足を止めてサラに注目していた。
「お、お客さん、な、何を!? こ、ここに置いてあるのは低級から中級の回復薬で劣化した回復薬なんて扱ってませんよ!?」
「店主はそう言うけどミオちゃんはどう?」
「ううん、間違いなく劣化した回復薬だよ。水を8割混ぜて薄めてあるし」
僕が割合まで伝えると店主の顔が見る間に赤くなって怒り出す。
「おいっ、クソガキめ! 商売の邪魔をするんじゃねえよ!」
この回復薬を劣化だと認めちゃうんだ。
店主のこの言葉に他の冒険者たちが騒ぎ出す。
「すると俺様が買ったこの回復薬も低級回復薬じゃなく劣化か!?」
「詐欺じゃねぇか! 俺の金を返せよっ!」
「私の回復薬も返品するわ。早くお金返して!」
周囲の冒険者たちの喧騒に追い詰められた店主が誰かに助けを求める。
すると店の奥から数名の男たちが各々武器を手にしてこちらにやって来た。
中でもひときわ大きな体格をした獣人がヤバそうなので<鑑定>してみる。
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名前 :ジャコ(大猩々族)
職業 :Dランク冒険者
スキル:体力増加D、腕力増加C
加護 :森の精霊
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(大猩々ってゴリラのことだよな? しかもDランクってヤバくないか?)
確かサラとティナはFランク冒険者だったはず。
かなり格上の相手だとわかったのかサラとティナの尻尾の毛が逆立っていた。
「おいおい、お嬢ちゃんたち。俺たちの回復薬を詐欺呼ばわりしてそのまま帰れると思うなよ? 今すぐに謝るなら今夜俺たちの相手をするだけで許してやるぜ?」
ゴリラ獣人がそう言うと仲間の奴らも下品に笑い出す。
「サラ、ティナ、ごめんね。僕がこんなことを言ったから……」
「大丈夫よ、ミオちゃん。私もティナもこんな奴らは大嫌いだしね!」
「そうやで? ミオは間違ったことを言ってないんやから気にせんでええよ」
サラとティナが奴らと対峙する。
さすがに街中で武器を振り回すわけにもいかないのでこちらは素手だ。
このまま戦っても勝ち目は無いし何とか回避する方法を考えなきゃ!
「お前たち、怪我程度で済むと思うなよ? 痛めつけて俺たちの奴隷にしてやる」
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