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EP 5

クレカ農業革命と、マッハの土木工事

「よし! 違約金3000万円回避に向けた『超速・開拓オペレーション』を開始する! 目標は今日中に畑の土台を完成させることだ!」

俺の号令がポポロ村の荒れ地に響き渡る。

本来なら数ヶ月はかかるであろう開墾作業。だが、俺たちには現代日本のホームセンターグッズと、ファンタジー世界が誇る『規格外の超人たち』がいる。

「第一工程! 畑の障害物(巨岩と枯れ木)の撤去! キャルル、行けるか!?」

「はいっ! お任せください!」

キャルルが元気よく手を挙げ、タローマン特注の安全靴(雷竜石コンバット・スニーカー仕様)で地面をトントンと鳴らした。

彼女の目の前には、長年の放置で根を下ろした巨大な枯れ木と、人間の背丈ほどある巨岩がゴロゴロと転がっている。通常ならドワーフの重機でも持ってくるレベルの障害物だ。

「どっこいしょ、っと」

キャルルは軽い準備運動をすると、クラウチングスタートの姿勢を取った。

――ズンッ!!

爆発的な踏み込みで大地が陥没する。

キャルルの姿がブレたかと思うと、次の瞬間には10メートル先の巨岩の真上に跳躍していた。

「やぁっ! 『流星脚メテオ・ストライク』!!」

空中で一回転した彼女のかかとが、安全靴の鉄芯と共に巨岩の脳天に突き刺さる。

推定3万ジュール以上の運動エネルギー。対物ライフルすら凌駕する神のキックが直撃した瞬間――。

ドッゴォォォォォン!!!

「うおおおっ!?」

あまりの衝撃波に、俺は思わず腕で顔を覆った。

土埃が晴れると、そこにあったはずの巨岩は無数の小石となって四散し、枯れ木は根本から粉微塵に吹き飛んでいた。

さらにキャルルは休むことなく、マッハの脚力で荒れ地をジグザグに駆け抜け、立ち塞がる障害物を次々と蹴り砕いていく。

「な、なんだあのバケモノ脚力……! ルナミスの魔導バズーカより威力があるじゃねぇか!」

「あははー! ストレス解消になりますぅー!」

飛び散る岩の破片の中で、キャルルがウサギ耳を揺らしながら無邪気に笑う。

ヤバい。あの脚で「両脚の骨をへし折る」とか言ってたのか。絶対に逆らわないようにしよう。

「よし! 障害物の撤去完了! 次は水路の確保と整地だ! ウィスター、出番だぞ!」

「あー、めんどくせぇ。土木作業なんてエルフのやる事じゃねぇんだよ……」

ウィスターが葉巻を咥えたまま、だるそうに前に出る。

だが、彼の手には『世界樹の枝で作られた両手杖』が握られていた。

「パチンコ代の借金、忘れてねぇよな? ……『大地の脈動アース・クエイク』からの『水神の息吹アクア・ストリーム』」

ウィスターが杖の先で地面を軽く小突いた。

無詠唱。しかも土属性と水属性の同時発動。

ゴゴゴゴゴォォォッ!!

荒れ地が意思を持ったように波打ち、一直線に深くえぐれていく。

そして、そのえぐれた溝に、どこからともなく湧き出した清らかな水が濁流となって流れ込んだ。

「す、すげぇ……! たった5秒で、畑の真ん中に完璧な灌漑かんがい水路が完成したぞ!?」

「けっ。こんなのただの準備運動だ。さっさとサケスキーの追加を頼むぜ」

天才賢者の魔法の無駄遣い。だが、これほど頼もしい無駄遣いはない。

「完璧だ! 水分と土壌のベースはできた! ダイヤ、最後の仕上げ(畝立て)だ! 頼んだぞ!」

「お任せくださいませ健人様!」

俺は『神様Pay』で召喚しておいた、日本製の『軽量・高耐久 ステンレス製クワ』をダイヤに手渡した。

ダイヤがそのクワの柄を握りしめた瞬間、彼女のユニークスキル【ウェポンズマスター】が発動した。

「……素晴らしいバランスですわ。刃の角度、柄のしなり、そしてこの輝き。まるで、大地の悪魔を討ち払うために鍛え上げられた聖剣のようですわね!」

「いや、ただのホームセンターのクワだけどな」

俺のツッコミを無視し、ダイヤはクワを上段に構え、フゥッと鋭く息を吐いた。

「いきますわよ! 秘剣……『紅蓮の大地返し(クリムゾン・プラウ)』!!」

ザクッ! ザクザクザクザクッ!!

ダイヤの動きは、完全に熟練の剣士が放つ『連続斬り』だった。

だが、その切っ先(クワの刃)は正確無比に土を捉え、空気を含ませながらふかふかに耕し、芸術的なまでに真っ直ぐで美しい『うね』を猛スピードで作り上げていく。

「はぁっ! ふっ! せやぁっ!!」

土煙を上げながら、ダイヤが畑を縦横無尽に駆け抜ける。

そのスピードは、現代の小型トラクターすら凌駕していた。

「な、なんて美しい畝だ……。土の空気の含み具合、水はけを計算し尽くした傾斜……芸術品じゃねぇか」

ネギオが葉巻をポロリと落とし、呆然と呟く。

「終わりましたわ!」

ダイヤがクワをクルリと回し、背中に背負うポーズ(納刀)を決める。

彼女の背後には、たった数十分前まで荒れ地だったとは信じられないほど、見事に耕された広大な畑が広がっていた。

「……お前ら、最高だ。これなら本当に、数日で村の農業基盤が完成するぞ!」

俺は興奮で拳を握りしめた。

キャルルの破壊力、ウィスターの魔法、ダイヤの超絶技巧。そして俺の現代知識と『10万円の召喚枠』。

それぞれの長所が完璧に噛み合った、奇跡の土木工事だった。

「健人さぁん! 私も頑張りましたぁ!」

リリスが、口の周りにマシュマロの粉をつけながら満面の笑みで寄ってくる。

「お前はずっと日陰で食ってただけだろ! いいから、ネギオが作った肥料を畑に撒くのを手伝え!」

「ひどいですぅ! 女神を小間使いにするなんてバチが当たりますぅ!」

俺たちは完成した畝に、ネギオの知恵と日本の化成肥料をブレンドした『特製・黄金肥料』を均等に撒いていった。

「よし、これで土台は完璧だ。あとは作物の『種』を撒くだけだが……」

俺が額の汗を拭いながら言うと、ネギオがニヤリと笑った。

「その『種』は、前の村長が遺してくれたとっておきのヤツが倉庫に眠ってるぜ。ただし……アナステシアの野菜を育てるのは、命がけだぞ?」

「命がけ? 野菜を育てるだけだろ?」

俺が首を傾げると、ダイヤがなぜか青ざめた顔で自身のサブマシンガンの弾倉を確認し始めた。

「……健人様。この世界の野菜の中には、収穫時に『自我』を持って襲いかかってくる狂暴な品種がいますのよ。……弾薬の補充、お願いできます?」

俺はまだ、ファンタジー世界の農業の『真の恐ろしさ』を理解していなかった。

違約金回避への道のりは、ここからが本当の地獄(レイドボス戦)だったのだ。

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