第14話 見られた!?
「ティナ、木桶を借りてきたわよ」
サラが宿屋の主人から水の入った木桶を借りて戻って来る。
見た感じ木でできた普通のバケツみたい。
「ありがとう。それじゃ先に使わせてもらうで?」
何をするんだろうと見ていたらティナが躊躇なく服を脱ぎだした。
革鎧の胸当て部分を外していく姿を見て目が点になる僕。
「ちょ、ティナってば何をしてるの!?」
「何って体を拭くだけやで? 汗をかいたままやと気持ち悪いやん?」
僕が慌てて声をかけるけれど「それが?」と首を傾げながら次はシャツを脱ぎ上半身が丸見えになっていた。
それを止めてもらおうとサラを見る。
「ミオちゃんも後で拭いてあげるからね」
どうも今の状況を変に思っているのは僕だけらしい。
「それなら2人でお風呂に行っておいでよ。僕は留守番してるから」
「はぁ? 風呂なんて貴族の屋敷くらいしか付いてないで?」
ティナは衣服を脱ぎ終わって下着1枚で仁王立ちしていた。
目のやり場に困り横を向くが大きな胸がしっかりと目に焼き付いている。
(リーディエルではこれが普通か……ってこのままじゃマズい!)
ひとまず2人が体を拭き終わるまで廊下で待っていよう。
慌てて部屋を出ようとすると背後からティナの手が僕の首に回される。
「ははぁ、もしかして照れてるんか?」
振り向かなくてもティナがどんな表情なのかわかるよ。
僕の背中にわざと押し付けられる2つの柔らかくて温かい物が妙に生々しい。
「先に聞くけどミオっていくつなんや?」
あれ、僕っていくつなんだろう?
さすがに25歳とは言えないし。
アラミオン様と出会った時に湧き水で見た自分の姿を思い出す。
「……10歳です」
「へぇ、ミオは10歳なんや?」
首輪のせいでサラに嘘は付けないけれどティナなら問題無い。
僕の年齢を聞いたティナは急に色気のある声で話しかけてくる。
「それじゃ、お姉ちゃんが色々と教えて――」
――パコンッ!
ティナが僕の耳元で囁いていると軽快な音が聞こえた。
何が起きたのか思わず振り向くとサラが怖い顔で立っている。
手には空の木桶を縦に持ってティナの頭に落とした音だったらしい。
「ティナ、子供に何を教えてるのよっ!?」
「いったーい! 何って男女の関係を……」
そこまで言うとサラは表情を変えずに木桶を持ち上げる。
「じょ、冗談やん! サラは全部見て知ってるのにズルいわ!」
「あ、あれはミオちゃんが……、拭いてあげようとして」
ティナに反撃されて急に歯切れが悪くなるサラ。
「えっと、サラ? 全部見たって……?」
「……最初はミオちゃんが女の子だと思ってたの。体が汚れてたから綺麗に拭いてあげようとして……その」
サラに言われて自分が目覚めた時のことを思い出す。
確かに上半身は裸だったけれど男だし別に変ではない。
下半身にもちゃんとトランクスに似た下着をはいていた。
問題があるとするなら僕が知らない下着だったこと。
サラを見ると恥ずかしそうに俯きながら僕の方をチラチラ見ている。
それだけ挙動不審になれば誰だってわかるよ。
「僕の……を、見たんだね?」
「えっと、あの、はい……」
小さく頷くサラ。
「でもちゃんと目を閉じて……、ソレも拭いたから大丈夫だと」
「あっ、アレも拭いてくれたんだ……」
僕の中身はともかく見た目は子供だしサラに悪気があったわけでもない。
汚れた体を拭いて下着まではかせてくれたことに感謝しないと。
ただ異世界でケモ耳少女に触られたのか……、うん。
「そやから、うちとサラとミオの3人で大人の階段を――」
――ゴスッ!
ティナが最後まで言い終わらないうちに重くて鈍い音が部屋中に響いた。
サラを見ると鬼の形相になっていたよ。
教訓、サラが怒ったらもの凄く怖い。
「えっと、ティナは大丈夫かな?」
僕の隣ではティナが涙目になっておでこを押さえている。
よく見ると少し赤くなってるし痛そうだけれど仕方ないよね。
ティナに同情の余地はないけれど胸くらいは隠してほしい。
(けっこう大きいよな……)
子供の体に転生してから性欲はかなり落ちている。
ティナを見ても……変化は見られない。
ただ中身は25歳の男なので凝視しないように鉄の心で抑え込んでいるのだ。
「ティナなら気にしなくていいよ。次はミオちゃんの体を拭いてあげるから上着を脱いでくれるかな?」
自分でやるから大丈夫だと言う前に隷属の首輪がサラの言葉に反応して素直に上着を脱いでしまう。
本当にこの首輪の強制力は怖すぎる。
「ミオちゃん、傷口は大丈夫? 痛かったら言ってね」
「うん、今はぜんぜん痛くないから平気だよ」
「あれだけの大怪我だったのに2日も経たずに治るなんて……。それに肩口の痣も不思議な模様に見えるよね」
サラがトンガンに襲われた時、僕が庇って意識をなくすほどの大怪我をした。
それなのに今では少し痛む程度で日常生活に支障はない。
「次は前を拭いてあげるからこっちを向いてくれる?」
「あ、いや、前は自分で拭けるから……大丈夫」
首輪の力に逆らえずサラの方を向くけれど何とか留まった。
そんな僕たちの様子をティナがベッドに寝転がりながらニヤニヤしていた。
「そう? それじゃ私も体を拭いちゃうね」
そう言ってティナと同じように脱ぎだすサラ。
少し勿体ない気もしたけれど親切に甘えて覗き見するわけにはいかない。
……まぁ、結果的にはティナと同じくらい大きかった。
「そろそろ寝るで?」
体も拭き終わってさっぱりしたから後は寝るだけ。
サラとティナも寝る準備を始める。
「ミオちゃん、こっちにおいで」
僕は奴隷だし床でも平気だと言ったけれど強引にベッドへ引っ張り込まれる。
しかもパジャマなんてお洒落な服も無くサラもティナも下着姿で上半身は何も身に着けていない。
(子供の姿でよかった!)
異世界で美少女たちの胸を拝める……じゃなくて一緒に眠れるなんて!
心の中で思わずガッツポーズをしながら今までのことを思い出す。
アラミオン様と出会って奴隷の仲買人に捕まって奴隷商人に売られてサラたちに助けられて今に至る。
(僕の人生はどうなっていくんだろう……)
そんなことを考えていると2人の静かな寝息が聞こえてくる。
僕も目を閉じると一気に眠気がやってきてそのまま意識を手放した。
――ピンポーン。
《スキルが使えるようになりました》
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