9:一発面談2
三つ巴状態で不審人物をみつけたかのようにお互いの顔をみるのは、城の入り口にあたる扉前で行われていた。一般市民が城へ訪れるなんて事はまず無いにもかかわらず、早朝から三人もの男がこの場所に集っていたのだ。
自分の事を棚に置いておいて、目の前の二人を不審者と考えるのは当然の流れだった。
「えっと、その、おはようございます皆さん」
そんな気まずい空気の中、勇気を振り絞って声を出したのはどこか冴えない小柄な男だった。眼鏡をかけ、真っ黒なリクルートカバン(リュックタイプ)を背負ったまま、手ぶりをつけながらそのまま挨拶を試みた。
「そ、そのっ! 皆さんは何故こんな場所へ?」
各々が自らの事情を棚に上げて、感じていた事を訪ねる男。それに答えたのは少し歳のいった筋肉質な男だった。
「尋ねる前に、お前こそ目的を言え。出来ないなら、立ち去れ」
「同感だ」
男の言葉に頷いてみせると、白色の制服に身を纏った男が語り出す。
「まぁこの状況下で口火を先に切られるとは思わなかったけどな。礼儀がやや足りなかったな? 俺は招来 蒋、蒋って漢字は将軍の将にクサカンムリつけた方な、北区の高校三年だ」
「あ、えっと、学生さん? あれ、もう夏休みかな?」
「おいオッサン、質問より」
指摘に気づき、思わず深く御免なさいをしてから言い直す。
「ご、ごめんよ。私は野村 実、電力管理の仕事をしていた、んだ」
「ん?」
野村の言葉にひっかかり、睨みを聞かせた招来へ言い直すように野村は言葉を選ぶ。
「その、三日前に国王が変わっただろう? その際に人事異動があってね……今は北の電力塔での弓師さ」
「へぇ? オッサン見かけによらず弓ひけるんだな」
そんな突っ込みに、野村は顔をかいて言いにくそうに言葉を発する。
「はは、それが弓はサッパリなんだよ私は。数打つことが重要だけど、そんなに早くも引けなければ命中率も中の下といったとこなんだ……」
「ふむ、お前なら鍛錬すればそこそこ良い線いくと俺は思うがな」
そんな野村の言葉をフォローするかのように最後の男がしゃべり出す。
「俺の名は影身 匠だ。お前さん達にわかりやすく言うところのソルジャーだ」
「へぇ! この国にまだソルジャーが居たんだな、でも名前は聞いたこと無いが?」
キリッと胡散臭そうに影身を睨んで見せる招来だが、肩をすくめ影身は答えた。
「そりゃそうさ。俺は二流だからな、俺が魔物を倒す姿なんかこれっぽっちも想像できないね。だが」
三つ巴状態だったはずなのに、野村と招来の視線から影身の体が消え去る。二人が周囲を探ろうとした時には、野村の背後に回り込んでいた影身が声をかけていた。
「これくらいの事は出来る、出来なきゃあの世界じゃ死ぬ。つまり、そう言う事だ」
「へへ、影身のオッサンやるねぇ……」
「な、何が起こったんだい?」
「理屈はわからんが、このオッサンはつまるところ魔物相手に殺されないだけの鍛錬はつんでいるって事さ」
そんな各々が軽い自己紹介を終えたが、肝心の問題が解消されないままである。
「そ、それでそんな学生君とソルジャーさんが何故、こんな場所に?」
再び、自分がなぜここに来たのかという理由を棚上げして問いだす野村だったが、招来の突っ込みをまたずとして玄関に備え付けられていたインターフォンから声が届いた。
「あのー、取り合えず入ってください」
男性の声(守が対応することにした)が聞こえ、三人は一瞬身構えつつもガチャリとオートロックが外れた玄関から城の中へと踏み入れるのだった。




