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「では51ページを開いて――――」
授業中、ずっと彼が言った言葉を考えていた。
昔会っていたらしいが、全く覚えていない。
覚えてないのかと聞かれ首を傾げた彼女に、彼はそうかと少しだけ残念そうな顔をしたが、それはすぐ元に戻った。
「まあ…いい。そのうち思い出してくれれば」
少しだけ口角を上げる彼の鋭い漆黒の瞳に見つめられた時、その綺麗さに吸い込まれそうになる。
昔って…此処に住んでたことも来たことすらないのに、どうして会ったことがあるんだろう。
それにあれだけかっこいい人なら記憶に残っても良さそうなのに。記憶が残らないくらい小さな頃に会ったのか。
いや、でもそれなら彼も同じ年だから覚えていないはず…
そしてどうして、彼は授業に出ていないんだろう。
彼の“やっと逢えたね”という一言のせいで、彼が頭から離れなくなってしまった。
やだな…誰かが自分の中に入ってくる感じ。
そう――侵食されていくような、脳内に残るこの感じがたまらなく苦手だ。
誰も―――自分の中には入れたくないのに。
もう考えるのをやめよう。彼の言った通り、そのうち思い出すかもしれないし。
お昼休みになって、弁当のことをすっかり忘れていた彼女は、財布を握りしめ学食に向かう。
「すっごい美人」
「うっわ、俺もB組になりたかったー」
廊下を歩くだけでこんなに見られるなんて、二度と転校なんてしたくないと下を向きながら思う。
彼女の予想通り、既にグループは出来上がっており、結局まだ誰の輪の中にも入れていない。
もしちゃんとこの時点で友達が出来ていたら、一人で歩くこともなかったし、こんなに注目されることもなかったと思う。
学食についてからも好奇な視線が止むことはなく、顔を上げられない状況が続いた。
「おまえが結愛か」




