20:案内
「それじゃっ、私が皆さんを案内しまっす!」
ノリノリでそう告げたのはトコロテンである。一足先に入居、そして探検済の城内は既に庭レベルである。
「ねぇ、トコロテンちゃんって本名何ていうの?」
「……んん?」
実熊が当然のように確認する。健康診断を終え、一階玄関まで戻ってきたところで五人の視線をうけつつ、アレ? とトコロテンは後ずさる。
「あの、私はトコロテンですが……」
まさか、まさかとは思っていたのだ。
「えー、でもトコロテンってでも……」
ああ、私もこの世界で既に数日過ごした身なのだ。やけに、人名が料理名に使われてたりするな、とか文明レベルは同じだけど魔法の代わりにソルジャーとかいう強化人間が居るくらいの誤差かな、とか。
それくらいの誤差だとは思っていた。
だが。
「あっ! もしかして好きな食べ物の名前で呼ぶのが流行ってたりするのかな!? 私は沢庵好きだからタクワンって呼んでも良いよ!」
「あがぁぁぁ! やっぱりかーーー!」
頭を抱えて座り込んでしまう。まさか自分の名前も食べ物の名前になっているとはと。ちなみにタクワンは男の人の名前だから、実熊には似合わないと突っ込みを入れたトコロテンだがシュン、と悲しそうにしてしまう実熊である。
「そうね、アイツらみたいにトコロさんでもテンさんでも、好きに呼んで頂戴」
「それじゃテンコ、お前は一体何者なんだ?」
「魔法使いの女の子(三十四)だけど何か文句ある!?」
尋ねた蒋に喧嘩をうるように腕まくりをしてみせるが、実が仲裁に入る。
「まぁまぁ、早く案内聞きたいなぁ。トコロテンさんの案内、聞きたいなぁ」
「……これが妻子持ちの余裕かっ!?」
「ええ?」
ちなみに野村の奥さんは数日遅れで入居するらしい。どうも、挨拶回りや引っ越しの手続きに手間取っているらしい。
「はいちゅうもーく! これはエレベータですっ!(ドドン)」
どこからともなくドドン、という太鼓の音が聞こえるが誰も突っ込みを入れずにそれを見る。
「この棒切れしかないようにみえるこの空間ですがっ、実は棒にボタンがついてるのでぃす!」
中に入って、ボタンを押して見せると下から円形のガラス板が天井向かって伸びる。はいっ! これで地下にある居住区に移動するのです!」
実熊だけ暖かい拍手で説明を受け入れるも、他の四人は知っているけどあきらめ顔で話が終わるのを待っていた。確かに初見でこのエレベータを見た時はオオ、となった。だが、既に荷物は各自の部屋に入れるために一度地下へ降りているのだ。
にもかかわらず、最初から説明を始めようとするチビッ子に大人たちは付き合ってあげることにしたのであった。
「地下一階と、二階は貯蔵庫で、えっとえっと、地下二階にはキッチンエリアがあるよ! ああ、その円の上に立ったり物があるとガラス板下がっちゃうから、エレベータ動かないから! はみ出さないでね!」
「む、すまん」
匠は謝ると、ほんの僅か前に詰めた。
「それで、皆の居住区、生活エリアが地下三階になりまーす! 北区、玄武エリアを招来さん達に、西区、白虎エリアを野村さん達に、東区の青龍エリアを影身さんに、それぞれお部屋を用意してます! ちなみに、私は南区のサウスエリアにお部屋があります!」
「「ちょっ」」
招来家の二人が思わず突っ込みをいれようと声を漏らすも、ギリギリのところで留まる。そこは南区の朱雀だろう? と。言いたかった、言いたかったがよくぞ留まったと二人は熱い視線を交わす。
「で、地下四階は武道エリアだそうです!」
招来と影身は ん? と違和感を覚える。そもそもこの国に地下を活かしたエリアが存在したのも驚きなのだが、武道エリアとはどういう事だろうと。ソルジャーも居ない、このような国に何故そんな施設が?
「後は、このお城の上から守の部屋とトモエの部屋、よくわかんない空間があって、その下がプライベートルーム? とかで、更に下が客間、次が私たちがさっきいたイベント広場で、その下が共用エリアの一階だって!」
だって! とかカンペをみながら説明するトコロテンは更に続ける。
「後、お風呂は夫婦風呂が一番上にあって……ケッ。三階に男風呂、女風呂があるって。二階のお風呂は混浴風呂で、地下三階と四回にも混浴風呂だって……」
言いながら、トコロテンも風呂多すぎだろう、と突っ込みたくなる衝動に駆られる。
さて、これにてようやくスタートラインに各自就くことができた訳で。
「それじゃ、解散っ」
唐突に説明を切り上げ南側にある自室へとスタコラ歩いていくトコロテンの姿に、何故か五人とも不安を覚えていた。




