11:一発面談4
守と蒋が一畳間へと移動すると、トモエとトコロテンの子供と大人、野村と影身の大人コンビが部屋に残された。
「さて、貴方は私と一緒にキテネ」
トコロテンは勝手に行動を開始すると、トモエが反応する間もなく野村を連れて三畳間の部屋へと移動してしまった。結果、残されたのは中学生と年齢不詳のオジサンの二人となった。
気まずそうにするトモエは、異性に苦手意識を持っていることもあり先ほどから秒毎に精神力が削られていた。守と二人の時はここまで酷くなかったのに、などと胸中でつぶやいていると先に声を出したのは影身だった。
「君も苦労しているな、若いのに」
トモエが相変わらず目の下に隈を作って、髪もボサボサなジャージ姿をみればそんな感想も漏れるだろう。
「え……えぇ……」
何とか相槌を返すトモエに、影身は問いかける。
「君くらいの年齢なら、王妃など断れたのではないか?」
「……」
「あの王の隣は、荷が重いんじゃないか?」
「そっ、そんな! 守はちょっと口は悪いけど、気遣いも下手くそだけど! でも!」
思ったより大きな声で返答してしまった事に気づいたトモエは、顔を赤らめ深呼吸をする。
「すぅ……はぁ……そのですね、今は守と頑張ろうって思ってます」
自分の嘘偽りない思いを、赤の他人である影身へと告げていた。
「……ふむ、そうか。それがどんなに辛い道であってもか?」
「残念、既にそんな事言ってられない事実を知ってしまっているのだもの、今更逃げの選択なんて私には存在しないわ」
影身はトモエの心に、何か通じるものがあった。
「そう、だな。俺は逃げるのは疲れたし、ここいらで気張ってみるのも悪くはない」
「……?」
「俺は影身 匠という。二流だが、ソルジャーだから何かに役立つだろう」
「……はぁ……」
いきなり名乗りをあげたオジサン、影身をみてトモエは計算を始めていた。ソルジャーがいれば、資源の確保の方法やほかにもいろんな策が打てるのではないか、と。でも、何故こんな人がここに突然現れたのだろうか。
「貴方は、影身さんは何故このタイミングでここへ?」
「さっきも言ったように俺は逃げ続けていた、んだ。人を守るためにソルジャーになったはずなのに、気が付いた時には人の道具に成り下がっていた。俺は逃げ続けていたんだ、おかげで二流程度の実力しかないがな……まぁ、そんな悲観的になっていた時に、空がな」
「空が?」
「……知らないのか。ここの真上でピンク色の光が弾けたのをみたんだ。アレに何の意味があったかはわからなかったが、予感がしたんだ……だから、どうせ最後になるならと様子見を見に来たら、いつのまにか城の中に案内され、君たちと出会っていた」
影身は世界に、人間に絶望していた。そしてなまじ力を持っていたために、その扱いに苦悩していた。だから終わらそうとしていた、影身の人生のストーリーを。
なのに、その決断は後送りにする事にした。隠すつもりがないのだろう机の上に乱雑に置かれている資料を、己の持つ観察眼で読み解いてしまっていた。簡単に言えばこの国は滅びの寸前であることが、圧倒的なスピードで減り続ける資源情報をみてしまい気づいてしまったのだ。
要するに、リタイアしようと逃げ続けた影身と違い、目の前にいた王と王妃は抗おうとしている最中なのだ。年頃の女の子があんなに頑張っているというのに、強い心を保っているというのに何処に逃げ出せるというのだろうか。
「俺の命ある限り、好きに使ってくれ」
こうして、影身はこの衛巴に仕えることになった。




