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体がビクッと動いたのは、いきなり背後から話しかけられたからで。全く気配がしなかっただけに、びっくりして思わず声がもれてしまう。
少し高めの声だけど、男の声だと確信した彼女は振り返ることをしない。
どうせ振り返ってもいいことはないと思っているからだ。
なにより男の人は―――苦手だ。
「確かにいい匂いがするな……」
「…………!?」
耳元で囁かれた彼女が驚きで動けなくなる。
それもそのはず。彼の顔が彼女の首元にあり、吐息がかかって今にも卒倒しそうだからだ。
男の人とこんな近い距離になることはそうない。
「たべたくなる…」
さっきまでの高めの声とはまるで別人かのような低い声に背筋がゾワゾワっとした瞬間、
「おい…リク、なにしてる」
彼の声が聞こえてきた。
ずっと考えてた彼の声―――どうしてだろう、落ち着く。
ゆっくりと振り返ると、そこには眉間にシワを寄せ、知らない男の子の手首を思い切り上に持ち上げ、明らかに怒っている彼がいた。
彼女は考えた。多分この手首を持ち上げられている男の子が、自分の背後にいた彼だろうと。
「いてぇな、ちょっと遊んだだけだろー。別に本気でするわけねぇって」
「あたりまえだ」
持っていた手首を離した彼が、彼女を見て笑みを浮かべる。
「こっちで一緒に食べよう」
お昼の誘いを受けた彼女は迷ったが、グループに入れていない上に、見渡す限り席もない。
一人で食べるよりマシか…それにもしかしたら彼のことを少しは思い出せるかもしれない。
そう考えた彼女がコクっと頷くと、彼がまたふふっと笑顔になる。




