表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界線の上  作者: 神無 乃愛
外伝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/74

外伝~「僕」の生きる意味~後編


 バネットさんが正式にクリスティ様と婚約した。もう、「僕」はバネット様と呼ばなくてはいけないんだなって本当に思った。幸せなご家庭を築かれるだろう。その時「僕」はバネット様とクリスティ様の「影」として邪魔者を排除するんだと決めていた。

 間もなく、「僕」に転機が訪れた。とある組織を探って欲しいと。

「私もよく実態をつかめていないんだけどね……トムしか頼めないんだ」

「僕でないといけないんですか?」

「そう。何せ『個体チップ』を外したりしている組織だ」

 確かに「僕」にしか出来ない仕事だ。

「あとは、トムのような『個体チップ』を埋め込めなかった人たちを集めている。君の判断でヴェルツレン侯爵家に連れてくるかは決めていい」

 大任すぎる。だが、バネット様は悩んでいた。

「私としては、いい感じのしない男だと思った。ただ、現在(いま)の状況を憂いている、それだけは確かだ。『個体チップ』自体がおかしいと声高らかに叫んでいるからね」

「分かりました。僕が行きます。最悪、僕を見捨ててください」

 それくらいの覚悟はたった数年で出来上がっていた。



「へぇ、君も『個体チップ』埋め込まれていないの?」

 野心を秘めた瞳をした男、チュルスがこちらを見つめてきた。

「うん、埋め込まれていない。名前もないよ。ずっと奴隷だったからさ」

 このためだけに、酷い傷を幾つもつけた。多分、最近のものだって気付くと思うけど。

 ところが、この男は気付くことなく「酷いな」とだけ言って仲間に引き入れた。

「これから我々は『カメレオン』と名乗る! この世を憂い、そして『個体チップ』をなくすのだ!!」

 何なの? この阿呆らしい演説。まぁ、乗っておくか。

「いいだろ? ここは! 飯は食えるし、『個体チップ』がなくても差別されない!!」

 チュルスが自慢げに言うが、ヴェルツレン家でも同じことがされてたよと思った。でも、それはたまたまバネット様が僕を見つけてくれたら、そうなっただけで、この男のように「僕」がなったかも知れないし、死んでいたかもしれない。そういう意味では天国だろう。

 賛同者は徐々に増えていく。国境を越え境界線のないテロ集団と化していた。


 チュルスを見て、トーマス様とバネット様に紹介するかを数年「僕」は悩んでいた。

 チュルスには別の組織が手を貸している。そして「方舟」に興味を持ち始めた。それが「僕」を躊躇わせる理由だった。

「やったぞ! ヴェルツレン家の女を孤立させた! エルグス男爵の依頼を終わらせた!」

 今、なんて言った? 誰を孤立させた!

「これで資金は出来た。もっと人員と武器を増やすぞ!!」

 チュルスの歓喜に「僕」は血の気が引いていく。この任務さえなければクリスティ様を助けに行けるのに!!

 それから数年、嫌な報告しか入ってこない。クリスティ様の護衛であるバーカー夫妻に子供が産まれた事、そしてクリスティ様の死。

 どうして、どうして「僕」はあの方を殺す組織にいるの!? エルグスにいなかったら絶対にクリスティ様は死ななかった!!

「おい、『三号』」

 チュルスが「僕」に声をかけてきた。「僕」の名前はいつの間にか「三号」になっていた。

「これからエルグス共和国で一暴れする。褒賞は首相から貰う事になっている」

「行って来れば? 「僕」は留守番してるからさ」

「そうだな……お前はこの通信で見ていろ。二号と一緒に」

 にやりとチュルスが笑った。あ、「僕」は疑われているんだとすぐに分かった。

 悲惨な結末、チュルスはバーカー夫妻とバネット様を楽しそうに殺した。

「貴族のせいで、俺らはいやな目にあうんだ! 死んで当然だ!!」

 なにがだよ。下種が。信頼を得るためだけに、「僕」は感情を殺した。


 ねぇ、バネット様。あなたの命令に背くことをお赦しください。

 あなたとクリスティ様のお子様は「僕」が責任を持って逃がします。トーマス様に会わせるかどうかは今のところ分かりませんが、「僕」は私情を挟みます。あなたたちを殺したチュルスは、いつか「僕」が殺します。

 でも、そのあと「僕」の生きる目的がなくなっちゃうなぁ、どうしたらいいんだろう?



 会わせないことが、正しい判断だったと、それからかなり経って「僕」は気付くことになる。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ