第16話 食糧のスキル
「はぁ……」
宿屋の女性従業員に全裸を見られたことは忘れよう。
気を取り直してスキルの確認作業の続きを始める。
「次は新しく増えた<食糧>だな」
【 食糧:レベルD 】
魔法やスキルと組み合わせることで食糧を創造することが可能。
ただし創造できる食糧はスキルレベルに依存する。
「おっ!?」
説明を読むと食糧を創造できると書いてあった。
確か魔法の<創造>は何かと組み合わせて使うはず。
よくわからないけれど試してみないと始まらない。
「それじゃ今すぐに食べたい唐揚げ弁当で」
創造ってイメージする力が大切だよな。
さっき<収納>に入っていた唐揚げ弁当を思い出す。
白米は炊きたてホカホカで艶がありふっくらしている。
唐揚げは鶏肉にしっかり下味を漬け込んで外はカリッと中身はジューシー。
口直しにはさっぱりした漬物を頭の中にイメージしてみた。
スキルの実験とは言えイメージし過ぎてお腹の音が鳴り止まない。
そして創造魔法を唱えるが……。
「なぜ出ない?」
さっきの<収納>はこんな感じで使えたから間違っていないはず。
もう1度、スキルの説明を読んでみるとスキルレベルに依存と書いてあった。
「レベルが低いと無理っぽいからもう少しシンプルにするか」
今度はお弁当でも定番でシンプルな「のり弁当」をイメージしてみる。
できれば1個くらいオマケで唐揚げを付けてほしいと願ったけれど無理だった。
その後もチキン南蛮弁当や焼き肉弁当にシャケ弁当、カツ丼に親子丼と色々試してみたけれど結果は変わらない。
スーパーで売っている惣菜はどうだろうとコロッケやトンカツもダメ。
「お腹減った……」
スキルを使うために色々な弁当や惣菜をイメージしていたら余計にお腹が減ってきた。
ちなみに麺類も試してみたけれど無理だったのでここでギブアップ。
「どんな食べ物なら大丈夫なんだよ……」
昨日から肉串2本しか食べてないからお腹が減り過ぎて目が回りそうだ。
さっき<収納>にあった唐揚げ弁当は緊急用として残しておきたい。
「弁当じゃなくてもいいから、おにぎりでもパンでも食べさせてくれ!」
僕がそう叫ぶと急に体が熱くなる。
初めての状態異常に驚いて体をペタペタ触って調べるが何ともない。
「もしかして……」
まったく無反応だった自分に活を入れて最後のアレに期待を込める。
コンビニでもお馴染みの三角形の食べ物。
「おにぎりを1個<創造>しますっ!」
唱えた瞬間、さっきと同じように体が少し熱くなってきた。
今まで何も反応がなかった両手に光の粒が集まり僕の知っている形になる。
そして光が消えると手のひらにほのかに温かい1個のおにぎりが乗っていた。
「おおっ、本当に出たっ!?」
本当におにぎりが出たのは嬉しいけれど食べても大丈夫なのか?
さすがに自分で作っておいて食べない訳にはいかない。
美味しそうな匂いに釣られながらも意を決して食べてみる。
「……う、うまいっ!」
海苔は巻いていないがふっくら炊きたてご飯で優しく握られていて噛めば噛むほどお米の甘味が増してくる。
まさか異世界でおにぎりが食べられるとは思わなかった。
「おにぎりってこんなに美味しかったんだな」
あまりの美味しさと懐かしさにあっと言う間に完食する。
それでもお腹の音は鳴り止まないので同じように<創造>して結局4個も平らげてしまった。
「ふぅ、久しぶりにお腹いっぱい食べた気がするよ」
今回、僕が作ったおにぎりは塩のおにぎりのみ。
途中で鮭や昆布が入ったおにぎりを試したけれど無理だった。
ただしスキルレベルが上がれば他の具材が入ったおにぎりを食べられる可能性があるので楽しみになってきたよ。
「あれ、そう言えば塩は出せるんだ?」
おにぎりに夢中で忘れていたけれど僕がイメージしたのは「塩」のおにぎりだ。
調味料の存在を忘れていたのでさっそく試してみる。
「やっぱり調味料と言えば基本の『さしすせそ』だよな」
さ、砂糖。
し、塩。
す、酢。
せ、醤油。
そ、味噌。
この順番で入れると美味しくなるらしいけれど個人的な好みもあると思うから僕は何も言うまい。
手のひらへ砂糖から順番に<創造>してみる。
「うーむ、全部できた」
最後の味噌を口に放り込んで他の食料を考える。
調味料が可能ならマヨネーズやケチャップはどうなんだろう。
他にも焼き肉のタレとか料理の素とかも作れたら嬉しい。
「やっぱり、さすがに無理か……」
色々と試してみたけれど基本以外は無理だった。
けれどスキルレベルが上がれば作れるかもしれないから今後も試していこう。
「あとは僕が1回の<創造>で作り出せる量だな」
検証しないとわからないけれど一定量の調味料が出せるならこのスキルだけで生活していけそうな気がする。
「あれ、おにぎりが作れるならパンはどうなんだ?」
お弁当の失敗を繰り返さないために最初からシンプルなパンをイメージする。
そして<創造>を唱えるとおにぎりの時と同じように体が熱く感じた。
「おおっ、パンも作れるんだ!」
僕の手の上に乗っていたのは食パンとロールパン。
割ってみるとどちらもふわふわで食べると僕がいつもスーパーで買っていたパンの味だった。
しかもロールパンの中にはマーガリンまで入っている。
まさかと思って食パンの上にもマーガリンを<創造>したら塗られていた。
「このスキルはリーディエルで生活するのに欠かせないな」
他にも色々と試してみたいことはあるけれど僕のお腹がもたない。
結局、実験でおにぎり5個にパンを3個食べてお腹がいっぱいになってしまった。
「組み合わせるととんでもないスキルだよ……」
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