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「…行かないって言ってるでしょ」
彼の目力が怖くて、恐る恐る小さな声で答えると、スッと彼が彼女から離れた。
どうやら結愛を連れて行くことを諦めたのか、そのまま一人で門から出ていく。
張り詰めていた糸が緩まり、ほっとした彼女が深い息を吐き捨てる。
どうして諦めたのかわからなかったが、これで家に帰れる。
男の人と話すのが苦手な彼女にとって、今日が厄日だと感じることは仕方ない。
もしかしたら、またリクが追ってくるかもしれないと思った結愛は、警戒しながらも早足で学校の門をくぐり抜けた。
だけど――それは違っていた。
何が違っていたかというと、心配すべきは“リク”ではなかった。彼ではなく、別のことを心配すべきだったこと。
だけど、警戒していたお陰で、いつもよりは少し――ほんの少し早く気付くことができたであろう。
「みーつけた」
気付いたときには時既に遅しだったけれど。
一瞬だけ見えた。屋根の上にいたヤツの姿が。
前と同じく一見“普通”に見える姿で、彼女がくるのを待っていたのが見えた。
だけどそれは本当に一瞬の事で、ヤツはすぐに屋根からいなくなり、彼女の背後から声を掛ける。
「あちこち探したよ~。酷いなあ、僕に何も言わずに引っ越すなんて」
耳元で囁かれ、一気に鳥肌が立つ。
逃げなきゃ―――そう思うのにまるで石になったかのように、全然足が動かない。
呼吸が荒くなる、酸素が薄い――あたしは今日ここでキエルんだろうか…




