10
午後の授業が終わり、絶対に彼の家に行きたくないと思った彼女は、猫目な彼が教室に迎えに来る前に帰ろうと、急いで部屋から出る。
廊下を走り、階段を駆け下り、誰よりも先に校内から出たと思ったのだが。
「そんな逃げんなよ」
後ろから首元に手を回され、びっくりして振り返ることもできなかったが、それは確かに猫目な彼の声で。
食堂で会ったときもそうだったが、気配が全く感じられない。
まるで霊のように、急にぱっと現れるのだ。いや、予兆もないから、霊よりタチが悪いかもしれない。
あたしには霊感なんてないけど――と彼女が思考を巡らせる中、リクが彼女の前に回ってくる。
背の低い彼女が彼を見上げると、彼は少しだけ笑っており、その笑顔はまるで天使のように可愛かった。
「言ったろ?今日はオレ達の家に行くんだ」
ぐっと顔が近づいたと思ったら色素の薄い茶色の瞳に見つめられ、その瞳から逸らせない自分に気付く。
数秒見つめあった後、手を掴まれ、そのまま門へと歩き出す彼の背中に叫ぶ彼女の足元にはぐっと踏ん張る跡が残る。
「イヤ!!あたしは行かない!」
彼女の叫んだ声が五月蝿かったからか、反抗されたからか、彼が驚いた表情を浮かべ、彼女を再び見つめる。
「あっれー。おかしいな…ありえねぇ」
さっきと同じように彼女の顔にぐっと近づいたリクがもっと強い眼力で結愛の瞳を見つめる。
「…オレの家に一緒に行くんだ」




