21:行動開始1
「では、これより再建計画を始める」
守が言うと、皆パチパチパチと次のセリフを待つ。
「コホン、さっそくだが資料には目を通してくれているよな?」
それぞれが頷く。
「まぁ見ての通り、想定だが二十日を切った。資源が尽きてからでは遅いから、単純計算十日で対策を打たなきゃ俺たちは終わりってわけだ」
「……ねぇ蒋兄、これ本当なの?」
「本当も嘘もねぇよ、だからこその俺たちだろうに」
「……重すぎるわよ」
兄の前では阿保っぽくなる千愛も、数字という現実を前に逃避めいた感情を抱いてしまう。
「計画も行動も込みで今この瞬間から三日だ、更に二日で何かを掴んで残りの五日で流れを掴む。と、言うだけなら簡単なんだが、残念ながら俺には策が思いつかない」
「ごめん、私もそんなスパンでの国策なんて思いつかなかった……」
相変わらず寝不足なのか目の下にたっぷりと黒い隈をため込んでいるトモエも項垂れる。だが、招来がさっそく案を提示する。
「そうだな、いくつか考えはある。水と木材が当面の問題だよな? 食料を持たせて国内の水と木材を消費しないようにしたら良いって考え方ができる訳だ」
「ふむ、国外へ国民を連れ出すか……そこで俺の出番というわけか?」
「ああ、ソルジャーである影身がいれば社会科見学とでも言えば学生連中は、技術交流といえば社会で暇している奴らはホイホイついてくるだろう。国内にいて平和ボケした連中なら特にだ」
「ええ、でも私はそんなこと突然言われても国外に出たいと全く思わないよ?」
「まぁそっちの方が普通の反応だよな。だが、特典がデカければどうする? 例えば、補助金で一人頭100万出るとか」
「……ちょっと揺らぐわね、それは」
「金か。まぁ、確かに護衛がしっかりしていれば美味しすぎるネタだな。だが、俺の腕をそこまで買われても困るんだがな」
「まぁこれは案の一つだ。要するに国内の資源が減る速度を減らす方法だ。だが根本解決には繋がらない」
「あっ! でもそれは布石なのよね? ちゃんと国外の資源を持ち帰れれば補充も出来る、と」
「……ああ、そうだな。まぁそれとは別に純粋に生産部隊を用意する必要がある、これが作戦のメインになる」
「生産部隊? それは、一般の人に国外で資源を確保してもらうって事? さっきの貿易系の話ならともかく、それこそ本当に誰もやらないと思うわよ?」
「やらない、ね? 部隊って言い方をしたのには訳がある、聞きたいか?」
「いえ、まさか貴方!?」
「ヒュゥ、流石姫様。千愛もあれくらい頭回るようにならなきゃな?」
「ばっ、私だってわかるわよ!」
「んん? そうか、なら説明してみなよ」
「私から言わせるなんて、鬼畜なお兄ちゃんも素敵……っ、生産部隊、いわゆる強制的な徴収をしましょう、という事よね? 対象や、そんな無茶をどこで通すのかまではビジョンがみえないけども」
千愛が答えると、70点くらいかなと呟きつつ蒋が補足に入る。
「技術交流や社会科見学という名の遠征隊は志願兵、それを蹴った残りの中で使えない奴らは徴兵令って感じだな。勿論、ソルジャーがつくのは志願兵側のみだ。理由は」
「先を見越してる、という訳か」
「ん、そういうこった。だからこそ、影身のオッサンには頑張ってほしいところだけどな?」
「……努力しよう」
要するに、人の命を駒にする考え方をとると蒋は言っているのだ。トモエはそんな殺生な、と人情を抱くもその一手で状況が少しでも動く事が理解出来る。
動かして尽きる命か、動かずして尽きる命か。
「ところで、野村の姿が見えないが?」
ここにきて円卓を囲んでいた蒋がやっと居ない野村に対しての突っ込みを入れる。
「ああ、アイツは国政の話に混ぜるつもりはない。だが、今出している案をまとめたらアイツに丸投げするつもりだ」
「「「ハァ?!」」」
蒋、千愛、トモエがそれぞれ素っ頓狂な声を上げる。
「あいつは『決断者』だからな。変に意識するよりも、案だけで提示して行動するか、踏みとどまるか。それを見ようと思う」
「……なるほど。重要な行動を伴うときに、最終的に決めるのは責任者ってわけか。その責任者の中でも、豪快かつ目的を見極めた決断が出来るキャリアがある眼鏡にさせるってか」
「まぁ、そういう事だ。本来なら俺が全ての決断を行うべきなんだが、アイツの経験を信じたほうが今は良いと判断した」
「ハハッ、それも大いなる決断だよな! まっ、行動用の資料を用意したらさっそく動くか。俺と千愛で北区から時計回りに全学校を回ってやるよ。暇してそうな会社にアタックするのは野村に任せるとして、影身のオッサンは資料のルートとか準備を行ってくれ。くそっ、よくよく考えたら通信教育を千愛に受けさせる暇がねぇじゃねぇか!」
文句をいいつつも、やる気をみせる蒋に千愛も微笑んで対応する。
「良いの、落ち着いたらゆっくり取り戻すから。どうせ大学の単位も既に半分はとっちゃってるし」
さりげなく高校二年にもかかわらず、大学の授業単位持ちをアピールする千愛もまた天才の一人であった。




