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第13話 110万枚の価値

「サラ、買ってきたで」


 ティナが飲物を買って部屋へ戻ってきた。


「ありがとう、ティナ」


 この宿屋は1階部分が受付と食堂になっていて宿泊者は少し安い料金で食事ができるようになっている。

 部屋への持ち込みも可能で3人分の飲物を買ってきてくれたのだ。


「こっちはミオの水やで」


 僕の前には水が入った木のコップが置かれている。

 サラとティナはエールと呼ばれる冒険者御用達(ごようたし)のアルコールだ。

 一応、僕のエールも聞かれたけれど子供の体なので今回は遠慮しておいた。


(日本人だった頃のビールが懐かしいよ)


 もう2度と飲めないと思うと残念だけれどサラやティナと出会えた方が嬉しい。

 これも僕の運命だと思ってビールは諦めよう。


 そんなことを考えている間にサラが肉串をお皿に取り分けてくれる。

 1本の串には3個の肉が刺さっていて焼き鳥のももに似ている。

 こんな美味しそうな物を目の前にするとお腹の音が止まらない。


「さぁ、どうぞ!」


 その声を合図に肉串にかぶりつく。

 見た感じ硬そうな肉は歯に少し力を入れると噛み切れるほど柔らかい。

 そして肉には下味が付いていて噛むと肉汁と旨味が口いっぱいに広がる。


「どう、ミオちゃん? 美味しい?」

「うんっ、凄く美味しいよっ!」

「しっかり食べて大きくなるんやで!」


 1人2本ずつの肉串だけれどアッと言う間に平らげてしまった。

 リーディエルで初めての食事だったのに味わって食べればよかったよ。


「やっぱりかぎ爪の鳥(クロウバード)の肉はうまいな!」

「ええ、本当にね」


 やっぱりコレって魔物の肉なんだ。

 2人の会話を聞いて口の中に残っていた小さな欠片を飲み込むのを躊躇(ちゅうちょ)したけれどリーディエルに住むなら慣れないとな。

 それに本当に美味しいし。


 サラもティナも高い方の肉串を食べ終わり、エールを飲みながらおまけでもらった安い肉串をつまみに話をしている。


「2人に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「私たちの知ってることなら教えてあげるよ?」

「うちらの体に興味があるなら教えたるで?」


 アルコールが入って少し酔ったのかエロ猫人族になっているティナ。

 せめて僕が大人になってから……とは言えないので無視。


「この世界のお金ってどんな種類があるの?」

「えっと1番価値が低いのは鉄貨で次は銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨の6種類だよ」

「この安い肉串は1本で鉄貨5枚や」


 なるほど、全部で6種類の貨幣が流通しているのか。

 鉄貨1枚が元世界の貨幣価値でいくらになるのか今は比べる物がないから今後の課題かな。

 そのうち商店で何かを買う時にわかるだろう。

 ここで本題を2人に投げかける。


「110万枚の金貨ってどれくらいかわかる?」

「金貨か? うちらもそんなに見てないし桁が大きすぎてわかりにくいけど、たぶん街で1番大きな屋敷を数件買ってもお釣りがくるんちゃうか?」

「確か数ヶ月ほど前にAランク冒険者チームが合同でドラゴンを討伐したって話を聞いたけど、その時の角が1本金貨500枚って言ってたよ。1体丸ごとなら5000枚以上になるのかも」

「角1本でそんな金額かいな!? うちらなんて1回の仕事で銀貨数枚やで」

「ミオちゃん、それがどうしたの?」


 アルコールを飲みながら僕に尋ねるサラとティナ。

 何だかイヤな展開が浮かぶけれど理由を伝える。


「僕が奴隷市場で落札された値段が金貨110万枚だったから知りたくて」

「ブフゥゥゥーーッッ!」

「ええぇぇっっ!?」


 ティナが口の中のアルコールを全部吹き出した。

 サラも最後の1個が残った肉串を床に落として固まっている。


「……」


 やっぱりこの展開になりましたか。

 ティナが吹き出したアルコールで僕の顔はずぶ濡れだ。

 まあ、一部の人にはご褒美だと言われそうだけれど。


「な、なんやって? ミオ、もう1回言ってもらえるか?」


 サラに顔を拭いてもらいながら同じ金額を伝えると唖然とする2人。


「ミオちゃん、110枚の聞き間違いじゃなくて?」

「うん。聞き間違いじゃなく110万枚で落札されたんだよ」


 僕の言葉にティナの首がギギッと音が聞こえそうな感じでサラへ向く。


「サ、サラ、どないする? ドラゴン数百匹の価値がある子供がうちらと一緒に銅貨2枚の肉串を食べてるんやけど……」

「と、とりあえず近いうちに王国詰所へ聞きに行こうか……」

「あかん、一気に酔いが醒めてしもうた」


 さすがに110万枚の金貨はかなりのインパクトだったらしい。

 これで2人の態度が変わらなきゃいいけれど信用するしかないか。


「寝る前に宿の主人から木桶を借りてくるね」


 そう言ってサラが部屋を後にする。

 今度は何が始まるのやら。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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